山本周五郎による原作は読んでいない。

2時間20分ほどの映画だが、これほどありそうもない奇妙で多彩な登場人物を描くにはこの長さでも足りないぐらい。たとえば、「へい」さんは何をやっててもずっと一点を見つめているだけで瞬きをすることすらない。

濡らした釜で少量の米をかすめとる話や妻の姪を妊娠させる話はあるが、ヤクザやチンピラとは無縁の人たち。唯一まともな人物があるとすれば、それは川瀬裕之が演じた乞食の子。頭師佳孝はもう子役としてはこれが限界だっただろう。

そして、数十年ぶりに三波伸介に会った。京都に住んでいる子どもでも彼には週に1度、NHKの日曜夜の番組で会ったものだ。子どもの言う通りに似顔絵を描いてその親である芸能人が登場するあの番組。