「原爆の子」「裸の島」と同じく、いずれも新藤兼人監督と音羽信子主演である。自分が知る音羽信子はテレビドラマでのおだやかでやさしい母親役だった。

「縮図」では貧しい靴修理職人(宇野重吉)の娘として芸者であらざるを得ない境遇の女性であり、「どぶ」では神奈川の川崎駅近くと思われる貧民部落「かっぱ沼」の住人たち(宇野重吉、殿山泰司、信欣三)に都合よく利用されながらも最後まで純真さを忘れない女性であり、また「狼」では生命保険外交員としての生活に耐えられず同僚とともに強盗となる女性であり、そして「母」では3人目の夫である印刷屋のおやじ(殿山泰司)と、再婚の夫との間にできた子(頭師佳孝)を失くしながらも、ともに生きていこうとする女性である。どれも音羽信子の印象を変えてしまった映画だった。

しかし、「狼」について保険業界から何の文句もなかったのだろうか?

「狼」の子役は松山省二。「怪奇大作戦」を思い出させる。