大島渚が監督して松田映子と藤竜也が主演した「安部定事件」を扱ったこの映画は公開時に大きな話題となっていたが、未成年では見ることも許されなかった。そして、もちろん日本国内で検閲されていないままでは不可能だった。しかし、同級生にフランスで1年を過ごしたヤツがいて、彼はそこで見たと言っていた。(「同級生」ではあったが、フランスで過ごした1年のために彼は1歳年上だった。)

ずっとずっと年月が経ち、日本でもインターネットがダイヤルアップで利用できるようになった初期だから、1995年か96年あたりだったか、この映画をなぜか思い出し、余計な修正がされていない版なら「アメリカから買えばいいではないか」と考えて、AmazonでVHSビデオを注文してみた。日本の税関で没収されることも予想しながら。

何も問題もなく届いたではないか。

ただ、これは英語吹き替え版だった。注文したときに間違えたのだろう。しかし、「裏ビデオ」でもないのに、全部写っていることには違いない。入手できることが確認できたので、日本語版をまた注文した。

その話を元同僚に話すと、彼は「カナダにおったとき、映画館で見たわ。隣に座ってたカナダ人は爆笑してた」と言う。また彼が、知人に売るつもりだったのだと思うが、5本だったか、6本だったかを手に入れてくれと言うので、その通りに手に入れて渡したのだった。それほど貴重だったのだ。

そして10年とちょっと前、あるベトナム人女性が「日本映画を見た」と言うので、何を見たのかとたずねると、「In the Realm of the Senses」だった。

いまでは、ネットで見られるのだ。それも無料で。あんなにヤキモキして手に入れないといけないものだったのに。