午後10時40分ごろ、乱暴にドアがノックされて、ドア超しに大きな声がした。「Time to go」のように聞こえたが、そうではなかったかもしれない。誰かが部屋を間違えたのだろうと思ってドアを開けると、びっくり。

目の前に警官が2名。向かい側の部屋の宿泊客(あるいは、ご休憩客)も真っ暗な部屋のドアをパンツ姿で開けていた。

警官といっしょにいたホテルの人が「パスポートを……」と言うので、ドアをノックしたらしい厳しい人相の警官に旅券を渡した。彼は携帯電話でその写真を撮っていたが、せっかくなら入国スタンプが押されたページも見てくれればいいのになどと思いながら、「Any problem?」とたずねると、ホテルの人は「いえいえ、何でもありません」と言いたげに手を振って申し訳なさそうだった。警官は不愛想に「Thank you」とこちらを見ることもなく言って旅券を返した。

何があったのかわからないが、想像できるのは売春婦の摘発ぐらい。共産主義国の警官。まったく歓迎しない訪問だった。夜中にやって来て、しょっ引いていく秘密警察や公安が連想されるのだ。

しかし、不法に滞在しているわけでもないが、ホテルの売春摘発ではなくて、この部屋、この自分を狙って来たのかと疑心暗鬼になってしまう。他の部屋へのノックを聞いた覚えはないし。