角田展子教諭、時間の制約がある中での解説であることは承知しています。

 しかし、ケネディ政権による介入からサイゴン陥落まで、およそ十五年に及んだこの戦争はこれだけの時間と言葉で説明しきれるものではありません。この戦争を扱ったドキュメンタリーには、DVDにして十枚という作品もあります。

 この歴史講座を見た高校生の記憶にいちばん残るのは「反戦運動やってよかったね。それでアメリカは戦争をやめたんだ」という部分かと推察しますが、それでベトナム戦争について学んだことになるのでしょうか。アメリカ軍の撤退から二年以上にわたって戦争は続いたのですが。概して、現在は日本と国交のある統一ベトナムについての批判を避けようとする姿勢、南ベトナムを「傀儡国家」と位置付けるなど、北ベトナム、そして軍事的な制圧で統一されたベトナムの官製歴史観に沿う解説のようにうかがえます。それで南北に分断されたいたベトナムでの戦争を学ぶ歴史教育と呼べるのでしょうか。講座に「サイゴン」という地名さえ出てきていないのではないでしょうか。ホーチミン市へ行けば、「サイゴン」と名のついたホテル、バー、飲食店はたくさん見つかるんですが。