イオンシネマより




うーん平和主義がいいけれどウインク





久しぶりに映画を観た。


平日の昼間、田舎の映画館は人が少なくざっと見回しても10人くらいしかいない。全員女性だ。同年代か少し上か、なぜか右隣にポップコーンのビッグサイズを抱えた二人組が座る。隣は通路だったはずで、彼女達も座席を確認するが間違いではない。





予告編が始まった。女性達はお構い無しによくしゃべる。少人数と女ばかりの気安さがそうさせるのだろう。前列の二人の会話が耳に飛び込んできた。「あー嬉しい。映画が観たいと思ってたのよ。楽しみよ。ありがとう。」こちらも嬉しくなる。



館内が徐々に暗くなり映画が始まると思ったその時、右手から聞こえてきた。


「昼間っから映画なんか観て」
ドキッとした。


どうやらポップコーン女性の隣人が発した言葉のようだ。




映画は、日々の家事に追われ自分のためにやりたい事が出来ない主婦と、その家族の日常を描いている。「あるある話」と思っていたが、俳優の自然な演技でいつの間にか主婦の気持ちに感情移入している。




ふいに、隣の女性が小さなイビキをかきだした。まだ序盤ではあるし、席はガラガラなので移ろうかと思ったがそのまま観ることにする。




「主婦という名の仕事」を理解されない主人公は夫の冷たい言葉に傷つき家を出る。残された家族は家事をしてくれる人がいなくなり、成り行きから「舅」が仕方なく「主夫」となる。何とか元の鞘に戻そうと夫の兄弟達が説得するが、ふんぞり返って謝りそうにない。一方、家出した主婦は亭主には腹が立つけれど残してきた息子達が不憫だと言いながらさめざめと泣いている。




突然、誰かが泣き出した。驚いて左手を見る。




場面は舅が、もう嫁は帰ってこないのではないかと演説している所だ。彼女がどのセリフで泣いたのか思い出しても分からない。きっと自分の思いと繋がり感情が揺さぶられたのだろう。




気がつけば、私も涙を流していた。やはり何処が悲しいのか分からない。家族が困り果て途方にくれる様子を最初は胸がすく思いで見ているが、徐々にやりきれなくなってくる。私達主婦が恐れる壊れていく家庭をリアルに映し出す。橋爪功さんのコミカルで一生懸命な舅の演説はとても良い。



終わってみれば、夫婦二人の問題だった。居なくなって初めて、無くてはならない存在だと分かるのか。




職場のパート仲間の友人の話を思い出す。

その女性はご主人の両親と同居されていて、毎日夕方5時に夕食が出来ていないと、ご両親の機嫌が悪いという。その後、徐々に時間が早くなり、ついには3時(おやつタイム?)に夕食を作ることになったという。ご主人は知らないふりをしている。嫌がらせともとれる腹の立つ話だ。



その話には後日談がある。



お嫁さんは堪忍袋の尾が切れ、ついに週末を遠い隣県の実家で過ごす決心をした。パート仲間は拍手喝采である。




他人が共に暮らす家庭はお互いが平和主義なら上手くいくかもしれないが、現実は人数の分だけ揉め事がある。我慢すれば病気になってしまう。嫁を長らくやって来て辿り着いた結論だ。




映画が終わり、号泣していた女性はまだ泣いている。ポップコーンの隣人とその友人は足早に消えていく。最後までイビキをかいていた友人を「昼間っから映画なんか観て」と言った人はどう思ったのだろう。




映画くらい観ないと円満な家庭は築けない。















花束読んでくださってありがとう花束
ブーケ1今日も明日も良い日でありますようにブーケ1