とても良い映画でしたおねがい





クローバー継ぐ(ツナグ)クローバー





クリント・イーストウッドの深い皺の刻まれたその顔に思わず涙を流していた。どこか父に似ている。老いて尚、何かを欺き通そうとする悲しい姿が。



息子夫婦が新居探しの為、孫を預かることになった。そこへ突然高齢の父が訪ねて来た。
我が家まで車で小一時間は掛かる。姉が心配していると思い「心配かけたらいけんよ。黙って出て来たんじゃろ」と叱った。



老いては子に従えだの言う私に、父はどこ吹く風とばかりに「うるさいばあちゃんじゃのう」と
初めて出会うひ孫に相好を崩しながら言った。



私はまだ父の仕出かした昔の事を許してはいない。今の引きこもりがちな私の生活が全て父のせいだとは言わないが、幼い頃から父の言動や行いが感受性の強い私に後ろ向きな人生を選ばせたと思っている。それに父に欺かれた人達の思いがそうさせているのかも知れないとも思う。



父は孫が居ることを知らなかった。


ふと30年前の事を思い出す。私が長男を授かったことがわかった日、偶然父を見かけた。
「子供が出来たんよ」
「お前がか」
「じいちゃんになるね」
とても照れ臭かったが、そんな言葉を交わした。



それから今日、
数時間だけ孫を預かった。そこに父は現れた。
「お前が心配なんじゃ」
「お前には苦労かけたからのう」
と私に言う。父の細くなった膝をさする。


「もうええんよ。長生きしてね」
「おお、長生きする」


そんな二人のやり取りをまだ生後4ヶ月の彼は
ただじっと見ている。



今さら父を攻める気などない。
然りとて許すことも出来ない。
相変わらずわがままな父をそっと見守ることしか出来ない。残念だけど。



帰り道、気丈に振る舞う父の後ろ姿に駆け寄り、
「もう ええんよ」と声を掛けたかった。
けれど降り続く雨と腕の中の小さな温もりがそれをさせなかった。
雨はまだ、私の心の何処かで静かに降っている。






虹読んでくださってありがとう虹
虹今日も明日もよい日でありますように虹