ルイズは慌てて体を逸《そ》らせた。

 ゴーレムが、ずしんずしんと地響きを立て、才人《さいと》たちに迫る。

 安全装置を解き、トリガーを押した。

 しゅつぼっと栓抜きのような音がして、白煙を引きながら羽をつけたロケット状のものがゴーレムに吸い込まれる。

 そして、狙《ねら》いたがわずゴーレムに命中した。

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 田舎の名門旧家に生まれた主人公が、他者と違う自分に恐れと羞恥を抱き、自分を偽り道化を演じ、やがて危険な社会運動に身を投じてゆく。けれどそれも中途半端でしかなく、自分で自分に嫌気がさし、絶望から逃れるために退廃的な生活を続ける。

「おいおい、そんな、自分が自分でなくなるなんて、そんなことが……」

 才人がそう言ったら、デルフリンガーの声が響いた。

「まあな、自分のことは、自分が一番わからんもんさ」

 気づくと、その場の全員が目を覚ましていた。

「確かに、最近のきみはおかしかったな。妙に生真面目《きまじめ》というか……」

 ギーシュがうーむと悩みながら言った。

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「ええ、でも、オスマン氏は貴族や平民だということに、あまり拘《こだわ》らないお方です」

「差しつかえなかったら、事情をお聞かせ願いたいわ」

 ミスロングビルは優しい微笑《ほほえ》みを浮かべた。それは言いたくないのであろう。

「いいじゃないの。教えてくださいな」

 キュルケは興味津々といった顔で、御者台に座ったミスロングビルににじり寄る。ルイズがその肩を掴《つか》んだ。キュルケは振り返ると、ルイズを睨《にら》みつけた。

「藤村修也というやつならいるが、三年じゃなくて二年だ。それに、シュウちゃんとも呼ばれてなかったと思う」

「ええっ、ホントに? 他にシュウっていう人はいないの?」

「部では聞かんな」

 才人は怒り憤懣《ふんまん》やるかたない顔で、なおも飛びかかろうとしたが……、ティファニアがその腕にしがみつく。

「お願い、サイト。やめて。何があったか知らないけれど、戦いはやめて。お願い……」

 ティファニアは泣いていた。才人は、くそ! と怒鳴ると、剣を再び背中の鞘《さや》におさめた。そして、でんっ! と床に腰掛ける。

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 再び黒ローブのメイジを扁に乗せ、ゴーレムは歩き出した。魔法学院の城壁をひとまたぎで乗り越え、ずしんずしんと地響きを立てて草原を歩いていく。

 そのゴーレムの上空を、ウィンドドラゴンが旋回《せんかい》する。

 その背に跨《またが》ったタバサが身長より長い杖《つえ》を振る。『レビテーション』で、才人《さいと》とルイズの体が、足からウィンドドラゴンの背に移動した。タバサが再び身長より長い杖を振る。かまいたちのように空気が震え、才人の身を包んだロープが切れた。

「それですべてを片づけないでください。もういいです。読書の邪魔してすみませんでした」

 遠子先輩が困惑の表情を浮かべる。

「ええと……なにかあったの? 心葉くん」

「別に……」

「あのトリステインの小娘に、この余にはむかう度量などあるものか。捨て置け」

 ジョゼフはもう、新しいおもちゃに夢中である。

 モリエール夫人は、この美髯の王が夢中になっている〝ヨルムンガント□とはいったいなんなのか、興味が引かれた。

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