「残酷な現実」   エピソード10






















坂戸  7時。











ドクンッ…ドクンッ









「……ハァ…ハァ…」









呼吸が浅く息が苦しい…。




全身の力が…抜けていく









私はその場に座り込んでしまった。









「…お…ばあちゃん…?」









姉は口を手で抑え絶句していた。









「………。」








私達が目にした祖母の最後の姿。




目は見開き









口から汚物が流れ出している









苦しかったのだろうか…









手を握りしめた状態で硬直…していた。




「突然だったのよ…朝早くおじいちゃんから電話あって…」








「………。」









「すぐ来てくれって…あんたを起こしている暇もなかったのよ」








「………。」









母親の言葉が頭に入ってこない…。









変わり果てた祖母の姿に










私も姉もその場に立ち尽くすしか…なかった。









「………。」
































 「失った未来」  エピソード11






「‥……。」









どのくらいその場に…いたのだろうか









時間の感覚がない。





目の前の現実を理解しようとしても









頭の中が真っ白だ…









「………。」









「おばあちゃんに、声をかけてあげなさい。」









母が言った。









姉がゆっくり祖母に近づく…










「おば…ぁ…ちゃん…」 




それ以上声にならず泣いていた。









私はそんな姉の姿を見つめながら









祖母の寝ている部屋を見渡す…。









布団の周りに食べ散らかった菓子









ねずみが囓ったのか…布団の綿が散乱している









「………。」










ホコリをかぶった日本人形。










畳は汚れ変色し、足の裏は真っ黒になっていた…



こんな所で寝て









こんな所でご飯を食べて…いた…の?









「………。」








祖母の家は…あの花で囲まれていた家は…









ゴミ屋敷になっていた…。




変わり果てた祖母









変わり果てた祖母の家。









私は一体…今まで何をしていたのだろう…










「………。」

































「戻れない過去」 エピソード12





    
坂戸    10時。








立ち尽くす私の肩をそっと母がたたいた…








「………。」









ゆっくり祖母の元へ歩み寄る








「お…ばあ…ちゃん」










震える手で祖母の顔に触れる










涙が私の頬を伝い祖母の顔に落ちていく…




硬直した顔には涙の感覚も









手の温もりも…ない。









ただ虚しく涙だけが祖母の顔を濡らして…いた。








「おばあちゃん…」








「………。」








「おばあちゃんっ…っ…」








「………。」








後悔しても








後悔しても








祖母は戻ってこない…





「おばあちゃん…おばあちゃん‼︎…おばあちゃんー‼︎ぅう…」








私は子供の様にその場で泣き崩れた








「…おばあちゃん…うっ…うっ…」



















第四章に続く