エピソード25  「幼い頃の記憶」










「カンッ…カン…」










階段をゆっくり…のぼる










「………。」










何度も何度もこの階段を走り回ったあの頃







「カン…カン……」










暖かい記憶が私の体を包み込んで…いく









「懐かしいな…」









二階に上がりドアに手を掛けた瞬間










大きな風が吹く




庭の木々を揺らし目の前に葉が舞い散る。










「…うわっ!…」










思わず目を閉じ手すりを握りしめた











風は一瞬で止んだ…









「ふぅ…びっくりした…」





ゆっくり目を開ける










「竹切ったから風通しが良くな…⁉︎」










目の前に広がる光景に









「うそ……」










言葉を失う…









「………。」






































エピソード25  「必然的な出来事」











「何…これ」









突然目の前に現れたのは










緑で覆われた小さな森。




階段から見たゴミ屋敷は









静かに流れていく風の音、木々の木漏れ日…










「まるで別世界だ…」









とても心地よい森…だった。









「あの下には沢山のゴミが埋まってるのに…」










緑が闇を










全て包み込んでしまっているように…見えた






「同じ…場所とは思えない…」










幼い頃大好きだった不思議の国のアリス。










まるでアリスのように











私は不思議の国に…迷い込んだのか?





「あ…どんぐりの木…」










ふと大きなどんぐりの木が目に入る










「大きくなったな…」










私が生まれる前からあったどんぐりの木。










倉庫の屋根を追い越し










雲の上へ上へ大きく成長していた…










「………。」






























エピソード26  「決意」








「…大きくなったな…」









大きく成長したどんぐりの木。





木の中には沢山の鳥の巣があった









大きな木に守られた鳥達は穏やかに囀る…










時計を持ったウサギが今にも…









「飛び出してきそう…ふふ…笑」










そんな事を想像して…いた。




真っ暗な庭のゴミ屋敷からは










想像もつかない世界がここにはあった…









「やっぱり…ここは楽園だ。私の大好きな…あの頃のまま…」










ゆっくり目を閉じ大きく…深呼吸する









「…ふぅーー…」









ふわりと今度は優しい風が










体を通り抜け…る





「私……」









「…ここでお店やろう…」









それはとても自然に…









「美容師になろう…」









ふと湧き起こったあの時と同じように…





何も考える事なく…










このゴミ屋敷でお店をやる事を決心した。










ここは必ず楽園になる…確信したから






















第九章に続く