あの時はまだ思っていなかった、私がこの人をこんなに好きになるなんて・・・
30代最後のあの日、私は病院の診察室にいた
新緑が気持ちいい季節
診察室の窓からは、初夏の爽やかな風が吹き込んでいた
目に映る景色は穏やかで優しかった
離婚して、まだ2年目、子供はいない
やっと自分の生活が戻ってきた
転職して、転居して、心機一転頑張っていこう
やっと軌道に乗り始めたそのときだった
前日から発熱、いつもの熱の感じと違う
なぜか右乳が腫れている
以前から胸に少しだけ触れるしこりも気になっていた
そういえば職場の目の前にクリニックがある
ずっと気になっていたし、一度くらいは行ってみようかな
熱も下がらないし、腫れも気になるし・・・
軽い気持ちでクリニックの受診予約をした
クリニックの先生は病状を黙って聞いてくれた
全部聞いた後で、
「紹介状、書くから大きな病院に行ってくださいね
いつなら行けるかな?今から予約取りますね」
とすぐに総合病院への紹介状を用意してくれた
え?私ひょっとしたらやばいのかな?大丈夫かな
と思いながらも、もう病院に来てしまったのだし
検査を受けるしかないなと思って紹介状を受け取った
総合病院の予約の日も、五月晴れの晴天
私の大好きな季節
総合病院はいつもの通勤路にある
新しくて綺麗な病院
でも子供の頃から病院は苦手だった
暗くて怖くて、不安なところ
その感情を大人になった今もひきずっていてい
できれば病院に行きたくないと
いつもギリギリまで我慢していたのだ
そんな不安も抱えながら診察を待つ
予約の時間を大幅に超えてもなかなか呼ばれず
いつになったら診察終わるのかな?
終わったら美味しいランチ行きたいな
何食べようかな?
と考えていると名前を呼ばれた
やよいさん、どうぞ
緊張して入ると、そこには同じ年くらいの男性医師
「わー男の人か・・・しかも同年代・・・」
医師とはいえ男性、恥ずかしさが皆無ではない
今日の下着大丈夫だったかな
そんな下世話なことが頭をよぎる
「こんにちは」
「こんにちは」
「紹介状確認しました
右胸が腫れたのですね、
それはいつからですか?」
淡々と診察は進む
「今は痛みはありますか?
熱は下がりましたか?」
診察に必要なことを次々と質問しながら
カルテに入力していく
顔を見ることもない
クリニックの先生はゆっくり話を聞いてくれたのに
大きな病院で診察も押している
大病院なんてこんなものなのかな
と思っていた
その後触診があり、
「抗生剤出しますね、腫れが引いたら検査しましょう」
ということで、その日の診察は終わった
今まであった先生の中で
一番ぶっきらぼうで機械的な対応
そのときの私は、軽く乳腺炎くらいだろうと
たかを括っていたので、治療が続くなんて
1ミリも思っていなかった
腫れが引いて熱が下がったら
これで終わり
あー早く抗生剤が効いて通院終わらないかな
あの先生、すごいぶっきらぼうだし機械的だし
大丈夫なのかな?こわいな・・・・
次の診察で終わるといいな
病院の帰り道、大好きなお店でランチを食べた
明日も仕事だな、何時に出たら間に合うかな、
その前に帰って部屋の掃除しよ
始まりの1日が過ぎていった