日本経済新聞社は「王座戦」を主催していますが、将棋本の出版は少なく、本書はレアケースと言えるでしょう。
 
手元には、加藤治郎先生の『昭和の駒音』(1980刊)、 羽生善治・二宮清純共著の『歩を「と金」に変える人材活用術』(2007刊)の二冊だけです。
 
藤井さん王座奪取、満を持しての出版といえます。
 
永瀬王座との激闘、特に第3局、第4局の永瀬さんの映像は印象的でした。
 
かつ 八冠制覇です。
 
何も出さなかったら抗議が殺到した事でしょう。

 
 編者: 日本経済新聞社
 発行: 日本経済新聞出版
  2024/1/25  初版
 
 
 
<帯>
 
 勝率1%からの逆転は、なぜ起きた?
 
  将棋史に残る名勝負「王座戦」から
 
     天才・藤井に迫る。
 
 
 
<目次>
歴史的で運命的なシリーズを振り返る
第1章 藤井聡太が振り返る王座戦
   聞き手 山口恵梨子女流二段
第2章 記者が見た八冠の奇跡、藤井の素顔
   司会・構成 大川慎太郎
  ・記事で振り返る
第3章 藤井と永瀬 ライバルが語る藤井
   大川慎太郎
第4章プロ棋士が読み解く藤井の強さ、思考
  解説 王座戦五番勝負 勝又清和七段
  ・記事で振り返る
第5章 藤井聡太が語る敗れた第1局
   聞き手 山口恵梨子女流二段
巻末付録 「将棋王座戦」70年を振り返る
 
 
 
<「はじめに」に代えて>
 
本書は、日経新聞に掲載された記事のほか、担当記者による座談会や電子版の「NIKKEI LIVE」で配信した藤井王座によるトークショー&自戦解説の模様を収録しています。
 
また、・・・勝又清和七段による棋譜解説や、・・・大川慎太郎氏による寄稿も加えています。
 
 
<第1章 藤井聡太が振り返る王座戦>
 
山口 「・・・携帯中継で豊島先生の名前を見たらとりあえず開くのでしょうか?」
 
藤井 「そうですね。 ただ実は、携帯中継されている対局は全部見ているので」 (会場どよめき
 
山口 「女流棋戦もご覧になっている?」
 
藤井 「全部みています」
 
山口 「背筋が伸びますね。 相当珍しいですよ」
 
 
<第2章 記者が見た八冠の奇跡・・・>
 
神谷 「・・・王座戦の伝統で開幕戦の前日はパーティー形式の前夜祭はやらずに弊社社長と日本将棋連盟の会長が出席するのが恒例です」
 
神谷 「立会人が佐藤康光九段、新聞解説が森内俊之九段、羽生会長と永瀬さんと藤井さんがいて、タイトル数を合わせたらいくつになるんだろうかという(笑)」
 
神谷 「これは歴史的な瞬間かもしれないと思いました」
 
タイトル獲得数は5人合わせて146期(当時)
 
 
神谷 「今回、藤井さんが八冠を達成して翌日の一面トップになったんですね」
 
神谷 「社内の将棋好きからも、「まさかうちが藤井王座の八冠を一面のトップ記事にするとは思わなかった」ということを言われました」
 
村上春樹さんのノーベル文学賞に匹敵する偉業という日経さんの見解です。
 

 

 
文藝春秋さんも 日経さんと同じ見解です。
 
 
<第4章 プロ棋士が読み解く藤井の強さ・・>
 
2020年の渡辺明棋聖の第91期棋聖戦五番勝負第2局で、矢倉囲いの4三金を☖5四金と出た手が最初だ。
 
杉本 「金を守りに使うのがセオリーですけど、これは逆」
 
杉本 「将棋の常識を覆す、歴史を変える一手です」 と述べた。
 
 
藤井以前と藤井以後では、大局観が変わったのだ。
 
 
・・・部屋がとても寒い。
 
対局者2人の合意で、冷房をかなり効かせていたからだ。
 
可哀想だったのが記録係で、皆とても寒そうにしていた。
 
 
<第5章 藤井聡太が語る敗れた第1局>
 
山口 「☖8八歩。 永瀬先生は「☖8八歩じゃあという気がした」と感想戦でおっしゃっていたそうですけど」
 
藤井 「そうですね」
 
藤井 「でも感想戦だと、自信なさげに言って相手の様子を見ることが手筋としてよくあります」
 
藤井 「実際は☖8八歩で自信を持たれていた可能性もあると思います」 (会場笑
 
藤井 「☖8八歩はいい手でした」
 
 
将棋ファンにとっては垂涎のお話がいっぱい!
 
もっと発信してほしいですね。