<目次> |
秘蔵フォト 名棋士の素顔 |
序章 「棋士の世界」に魅せられて |
第1章 大山康晴の豪放、升田幸三の美学 |
第2章 米長邦雄の狂気、中原誠の自然体 |
第3章 異能の奇人・変人 |
かくも魅力的な将棋指し |
第4章 個性派棋士たち「それぞれの輝き」 |
ネット将棋の先駆者から伝説の美少女まで |
第5章 羽生善治から藤井聡太へ |
研究者的思考の新時代 |
第6章 渡辺淳一、団鬼六、小池重明・・ |
将棋を愛し、将棋に愛された人々 |
第7章 将棋界の「思想」はどこへ向かうのか |
特別対談 羽生善治×弦巻勝 |
将棋界の「伝統と未来」 |
あとがき 珠玉のタイトル戦写真25枚 |
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<秘蔵フォト 名棋士の素顔> |
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巻頭32ページ、中でも 藤井さん29連勝達成時の写真は150名の記者カメラマンの中、ベストポジションは貫禄でしょうか? |
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<「棋士の世界」に魅せられて> |
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『棋士・その世界』(講談社)と題するその本は、新聞記者である中平邦彦さんが、当時情報の少なかった将棋界と棋士たちの魅力を存分に伝える名著だった。(1974年刊) |
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『棋士・その世界』以前の将棋評論家の方々は 先生方に忖度しての執筆になっていたようです。 |
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・・・勝浦修九段から電話がかかってきた。 |
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深夜、日付も変わろうという時刻だった。 |
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「いま新宿で飲んでいるけど、ちょっと遊びに来ない?」 |
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・・・指定されたソバ屋には勝浦さんと、森雞二九段、佐藤大五郎九段もいた。 ・・・ |
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聞けば 「弦巻を夜中に呼び出したら、ここまで来るかどうか」で賭けをしていたという。 |
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・・・とにかく棋士の仲間内で僕の株は上がったらしい。 |
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当時、僕のところに連盟の重鎮だった丸田祐三九段から電話がかかってきた。 |
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「弦巻君、今度連盟から新しい雑誌を出すことになったから、写真撮ってくれる?」 |
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もちろん断るはずもない。 |
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当時の将棋界は「棋界の太陽」と呼ばれた中原誠さんの全盛期。 |
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連盟の運営は大山会長がすべてを仕切っていた時代で、当時32歳だった僕は本格的に将棋カメラマンとしての一歩を踏み出した。 |
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大山会長&丸田理事で骨格を作って、棋士会の進行は升田さんや花村さんが取り仕切っていた頃でしょうか。 |
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<大山康晴の豪放、升田幸三の美学> |
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僕が升田先生と酒を飲んだのは1回だけ。 |
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1977年、・・・東京駅の寿司屋で2時間ほど・・ |
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テーブル席に向かい合って座りながら、 |
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「お前は誰だ」 |
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「カメラマンの弦巻です」 |
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「大山の手の者か」 |
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「ただのカメラマンです」 |
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升田先生はなおも僕を試し続ける。 |
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「いまの将棋連盟、大物は誰だ」 |
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「ちょっと僕には分かりません」 |
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「あのほおずき頭は大物か」 |
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「・・・」 |
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すこし酒が回ってきた僕はつい・・・ |
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「大物は、いないのではないでしょうか」 |
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するといきなり升田先生が立ち上がり、腹の底から声を響かせた。 |
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「それはこの俺を入れてのことか!」 |
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唖然とする周囲の客。 ・・・ |
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「写真を撮りたいなら、なんでも言いなさい」 |
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急に優しくなった升田先生を見て、僕はおかしくなった。 |
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外見とは裏腹に、本当は優しい方だったのである。 |
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・・・新幹線のホームまで見送る。 |
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窓際に座った升田先生が、ホームの僕に手を振ってくれた。 |
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忘れられない2時間だった。 |
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【強がりが、雪に転んで 廻り見る】 |
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まさに貴重な記録の宝庫です。 |
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『棋士・その世界』とセットで読むと 理解度増しそうです。 |