『文藝春秋2021・9月号』の見出しは、芥川賞二作と台湾・蔡英文総統の単独インタビュー です。


有働さんのインタビュー記事32回目は 羽生さんの登場です。
 
「有働由美子のマイフェアパーソン㉜・羽生善治」より、


レジェンドが「令和の将棋界」を語りつくした、 タイトルは 「藤井聡太さんはAI時代の象徴かな」。


有働 「今年五月から芸能事務所と契約されましたが・・・」
 
羽生 「対局以外のお仕事は個人で受ける場合と将棋連盟が受けるケースがあったんですが、対応するのが難しいケースも出てきているので・・・」
 
羽生 「『えっ、ご本人ですか』と困惑されるケースが結構ありまして・・・」
 
羽生 「棋士の生活スタイルには独特な面があり人に任せにくいのも理由の一つです」
 
羽生 「タイトル戦以外の対局は、・・・二週間前まで日程が決まらないケースがあります」
 
 
羽生 「坂田先生の逸話を二つ紹介します。 一つは、関根金次郎名人との対局で・・・『銀が泣いている』・・・」
 
羽生 「もう一つは、木村義雄名人との対局で・・最初に、端の歩を一個突きました。・・・」
 
羽生 「弟子が『なぜ損をする端を突いたんですか?』と聞いたら、坂田先生は『今にわかる』と・・・」

 

 

有働 「昨年末、羽生さんが投了した局面で、羽生さんが圧倒的に優勢だったとAIが評価したことがありましたよね」
 
羽生 「この一件には『驚いた』というのが率直な感想です」
 
羽生 「人間にはプレッシャーや不安を感じ自己評価を下げてしまうけれども、AIには全くないので、人間との乖離が生まれます。」
 
羽生 「対局の終盤でAIが間違えることはほぼないので・・・」
 
羽生 「AIが99%優勢と判断しても、人間の盲点になるような何かを見つけられれば99%の勝ち、見つけられなければ99%の負け、という紙一重の局面もよくあるのです」
 
有働 「AIにできて羽生さんにできないことってあるんですか」
 
羽生 「わかりやすい例で『アルファ碁』、機械学習で3000万局の対戦を繰り返しました。 人間が一生でできる対局数は10万局くらいです」
 
有働 「逆に羽生さんにできてAIにできないことというのは」
 
羽生 「『ちょっと変わったことをやってみよう』という不確実なアクションや一手は、AIには結構難しいんじゃないでしょうか」
 
有働 「AIの話になると必ず出てくるのが藤井聡太さんです」
 
羽生 「・・・ある意味で、AIが人間と相克する今の時代を象徴する棋士なのかなと思います」
 
 
有働 「羽生さんが『銀が泣いている』みたいなことは?」
 
羽生 「よくありますよ。 将棋って結局、駒を全部使いきれないと勝てないし、いい内容にならない」
 
羽生 「ただ、ある駒が全然動いていなくても、そこに存在することに意味があるといのはよくあります」
 
”羽生さんの活躍はイコール我々世代への肯定。 その羽生さんが藤井聡太四段(当時)に敗れたときは、我がことのようにショックでした。 でも今回お話を伺って・・・やっぱり羽生さんは、いつまでも私たち世代のヒーローです”(有働)
 
 
”観る将”ファンには、とても分かりやすい対談だと思いました。
 
 
 
          有働由美子の枚フェアパーソン㉜・羽生善治 『文藝春秋2021・9月号』
          インタビュー : 有働由美子
          2021/8/10 発売