本書は、公の場で初めて 人間(プロ棋士)に勝ったコンピュータ将棋(あから2010)が生まれるまでのアイディアと工夫の軌跡です。

 

 

 

 

①1974年11月の開発開始からのコンピュータ将棋の歴史
②コンピュータ将棋のアルゴリズム・基本技術
③「あから2010」に加わった各ソフト(激指・YSS・GPS・Bonanza)の解説
④合議システムの誕生
⑤人間を超える大局観を目指す「習甦」の誕生と進化
⑥コンピュータ将棋対局場所 「Floodgate」の誕生
⑦コンピュータ将棋の弱点・3事例
⑧清水市代女流王将VSあから2010 一番勝負(2010.10.11対局)

2010.10.11対局時におけるコンピュータ将棋の概略を知ることが出来ました。
 
その後のコンピュータ将棋の進化は目を見張るものがあります。

米長邦雄永世棋聖VS「ボンクラーズ」 (2012.1.14対局「ボンクラーズ」勝)の棋譜と解説も記載されています。

「われ敗れたり」米長邦雄永世棋聖著が棋士目線の書であるなら、本書はコンピュータ将棋側の目線でまとめられた書という意味において対をなすと感じられました。
 
(出版当時の感想です)
<<「女流王将VSあから2010」の対局が、人間(プロ棋士)対コンピュータ将棋の同じ土俵での対戦のスタートとみると、今年3~4月の5戦を含め もう何局ほど楽しむことが出来るのでしょう?

いつか来るであろうXデイ(数年以内といわれる)までに出来るだけ多くの棋譜を残して、かつ その日が出来るだけ先に延びる事を期待しています。

棋士にとって コンピュータ将棋対局が大きなリスクを伴う事がはっきりしているだけに とても贅沢な要望だと承知はしていますが・・・・・。

コンピュータ将棋協会blog (http://www.computer-shogi.org/blog/)  にも、本書が 学術的専門書以外で初めての本と紹介されています。
棋士もコンピュータ将棋協会の方々も より多くの情報を紹介されることを期待するしだいです。>>
 
 
Ponanza開発者の山本一成さんは 羽生さんとの対局を長年待ち望んでいましたが、
第2期叡王戦(2016年)で佐藤天彦名人が優勝し、電王戦で将棋ソフト(Ponanza)と現役名人が対戦しました。

Ponanzaが 2戦とも勝利し、AIの進化を広く知らしめることとなりました。

叡王(第1期は山崎隆之八段)は 電王に0勝4敗と勝利する事はできないまま、人vsソフト の対局は終了しました。
 
公式の 人vsソフト の対局は、清水市代女流王将VSあから2010 一番勝負(2010.10.11対局)から 6年で終わりました。

あらためて あから2010のスタッフを見ると 錚々たる方々ですね。

当時の熱気を思い出します。
 
 
<本書の構成>
プロローグ 清水市代女流王将vsあから2010 平手一番勝負
    松原 仁  はこだて未来大学教授、「あから2010」仕掛け人
第一章 負け続けた35年の歴史
    瀧澤武信  早稲田大学教授、 コンピュータ将棋協会会長
第二章 コンピュータ将棋のアルゴリズム
    小谷善行  東京農工大学教授、 コンピュータ将棋協会前会長
第三章 激指の誕生
    鶴岡慶雅  東京大学准教授、 「激指」プログラマ
第四章 YSSの誕生
    山下 宏   「YSS(山下将棋システム)」プログラマ
第五章 GPS将棋の誕生
    金子知適  東京大学准教授、 「GPS将棋」プログラマ
第六章 数の暴力で人間に挑戦! Bonanzaの誕生
    保木邦仁  電気通信大学特任助教、 「Bonanza」プログラマ
第七章 文殊の誕生、 あから2010の人間への挑戦
    伊藤毅志  電気通信大学助教、 「あから2010」仕掛け人
    金子知適   保木邦仁
第八章 習甦の誕生
    竹内 章   「習甦」プログラマ
第九章 コンピュータの主戦場 「Floodgate」の切磋琢磨
    篠田正人  奈良女子大学准教授、 元アマ竜王
第十章 コンピュータ将棋の弱点を探る
    古作 登  大阪商業大学アミューズメント産業研究所主任研究員、 元奨励会三段、 「週刊将棋」元編集長
第十一章 女流王将戦 一番勝負
    橋本 剛  松江工業高等専門学校准教授、 「TACOS」プログラマ
エピローグ 名人に勝つ Xデイ のあとで
    松原 仁
   
   
  コンピュータ将棋協会:監修
  2012/11/1  初版