大綱質疑する石谷やす子議員


永藤市長による「IR・カジノ誘致に堺市も積極的に関わっていく」旨の重大な発言を受け、前回の議会において質疑を行いました。その質疑の中でギャンブル依存症についての認識に対して、永藤市長は次のような答弁をしました。

「マイナスにきっちりと対応、あるとすれば対応することが必要なんですが、それを補うほどのプラス効果が大きくあるのであれば、私は進めるべきだと考えております」

と言ったと思えば、

「ギャンブル依存症につきましては、IRができていない現在でも私は問題になっているというふうに思っておりまして」

と。そこで、今回の議会でもカジノ質疑パート2を行うことになりました。

何にしても、まず、「あるとすれば」ということについては、永藤市長も健康福祉局も認めたように、問題が「ある」ことについて議論する余地もありません。現在、カジノがない日本においてもパチンコ、パチスロ、競馬、競輪などの公営ギャンブル(遊戯)だけでもギャンブル依存症の方は潜在的な方も含めて300万人以上と推計されているのですから。

今回、特に確認したかったのは、ギャンブル依存症問題を認識しておきながら、その「マイナスを補うほどの効果」の「マイナス」をどの程度見込んでいるのかでした。

ところが、大阪IR構想で想定されているゲーミング収入、つまりカジノ収益は3,800億円をはじき出すために必要となる賭け金の総額すら答えらませんでした。また、海外で既に試算済みの社会的損失額の想定すら、「IRを起因とします社会的損失というのはどういったものであるのか、またIRがどのように社会に対してマイナスの影響を与えるのかということが現時点でははっきりしておりません。そのような中、お尋ねの損失費用についてはお答えすることができません」と無茶苦茶無責任な答弁をしました。


この質疑で明らかになったのは、永藤市長は、具体的に「マイナス」の具体的根拠を持たず、それを補うほどのプラス効果(つまりカジノ収益、大型開発等、雇用面)があるから、カジノ誘致に積極的に関わっていくことはええことやと「人の不幸」などどこ吹く風と開き直っていたわけです。

しかし、それらを突っ込まれて嫌だったのか永藤市長は「大阪府・市でIRのことは議論されておりまして、堺が誘致をめざすというわけではありません」と情けない言い訳をしていました。しかし、何の法的根拠もない権限もない副首都推進本部会議や大阪広域ベイエリアまちづくり推進本部会議などで、IR・カジノ誘致頼みで、開発を進めようとしているのは否定できない事実です。

因みに、こちらから、海外での社会的損失推計を紹介しました。

↑「韓国射幸産業統合監視委員会 2012年発表 社会経済的損失費用推計研究最終報告書」

驚くべき、社会的損失額です。

永藤市長は、さらに驚愕の答弁をしました。

ギャンブル依存症に取り組んでいる団体?の方から聞いたらしいのですが、

IRというものがもし実現するんであれば、そのギャンブル依存症の対策というものをもう一度光が当ててもらえる大きなきっかけになるんじゃないかということもおっしゃっていました。
シンガポールの例を見ますと、2005年、IRが開業する前、ギャンブル依存症4.1%、そして2017年のデータでは0.9%ということで、こちら大幅に減っております。マイナス効果があればとお話ししたのが、実際にギャンブル依存症対策が行われることによって、ギャンブル依存症が果たしてこの日本でふえるのかどうか、それについては必ずしも私はマイナスと思っていない。むしろ今のパチンコ、パチスロによるギャンブル依存症対策が進む可能性が大いにあるんじゃないかというふうに考えております」

この答弁には大きな誤りが、大きく言って2点あります。

一つは、シンガポールの例です。

上記に貼り付けたリンク先は、IR・カジノ誘致に肯定的な記事を書いています。そんなサイトですが、シンガポールカジノで何故依存症の割合が下がったか理由を詳しく記述しています。以下、記事引用。

◆ギャンブル依存症の割合が下がった理由
 シンガポール国民と永住権保持者には、国内の2つのカジノへの入場料が課せられる。カジノの入場時には厳しい身分証チェックがあり、国民と永住権保持者は1回につき24時間有効の入場料100シンガポールドル(約8,000円)、または年間入場料2,000シンガポールドル(約16万円)を支払わなければならないと決められている。そして、カジノへの出入り禁止措置、または入場回数制限が、本人および家族の申請により可能となっている。

 現地英字紙のストレーツタイムズによると、2017年9月末に本人または家族がカジノへの入場禁止を申請した人数は25,000人超。また、約47,000人が債務未決済の破産者または生活保護受給者であることを理由にカジノへの出入りを禁止されている。

 2016年度に国民と永住権保持者が支払ったカジノ入場料の総額は1.3億シンガポールドルで、2013年度の1.7億シンガポールドルから21%減少しており、国民のカジノ離れが見られた。


と、かなり厳しい規制が定められています。ところが、日本のカジノ実施法におけるギャンブル依存症対策の規定は次のような代物です。

①日本人客のカジノ入場は週3回、月10回まで
②入場料6,000円
③入場に当たっては個人番号カードを提示する

以上です。こんな程度のギャンブル依存症対策です。

つまり、二つめの誤りは、永藤市長のいうギャンブル依存症対策は「ギャンブル依存症になったあとの『事後策』であって、『事前策』ではない」ということです。にも関わらず、シンガポールでのギャンブル依存症割合を比較に出すなど話になりません。

今、必要な施策はカジノ頼みのベイエリア開発ではなく、水産農業、小規模零細事業・中小企業などの基幹産業への支援をさらに拡充し、堺市独自の伝統文化といった観光資源を売りにした観光戦略です。また、喫緊の課題である防災対策にこそ地方公共団体はより一層力を入れるべきです。