1989年7月17日ー島崎藤村「椰子の実」- | LETTER

1989年7月17日ー島崎藤村「椰子の実」-

名も知らぬ 遠き島より

 流れ寄る椰子の実一つ

故郷の岸を離れて

 汝(なれ)は そも波に幾月

旧(もと)の木は生いや茂れる

 枝は なお影をやなせる

われもまた渚を枕

 孤身(ひとりみ)の浮寝(うきね)の旅ぞ

実をとりて 胸にあつれば

 新たなり流離(りゅうり)の憂(うれい)


有名な島崎藤村の詩「椰子の実」だ。

昭和11年7月13日、はじめて放送され

まったく間に国民に愛唱された。


しかし、詩ができたのは、はるかむかし

明治34年のことだった。

柳田国男という友人が明治30年、

愛知県の伊良湖岬(いらこみさき)の浜に

打ち上げられていたヤシの実のことを

藤村に話したところ、そのヒントだけで、

こんな詩ができた。

詩人の豊かな想像力、創造力に驚く。