Side−S
クリスマスイブ…
いや、雅紀の誕生日の夜だ…
雅紀は、昼間はバスケ部の仲間たちとクリパを楽しみ、夜はオレの家にやって来る。
準備はバッチリ、整った。
と言っても、コンビニで買った『お家クリスマス』のチキンにサラダやピザ、それにケーキをテーブルに並べただけ。
…後は、主役が来るのを待つばかりだ。
『ピンポーン♪』
インターホンのモニターを見ると…
『しょおちゃ〜ん♡お待たせ〜』
「待ってたよ、まさ…き」
…えっ?嘘だろ…?
ドアを開けると、雅紀の後ろから覗く二人が居て…
「んふ、メリークリスマース!」
「うふっ、来ちゃった♡」
…なんで、阿の狛犬の大野さんとその使い魔の二宮さんが雅紀と一緒に居るんだ?
オレは悪い夢でも見ているのか…?
「雅紀、この二人は?」
「さっき、この近くで会ったの。同じ学校の人みたいで…」
「なんか、意気投合しちゃって…」
「クリパを二人きりでするって言うから、それじゃ寂しいでしょ?って…」
「翔ちゃん、お皿とコップを出して?この二人が、コンビニで色々買ってくれたんだよ?」
「自分たちがお邪魔するので…」
「その分は、ちゃんと買いましたからね?」
オレの中で、何かが『プツッ…!』とキレた。
「ちょっと…いいかな?」
「はい?」
「何かな?」
雅紀にオレたちの会話が聞こえないようにと、三人でリビングの端っこへと移動した。
『何かな?じゃねぇだろ?どうしてウチに来たんだよ…!』
『だって…どうせ、俺たちがいなくなったら、雅紀くんと二人きりでイチャイチャすんだろ?』
『少しでも、雅紀くんの負担を軽くしてあげようと思って…』
『ほら、見ろよ。あの可愛いケツ』
『あそこに、翔くんのコレをぶち込まれるかと思うと、何だか不憫で…』
「いでっ!」
大野さんにイチモツを握られ、オレは堪らず悲鳴を上げた。
「しょおちゃ〜ん?どうかした〜?」
雅紀が気にして、こっちを見てる。
「い…いや、な…なんでもないよ?」
取り敢えず、誤魔化した…。
『なにするんですか!』
『んふ…なかなか、立派なモノをお持ちで…』
『コレを挿れられんのか…。さぞかし痛いんだろうな…』
『痛くなんかしません!余計なお世話です!』
『おや?この紙袋は…』
『中身はローションとコンド…』
『おい!人のもの勝手に見るんじゃねぇって!』
「お待たせ〜。並べたよ〜。」
「お、おう…」
「それじゃ…」
「クリパ、クリパ…と!」
「ごめんな?手伝わなくて…」
「いいよ?翔ちゃんの盛り付けって、センスないんだもん」
……おっしゃる通りデス、ハイ。
その後は、大野さん提案の『お絵かきしりとり』をして…
「もぉ!翔ちゃんのこの絵、分からなさ過ぎ!!」
「いや…どう見ても犬だろ?」
「えっ?これで…犬?」
「犬って言うより…宇宙人?」
気を取り直し、二宮さんがトランプの手品を披露して…
「アナタが最初に引いたのは、このカードではないですか?」
「えーっ!なんで分かったの?すごぉーい!!どこにタネが仕掛けてあんの?」
なんて燥いでいる雅紀を見ているオレに、大野さんが囁いた。
「どうだ?あの笑顔…。あんなに笑って…。楽しんでもらえたみたいで、よかったよ…」
「…えっ?大野さんと二宮さんは、オレたちの邪魔をしに来たんじゃ…」
「誰が好き好んで、自分たちのイチャイチャタイムを犠牲にしてまで、此処に来たと思う?雅紀くんに楽しんでもらうために決まってるじゃん?」
…そうだったんだ。
「…ありがとうございます。」
「んふ、素直でよろしい。」
楽しい時間はあっという間で…
大野さんと二宮さんを見送った後、騒ぎ疲れたオレと雅紀は…
ベッドでイチャイチャすることもなく、そのまま翌朝までぐっすりと眠ってしまったのだった…
…嘘だろ?
…おしまい