優しく包み込む安堵感 | 『℃LUTCH』

優しく包み込む安堵感


Tさんとの初めまして…


あの時の僕の中では

Tさんはmixi友達の数百人の一人で

ほとんど認識もしてない人の一人だった


実際、会ってみると

穏やかな雰囲気の

優しい表情を時より見せる

5才年上の人だった


僕はこれまであったことを話した

Tさんは親身に聞いてくれている

それが伝わる眼差しと表情をしていたのを

今でも記憶の片隅に残る


Tさんもまたアルコール依存症で苦しみ

克服する為に自身と向き合い

乗り越えようとしていた


Tさんは八王子のある場所に

一緒に来て欲しいと言い

僕はTさんとそこへと向かった…


そこはマンションの一室で営業している

民家っぽい飲み屋(ゲイバー)だった


Tさんは、そこのマスターKさんに

事情を話していたのか

紹介されてすぐに

Kさん「しばらくここに居ればいいよ」

と、言ってくれた


Kさんは恰幅のいい白髪混じりの短髪で

甚平姿、年は40代半くらいだったかな…


そしてTさん、Kさんが会話している中

僕のことを話しているのにも関わらず

僕は無気力に、そのまま眠ってしまった…


目が覚めると、賑やかな声が

居間の方から聞こえてくる…


僕はそっと襖(ふすま)を開ける

Kさん「おっ、起きたか?お腹空いただろ?

ご飯たべるかい?こっちおいで」

と、僕を手招きした

そこには数人のお客さんがいたが

Tさんの姿はなかった…


年下の子や30代、40代

飲み屋なのか、駆け込み寺?バー?

そんな場所のようだった

何かに悩んでる人、居場所がない人

病気を抱えてる人たち

様々な事情をもつ人の憩いの場所だと

後々僕は知った


数日、そこで生活し

ある日、Tさんが会いに来た

Tさん「明日、市役所に一緒に行こう!

これから貢士くんが、どうしたら

一番いいのか色々考えたんだ」


僕「えっ?どういうことですか?」


Tさん「生活援護課に相談に行くんだよ」


僕「何ですか?それ」


Tさん「うつ状態が続いて働けないし、住む家もないでしょ?だから生活保護の申請をして受理されたら部屋も借りられるはずだから、取り敢えず明日、一緒に行こう」


心の中「この人、何でここまで俺のことを一生懸命、考えてくれるの?俺、死のうとしてたのに、生きる術を導いてくれてる?」


僕はTさんの真っ直ぐな熱心な情に

優しく包み込んでもらってるかのような

安堵感で視界が涙でぼやけていった…


僕「ありがとうございます」