目下、話題の「新幹線大爆破」。1975年7月5日の公開当時は在住の中野の街中の宣伝看板で知りましたが、中学1年生の小遣いでは映画館での鑑賞は困難でした。同級生の中には早々と鑑賞した者もおり、内容を聞き出し概要を把握しました。

公開直後の8月20日に発売された「鉄道ジャーナル」の10月号に5頁の特集があり、専門家からの視点や社会情勢を踏まえた反応など当時を知る上での貴重な記録です。やや批判的な姿勢の編集方針でしたので、娯楽映画よりも社会的な視点で見ておりますが、外国での好評前の事でした。

晩秋には新中野(鍋屋横丁)の「中野オデヲン座」(小説・映画「地下鉄に乗って」の舞台)にて新幹線物の「動脈列島」と、洋画の「スティング」の三本立てで再上映され、随分と迷いましたが金欠にて鑑賞の機会を逸しました。

その後、TVにて短縮版を数回鑑賞し、最初は「鉄道ジャーナル」の記事の受け売りで批判的でしたが、回数を重ねる毎に娯楽作品としての面白さに魅了されました。1990年代に浅草の映画館で初めて見ましたが、プリントが劣化して傷や褪色がありました。まだまだVHSソフトが高価で販売されていた時代です。その後、京橋の「フィルムセンター」で同館所蔵のプリントを見ますに、傷一つ無い公開当時の最良の画質と思われる状態に感動しました。但し色彩は現在のデジタル修復バージョンよりも青系の度合いが強い印象でした。同時期に地元の国分寺の古本屋に公開当時のプログラム(パンフレット)が出ましたが、状態が悪く見合わせましたところが四半世紀を経ても一度も中古品を見かけず、当座の品として購入すべきと後悔しております。

1998年に廉価VHSソフトが発売され購入、直後のLDは見合わせ、DVDの国内公開版と海外公開版の2枚を所有しております。

 

さて、あまり話題にならない部分として

北海道の貨物列車爆破場面、通票での連絡にて危機を知った機関士・機関助士が脱出する場面に映画用の演出があります。運転台と炭水車のステップを使えば地面までは僅か数十センチ、楽に下車脱出出来ます。実際に9600型機関車を見ますと納得です。

 

フランス版は日本の固有名詞がフランス読み。ひかり→イカリ、浜松→アママツ、博多→アカタ、北海道→オカイドウ、犯人の息子の賢一もローマ字表記のKENICHIが「ケニシ」などです。余談ですが新大阪もハイフンを入れないSHINOSAKA表記ではシノサカと誤読されました。

 

「ひかり109号」の停車場面で流れる音楽は、リヒアルト・ワーグナーの楽劇「ニュルンベルクのマイスタージンガー」前奏曲です。映画用の新録音か、LPレコードの流用か知りたいところですが、多分後者でしょう。しかしてその実態は?

 

音楽史研究家 郡 修彦