明治時代の馬車鉄道から始まった東京の路面交通は私鉄3社の競合を経て公共交通となり、大正・昭和の都市交通として欠かせぬ存在でした。しかし、高度成長期の自動車の普及により路面電車は時代に合致しないとの短絡的な誤った発想が日本を支配し、公共交通故の合理化も遅れがちとなり、遂には全線廃止が計画されて1967年(昭和42年)12月9日の第一次廃止から始まり、1972年(昭和47年)11月11日の廃止により現在の荒川線に相当する27・32系統を除き全線が廃止されました。

道路の横断歩道から安全地帯への移動により極めて簡便に乗車出来、一両の収容人数もバスよりも多いとの利点が路面電車にはあります。その反面、バスには無い架線と軌道の維持があり経費と人員を要します。昨今では路面電車の利点が見直され、高度成長期の淘汰から生き延びた各地方都市の路面電車は本来の役割を良く果たしております。都電も荒川線の延長や、路線新設の話題が時折出ますが実現しておらず、是非とも全盛時代の様に主要路線が復活して、地下鉄よりも簡便に乗車出来得る交通機関として都市交通を支えて欲しいものです。

 

音楽史研究家 郡 修彦

半世紀前の記念乗車券です。

収容袋は何と樹脂製との簡易体裁です。

当時は入手難で、昨今漸く入手出来ました。