2015年7月11日

現在流布している玉音放送の音源はピッチが低い事を前回記しました。大体4分41秒程で、CDの大半がこの時間です。実は実験的に正確なピッチと思われる速度にて再生したものを9日の報道直後に作成しましたところ4分30秒になりました。これが果たして正しいのか否か疑問でしたが、10日の報道では宮内庁所蔵のアセテート盤を再生した時間が4分30秒とあり、私が実験的に再生したものが正しいと立証されました。これは、機械的な計測では無く数多くの昭和天皇の玉音を基に推定復元したものが、原盤と同じであった訳です。8月14日の録音当日にはストロボスコープによりアセテート盤の回転数は正確に合わせられた筈ですので、今回の再生時に正確に速度を合わせていれば4分30秒が玉音放送の正確な時間になります。
10日の報道では発見された5枚の原盤の中に翌年の食糧問題の放送音源があり、これは早い時期に復刻されて容易に聞く事が出来ますが、一部の報道では存在が知られていないとの珍妙な記述がありました。早い時期に宮内庁の原盤から復刻され、その事実が忘れられた故の誤報でしょう。宮内庁の原盤から録音する以外には不可能な訳ですから、半世紀で事実が不明確になったとは少々情けない話です。

音楽史研究家 郡修彦