毎月第一日曜日13時半より武蔵小山のライブカフェ「アゲイン」にて開催中の音楽鑑賞会「ほのぼのSP講座 SP盤でたどる昭和流行歌史」の第176回の御案内です。本年1月より開始の新企画は季節の作品で、8月は「高原・キャンプの歌」を集めました。8月の行楽にキャンプ(当時の表記はキャムプ)が登場したのは戦後の事ではなく、既に戦前に都市生活者に普及しておりました。また、登山も同様であり今日の生活様式の源流が意外と早い時期に始まっている事を歌が裏付けております。戦前の流行歌の幅の広さと清潔さをお楽しみ頂き、戦後は高原が感傷の題材に変化している点にご注目下さい。

1、キャムプ小唄(藤山一郎)1931年
(作曲の古賀政男、歌手の藤山一郎の最初期の作品であり、若々しい颯爽とした歌唱が印象的です)
2、高原の唄(中野忠晴)1932年
(大ヒットの連打後の模索期の古賀作品として一風変わった作風です)
3、山は微笑む(楠木繁夫)1935年
(新会社での再出発を図った古賀政男の本領発揮の作品、楠木繁夫の美声も見事)
4、山岳の唄(楠木繁夫)1935年
(北アルプス白馬岳の副題を持ち、古賀政男か長津義司か判然としない作品)
5、月のキャムプ(ミス・コロムビア)1935年
(1930年代の流行歌の真骨頂とも言うべき清潔で品の有る珠玉の名作です)
6、キャムプは更けて(二葉あき子)1936年
(牧歌的な旋律に新人の二葉あき子の美声が調和した見事な一曲)
7、キャムプの朝(ミス・コロムビア)1937年
(支那事変の直前に企画された平和な作品として貴重な存在です)
8、キャムプの唄(松平晃)1938年
(事変下でもまだまだ行楽の余裕が有った事を示す歴史の証です)
9、キャムプの一夜(田端義夫)1941年
(田端義夫の企画では題材がキャムプでも曲調は演歌路線との珍妙な作品です)
10、高原の羊飼い(真木不二夫)1950年
(占領下でも余裕が生まれ始めた時期の爽やかな作品であり、長津義司得意の旋律です)
11、さすらいの旅情(岡晴夫)1951年
(岡晴夫には珍しい高原物、旧作の転用ながら上質の感傷が見事です)
12、白樺の町(三條町子)1951年
(占領下の高原の風景が目に浮かぶ様な抒情作品です)
13、キャンプの歌(川田孝子・大貫房司)1952年
(新作童謡として作られた子供流行歌で、戦後の復興期の雰囲気が出ております)
14、高原の夢は悲し(近江俊郎)1953年
(新会社での心機一転と思いきや、矢張り抒情路線が中心の近江俊郎の佳作です)
15、高原列車は行く(岡本敦郎)1954年
(福島の沼尻鉄道を題材にした爽やかな名作です)

何れも良質のCDとSP盤による良好な音質です。是非とも御越し下さい。

8月4日 午後1時開場、1時半開演、3時前に終了予定、会費2000円(飲物一杯付)

音楽史研究家 郡修彦