日本赤十字社(日赤)は、災害救護で活躍する法律に基づいて設置された特殊法人です。日赤の国際救護活動や災害救護活動の評判は高く、東日本大震災でも大活躍しました。

ところがです。日赤は血液事業も行っていますが、この血液事業は日赤が独占しているのです。そこには病魔が巣つくり、医療費を高騰させ、国民の命に関わる深刻な事態があるのです。

2013年11月、HIVに感染した献血者の血液が日赤の検査を潜り抜けて輸血されるという看過できない事件が発生しました。2003年にもB型肝炎にかかる輸血事故がおきています。

この背景には、競争がない独占事業であり淘汰される心配がないため、技術開発に不熱心で世界標準から取り残される日赤の構造があります。

日赤はB型、C型肝炎やHIVウイルスに対する核酸増幅検査を導入しています。しかし、それ以外のウイルスはノーチェックでエボラウイルス感染が大問題となっている昨今、看過できない問題となっています。

こうした状況に対応するため、昨今は輸血に混入する病原菌をまとめて不活化する技術が注目されており、米国のバイオベンチャー、シーラス社の開発した技術が世界標準となり、世界中に普及しています。

しかし、日本では導入の目途が立っていません。日本の血液事業は、日赤を頂点に血液製剤のパックのメーカーまで様々な企業が関わっており、シーラス社はこうした既得権を脅かす存在だからです。

しかも、血液の恒常的な不足も日赤独占の弊害です。日赤は貴重な献血血液の一部の成分を大量に廃棄しているのです。

それは、複数のドナーから採取した血液を混ぜて使えば、感染のリスクが高まるため、輸血感染を防ぐために廃棄しているというのが理由ですが、先進諸国では不活化技術を応用しながら、輸血感染を増やさず、十分量の血液を確保する技術開発が進んでいます。

ところが、日本は血液事業を日赤が独占して競争とは無縁であるため、技術開発が進まず、輸血医療の世界標準からどんどん取り残されているのです。

また、血液製剤も日赤の独占販売のため、極めて高価となっています。例えば、通常、1回の輸血で使用する四百ミリリットル赤血球製剤は約1万7千円、血小板二十単位で約15万4千円となっています。

それらの原料は善意の献血によるものであるため、販売価格との差額は相当なもの=利益となっていることは容易に想像できます。日赤の殿様商売が医療費の浪費を招くと批判されています。

世界各国は血液事業独占による腐敗を防ぐため試行錯誤しています。アメリカでは、赤十字社と血液バンクという2つの組織がライバル関係にあります。

また、フランスやオランダでは、赤十字社から血液事業を分離して、NPO法人化しています。お隣の韓国では、大病院の輸血部で献血を受け入れ、輸血することができます。

日本でも同様の制度を導入して、日赤による血液事業独占にメスを入れる必要があります。

ですが、利権の存在が改革を妨害しています。日赤には厚生労働省の医系官僚が天下っていますし、大学病院の医学部教授も天下っています。

こうした教授たちが厚労省の審議会の委員を務め、血液行政の審議を行っているのです。重要な天下り先に不利益になることを行うはずがありません。

また、取引メーカーにとっても日赤は言い値で取引してくれる有難い存在です。その見返りに日赤幹部がメーカーに天下っています。

日赤、厚労省、学会、メーカーが利権で結びつく構図が日本の血液事業をダメにしているのです。利権死守のために国民の命を軽視する体質が染み込んでいます。

日赤による血液事業独占が続く限り、輸血事故は繰り返されますし、医療費の浪費が続きます。この利権の構造を炙り出して叩き潰さないといけません。     
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