4・5月に今年の春の新茶を見に行ってきました。
全体で言うと沿岸部は出来が悪く、内陸部は良い出来でした。
理由は江蘇省・浙江省等では茶摘み時期に日照りの日が続き、ほとんど雨が降らない状態で明前茶は近年では最も出来が悪いと言うことでした。特に碧螺春・西湖龍井・安吉白茶などの名茶は私が聞いた十数軒のお茶問屋で全て去年のものの方が質が良いという有様でした。
ですから今年の碧螺春・西湖龍井などは次のような問題があります。
①明前茶はほとんどありません。
あっても杭州市近辺では良いものがなく浙江省南部からの取り寄せが多い。
名前は西湖龍井・梅家塢龍井・獅峰龍井でも本場のものは見当たりません。
②明前に間に合わせるため早稲種の烏牛早などの緑茶を龍井茶として売り出している。
③良いものがほとんど無いので値段が高騰している。
④碧螺春も例年に比べかなり質が落ちている。
⑤わずかですが良いものもありますが、よほど注意して探さないと見つかりません。
私も良い新茶を見つけるのに二日間かけて、やっと一軒からそれなりの新茶を見つける程度でした。
⑥今年の明前茶は、よほど注意した方が良いと思います。名前や値段に頼るとひどい目に遭います。
一方、安徽省・湖北省・江西省など内陸部の新茶は、良いものが出来ています。六安瓜片・太平猴魁・黄山毛峰・双井茶・恩施玉露・信陽毛尖など内容も遜色なく良いものがありました。
春の新茶は明前茶が一番だという話は、私はお薦めしません。なぜかというと清明節(日本の春のお彼岸)に先祖に供物としてお茶を淹れるため高級だと言うことになっていますが、清朝の乾隆帝も「火前の嫰」(清明節の前日の火の日より前の龍井茶は新芽が弱く柔らかい)と言っているように、こくのあるお茶が出にくいという問題点があります。歴史上の多くの詩人も雨前茶(穀雨の前のお茶)を評価する詩は多いのですが、明前茶を評価する詩はほとんどありません。
明前茶が声高に良いお茶だと言われるようになったのは、ここ数十年のことで茶商が早く取引を進めたいため評判を上げた可能性が大きいのです。勿論中国の茶産地は広大ですので地域によって違うのです。特に日本人は、明前茶より雨前茶の方が飲用習慣から美味しく感じるのです。同時に今年のように明前茶は天候に左右されやすいので、よほど現地の状況を把握していないと良いものには出会いません。
今年は雨前茶の中から、良いお茶を探すことをお薦めします。