紅茶・金駿眉について | 清香緑韻

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中国茶の茶飲み話。

 大変長い間失礼しました。また少し中国茶についてお話ししてみたいと思います。
金駿眉という紅茶を聞いたことがありますか?
 最近中国茶講座をしていると「金駿眉という美味しい紅茶があるそうですね」とよく聞かれます。今中国では紅茶ブームのまっただ中にあるのです。金駿眉という紅茶にも日本では誤解があるようですから少しお話ししましょう。
 

 金駿眉は昔からあったものではありません。だいたい中国では紅茶は外銷茶(がいしょうちゃ)と呼ばれ外国で販売するお茶で、中国人が飲むことはほとんど無い物でした。従って、高級品ではありませんでした。てすから中国で紅茶を商うのは輸出用であって国内では、非常に少なかったのです。中国が豊になると緑茶・白茶・烏龍茶・黄茶・黒茶が近年どんどん高価になっていく中で取り残されたと言っていい状態だったのです。これでは紅茶産業に従事する人々は困るわけで、何とか紅茶も高値で取引できるように国内市場を狙って開発しようという中から出てきたのが金駿眉なのです。正山小種の高級品を模索していた開発時期に私は丁度現地の責任者と交流がありましたので開発年表を作ってみました。


◆金駿眉の開発年表

年 度        記     事
2007    5月21日 桐木関、江元勲茶廠訪問。

       正山小種の高級品として銀駿眉販売

       ➤価格2000元(500g日本円で36.000円)。

       来年金駿眉を生産予定。


2008    5月23日 江元勲茶廠訪問。

       正山小種の最高級品として金駿眉

       ➤価格4000元(500g日本円で72.000円)で販売開始。


2009    中国全土で金駿眉の評価が高まる。

        金駿眉価格の高騰始まる。


2010   5月1日  桐木関、永勝茶業訪問。金駿眉

       ➤価格6500元(500g日本円で117.000円)になる。

       ▼12月22日  広州で桐木関以外の金駿眉販売確認。

       ➤価格崩壊500元(500g日本円で9.000円)程度になる。

       ▼★金駿眉は本来正山小種の最高級品として登場した

       紅茶の意味が有名無実化する。


2011   全国の茶葉市場に、各地の金駿眉販売が横行する。

       価格は250元程度から6500元程度まで。

       ▼★全国の紅茶ブームの中で金駿眉は

       中国紅茶の一種として価格帯が決められるようになる。

       ▼★全国の紅茶の価格が高騰。

       中国紅茶の値段ばバブル期に入る。

       (信陽紅などで100g20万元、日本円で3.600.000円のも出る)


2012   金駿眉は中国紅茶ブームの象徴品として定着する。

       この頃から各地の特色ある紅茶が生産される。

       ▼地域による紅茶生産競争の様相を呈する。


2013   前年度から続いて、全国の紅茶見直しによって

       金駿眉なら良いという紅茶ブームから特色が有り

       品質の良い紅茶の生産競争の状態になりつつある。



 本来金駿眉とは、福建省桐木関の正山小種の工場が最高級品の紅茶として開発したものなのです。ですからお茶としても素晴らしくミルクや砂糖などの添加物を入れなくても甘みのある美味しい紅茶です。ところが2009・2010年に高い評判を得ると桐木関は狭い地域ですので需要に生産が追いつきません。全国の茶業者が金駿眉を作り始めます。2011年に入ると値崩れが起き、生産地によって違う味の金駿眉が出てくるのですが、全て福建省桐木関の金駿眉として売買されるのです。
 このような状況から、金駿眉といえば高級だと言うことが一概に言えなくなるのです。2012年になると金駿眉なら何でも好いという状態から生産地の特長を生かした紅茶が出来るようになってきました。
 私はいつもお話しするのですが、名前で中国茶を探している内はよいお茶にたどり着けません。試飲して美味しいと感じたものが好いのです。嗜好品であるお茶を名前や値段に左右されて探すのは早く卒業したいものです。