いわゆる「大阪都構想」についての公開討論会。
ご縁がありまして私、衛星市議員として賛成の立場でパネラー参加させていただきました。
その実わたしも、昨春までは立場が異なりました。
どちらかと言えば反対、というスタンスでした。
私自身において認識する府市統合のメリット(広域一元化、公選区長によるきめ細かい基礎自治体運営など)、デメリット(財政コスト、初期の事務混乱リスクなど)の考え方は以前から不変です。
ではなぜ今回「賛成派」として参加した(賛成の立場に変わった)のか。
大きくは2つです。
・ 3度目の知事・市長W選挙では、相手方候補が「再度の住民投票」を一丁目一番地に掲げ、ともに圧勝したことから「デメリットよりメリットを取るべし」という強い民意が示されたものと受け止めた。
・ 「コンクリートから人へ」の社会風潮から一変。毎年、各地で発生する激甚災害を経て、広域インフラ強靭化の必要性を強く認識するとともに、「広域一元化の意義」についての認識も増した。
【財政シミュレーションの懸念】
(Q)275万人→60~70万人の基礎自治体になることで、スケールデメリットが生じコスト増になる。その一方で、地方交付税の算定(主として基準財政需要額)は旧大阪市のまま。実態的な財政需要に比して、地方交付税を取り負けるのではないか。
ご懸念は理解します。「行政サービスがきめ細かくなる」が真ならば、「コストは増加する」は常です。そのことを踏まえ、検討のポイントは2つです。
① 後述の「4特別区のメリット」を取るための必要経費と考えるか否か。
② 必要経費と捉えるなら、実際の財政運営が可能なのか。
反対派の先生方は、上記①②とも否定をされておられます。
賛成派の私たちは①を認めており、ゆえに②について一定の懸念を有しながらも、法定協議会で収支シミュレーションを示していること、また地方財政制度に課題があるならば(総務省を中心に)国政へ働きかける努力を否定するべきではないと主張しています。
総じて、反対派の先生方におかれましては負の側面が過度に強調されている感はありますが、一定理解するところではあります。あくまで「虫の目」として。そこに欠ける視点は「鳥の目」「魚(うお)の目」であります。
「大阪市ならではの事業所関連税収を活用した広域インフラのデザインを誰の手、どの財源で行うか」
「大都市大阪市が保有する広域的に供用する資産を、誰の手で管理するのが全体最適に適うか」
この2点において、反対派の先生方と認識が一致しない(鳥の目)。
そして、大阪府民のみならず大阪市民の皆さんにおかれても(先のW選挙の結果を見るに)都市のグランドデザインを望まれていると同時に、これまでの都市インフラのあり方につき厳しいご評価をいただいている(魚の目)。
「大阪市域に使えた財源を、周辺市域で使うことになる」可能性を言われますが
逆に「周辺市に使えた財源を、中心市街地整備に投入される」可能性もあるのです。
多くの府民市民の皆さんは、大阪のグランドデザイン、まちづくりの全体最適、関西経済の成長のために、これを望んで頂いているのではないでしょうか。
【現在の24行政区より、4特別区(自治体)のほうがいいのか】
一般論として、住民生活に身近な権限は、住民生活の近くにあることが望ましい(ニアイズベター)と言われます。この「身近」とか「きめ細かい」という表現が、やや曖昧に使われてきたように思います。
これを極めて単純化して言えば「公選区長による政策公約・実現」に尽きます。
「学校統廃合の是非」を例にとります。
275万人の大都市の市長選挙では、これは主たる争点になりにくいでしょう。個別具体の政策というより、有名人選挙や政党選挙になりやすいというのは皆さん実感されるところだと思います。
通常の基礎自治体における首長選挙であれば、この手のテーマはかなり大きな争点になります。60~70万人の都市も決して小さくはありませんが、公職選挙と政策反映が紐づきやすくなることは間違いありません。
なお、現在の24行政区は自治体ではありませんので、区長の人事も権限も275万人の首長の傘下です(たとえ公募をしたとしても)。
物事を話し合いで決めることを否定はしませんし、むしろ大切なことです。
しかし、どうしても決まらないときは、最後は民主的手続きの担保としての選挙で決するしかなく、府市統合ならびに4特別区への再編はその具体的手法であります。
【府市統合に、寝屋川市は関係ないのでは?】
大阪府の事務と財源(収入と支出)が拡張する訳ですから、大阪府民として当然に関係があります。
「我々も大阪府民なんだから、住民投票をしたいくらいだ」という本市の市民さんもいます。お気持ちは理解します。
しかしやはり、行政事務の整理統合をする大阪市(4特別区)の皆さんには住民生活としてより大きな影響を受けられるので、大阪市民限定で住民投票が行われます。
その差分をもって(大阪市民、周辺市民の)公平性は担保されているとみるべきです。
なお府市統合後、大阪市の隣接自治体は住民投票に拠らず、当該自治体議会の議決により特別区編入を決められるようになりますので、その意味でも周辺市に影響があります。寝屋川市の隣接自治体である大東市、門真市、守口市は大阪市隣接でありますから、そのいずれかの自治体が特別区に編入されれば、本市でも住民投票に拠らず議決で編入を決定できるようになります。
特別区への編入につき
「ときの市長が専決処分で決めてしまうかもしれない」
「議会が(不甲斐なくして)市民の意思を無視して議決してしまいかもしれない」
というご意見もあります。飽くまで選んでいただくのは市民の皆さんですから、その判断、決断をした政治家は、次の選挙に於いてその結果責任を受けることになるでしょう。
【(中核市になったばかりの)寝屋川市が特別区になる可能性を考えているのか】
先述のとおり、府市統合の後、寝屋川市が特別区に編入される可能性があるのは、かなりの条件が揃わなければなりませんし、その一つひとつの(世論を二分するような)決め事には議決を要します。その手続きのうえで、本市市民の多くの皆さんが特別区編入を切望されるならば可能性が零とは言い切れませんが、その議論は本市の中で巻き起こっていませんし、可能性は極めて低い状況です。
なお、広域インフラを中心とする権限、財源を除いては、特別区は中核市並み以上の権限を有することになります(保健所、児童相談所など)
そもそも、大きすぎる大阪市の事務権限(および広域自治の財源)が大阪府とバッティングするという課題認識のなかで起こった府市統合議論ですので、寝屋川市はもとより大阪市と同じではありません。
【討論会を経て、雑感】
賛成派、反対派、いずれの立場からも真剣に議論しました。
双方とも、大阪の未来にとって何が大切かを考え抜いたものと自負します。
新しい社会の仕組みをドラスティックに決める政治は、維新さんに強みがあるところ。「ポスト住民投票」を展望できるところまで本件を進めてこられた維新政治は、大阪の政治にとてつもないインパクトを与えてくれたものと思います。おそらく自民党には真似はできません。
では、新しい仕組みを決めたあとは?
「調整型」の政治として、国政与党自民党に強みが発揮できるところではないかと思うのです。「住民投票はゴールではなく、スタート」ということです。
住民投票がいかなる結果になろうとも、「ポスト住民投票」時代の大阪を、立場を超えて、また国政与党として創ってゆける。そんな予感を「実感」に変えてゆくことが、私たちの役割ではないかと思うのです。