HH企画第三弾
『HH〜ver.K/ver.T』
満員御礼!ご来場頂きありがとうございました!

沖田幸平 初脚本/演出
HH企画ver.K【獣に花】



HH企画3回目やると決まった時、
「こうちゃんも今回で最後だしさ、なんかやりたいことやりなよ」とゆう哲ちゃんの悪魔的無茶振りからが始まり。
当初はダンサブルでド派手なエンタメ舞台にしよー!とか考えてたんですが、そこから色々あり30分位のコント混ぜてやろうかーへへっ。となり、二転三転してクライムサスペンス。バイオレンス刑事モノになりました。どうした。
えー、理由はシンプル、自分の本当にやりたい事って何だろなって向き合った結果が『獣に花』でした。

千穐楽でも少し触れましたが『パラサイト 半地下の家族』で第92回アカデミー賞監督賞を受賞したポン・ジュノ監督もスピーチで引用してた、マーティン・スコセッシ監督の言葉で

「最も個人的な事は、最もクリエイティブな事だ」

が凄く頭に残っていて、HH企画は実験的に色々挑戦出来る場所。これは僕の思いつくまま書いていくべきなんだと思ったのが刑事モノに至った経緯です。正直好みも分かれる作風で不謹慎な内容もあります。ですが、これが僕の今まで観劇したり経験したものから生まれたエンタメの形です。バンタムクラスステージとゆう劇団から始まった僕の演劇人生の始まりの形。人が死んだり殺めたり、現実ではあってはならないことは板の上では表現として成立させることが出来ます。演劇だけじゃなくて、映画でも絵画でも音学でも、芸術って色んなジャンルがあって然るべきだと思ってます。因みに僕自身は人を殴ったり、ましてや刺したり撃ったりとか人を傷つけるってのは現実では全く出来ないビビりですw
この作品を通して、人間とはどうゆうものか。幸せって何なんだろうか。生きていくってどうゆうことなんだろうかとか。色々感じて考えてもらえたら嬉しいです。ご覧になった皆様の感情に訴えかける何かがあればいいなぁと思います。



では作品の事とか、少しだけ書いていきましょうか。(少しとか言ってめちゃ長くなりそう)


この物語の主人公『天沼充』警部。


※ビジュアルは本編と関係なく撮りました。

ビジュアル撮影の時のスーツ姿があまりにも格好良くて、スーツ着させて銃持たせたい!とゆう安易な考えから刑事モノに傾倒し始めました。やっぱスーツは良き。
長谷川輝くん演じる『天沼充』は一番人間臭さを表した人かなぁ。身近な幸せもちゃんとあって、仕事にやりがいを持って取り組んで、ふざけてる一面も真面目な一面も持ってる。人望も厚い。責任感が強いが故に闇堕ちしてしまう。当てはまる人、結構いるんじゃないでしょうか。
芝居以外でもお世話になりっぱなしでした。輝くんの器量に頭があがりません。色々とありがとうございます。

とりあえず天沼VS平岡やりたい!って頭の中にはありましたので、その観せたい所の為に色々肉付けしていくような書き方をしました。序盤はそれぞれの登場人物の『人となり』を沢山書き、後半から物語の本筋に向かっていくような流れです。あとはダンス観せたい!歌とかラップとか歌ってほしい!やっぱり殺陣できる人いるんだからワンチャンぶち込んでいきたい!と好き勝手差し込んでいきました。結果的にそれが重過ぎる作品全体の空気を緩和してくれて、僕の作品ならではの個性として良い作用になったと思います。

刑事達は割とクリーンに描きました。リアル警察ってめちゃ怖くてヤーさんばりにいかつい人達も多いんですけど、情報量過多にならないように分かりやすさ重視。
リーとワンは明らかに裏の世界にいる一般人と違う人達だけど「あれ?もしかしてこうゆう人達、いてそう…」て思わせてみたかった。リアリティをどこまで出せるかが鍵でした。ファンタジーにならないように慎重に考えました。どんな人なのかを2人に伝えて、きょん(冨田恭子)とナオちゃん(吉田奈央)は見事に表現してくれました。




2人は幼少期に親や家族の愛情を知らず、人の命の価値が分からない人。同時に自分の命の価値も分からないから冷酷に仕事に徹することが出来る強さを描くことにしました。我々一般人からすれば2人の行動にゾッとしますが、彼女達からすればそれはあくまでも仕事。飲食店の店員が料理を提供する事と同義なんです。彼女達が生きる為の手段。そのリアリティが舞台上から感じれました。
ワンさんは二階堂(御厨文香)と霧島(吉田菜都実)に触れさせることで普通の世界でも生きてみたいとゆう希望も見え隠れするようになります。


因みに、ホステスのお二人の名前は焼酎の銘柄から来てますw(赤霧島と二階堂)
ホステス役の2人は声がもんのすごく良いので、なんとしても歌ってもらおうと思いました。そしてダンスもアイドル振りが似合うとの判断でアンセムをぶっ込みました。逆バージョンのみんなが真似するぐらい流行ったなぁw

稲葉彩こと、ウォン・リーは現役バリバリの始末屋。一般人が一線を超えないように2人には触れさせませんでした。自分でやらせててなんですが、この役、めっちゃムズイと思う。リアルに落とし込むまでには精神的に病む可能性大。背筋の凍るような空気を纏ったナオちゃんは圧巻でしたね。仕事のやり方も見事でした。


そして平岡武幹と平岡日向。


『平岡武幹』は三島由紀夫好きな鶴ちゃん(鶴見直斗)に合わせて三島由紀夫の本名、平岡公威(ひらおかきみたけ)から転じてこの役の名前を付けました。詩音ちゃん(小山内詩音)演じる妹の『平岡日向』は明るくて天真爛漫なイメージを持たせたかったので日向にしましたが、ここでミラクル。これ、HHじゃね?ってなりまして、現場にカードを置いていくってゆう発想に至りました。偶然の産物です。

平岡兄妹。経済的には恵まれた環境にいますが、わりと悲惨な人生を辿っています。彼らも両親の都合に振り回され家族の愛情はほとんど受けておらず、唯一の心の拠り所としたのが兄妹の時間でした。2人は兄妹間の家族愛を超えて恋愛関係にまで発展しますが、妹に理不尽な死が訪れます。
ここから世の中の物事全てに憎悪した、平岡武幹の復讐の始まりです。権力と金と情報。これらを手にした平岡は自分が憎んだ者達に手をかけていくのです。恐ろしいことですが、これだけの条件が揃っていれば誰しもがそうなる可能性は孕んでると思います。
平岡日向は純粋・潔白の象徴として描きました。
武幹からすれば生きていく上で唯一の救い。女神のような存在。とても美しかったです。


今回、初の芝居に挑戦した『時見薫』こと
前垣馨。


彼は僕が大阪の中百舌鳥駅でダンスしてた頃に出会った友人です。15年ぐらいの付き合いになるんかな?こうして自分が創る世界に、昔からの友達を呼べたのはとても意味のあることだと思います。馨は普段ダンサーとして活動してて、インストラクターもしてます。他にもグラフィティ書いたり、モデル、けん玉、ラップ等多才な才能、ルックスも抜群と色々スペック高い。そして初芝居とは思えないくらい上手い。稽古場でも進んで恥かいて、提案して、疑問を投げてくれて、僕もこうあるべきだなと気持ちを改めさせてくれました。初心、忘れるべからず。公演もスタートからめっちゃ盛り上げてくれた。最高。



天沼充の奥さん、『天沼さつき』役、鶴田葵。


天沼の奥さんはごく普通の幸せを描きたかったので、等身大のおつるでいて欲しいとお願いしました。ゲームはプライベートでも僕とチーム組んでやったりしてたので迷いなくPU○Gをチョイス。場面転換の時のBGMは、分かる人には分かるw
家での振る舞いは僕の可愛いと思う奥さん像を書きました。脳内見られてるようで恥ずかしぃ…
おつるの可愛さを思いっきり出したつもりです。そしてラストシーンの充に声をかけるところは、めちゃくちゃ繊細に演出しました。儚く、包み込むように、優しく、美しく。



刑事チーム、いきますか。
巡査『牧健介』役の政野屋遊太。



稽古期間入る前に色々ありまして、早い段階で死ぬことになってしまったノヤくん…ホンマはもっと描きたかったなぁw
だがしかし、とてもとても良い芝居してくれました。殺陣のスペシャリストなだけあって見応え十分なアクションも披露してくれた。ノヤくんの実直なイメージは刑事にピッタリなんですよね。逆に怖い役とかやらせたらどうなるんだろうか…とか考えてしまいました。闇堕ちした牧も見てみたいなぁw



『佐々木和人』警部補役、かわもとゆうき。


みんな大好きかわちゃん。今作に大きく貢献してくれた人です。ラストの裏切り案は、実は彼の一言から創りました。最後は頭の中で色んなパターンがあってすんごぃ悩んでたところ、「裏切り者がいたらおもろくない?」ってなって、「かわちゃん、悪いけどクズになってもらってい?」って言ったら「オッケー!いいよ!」と快諾してもらいましたw
丁寧な人物像の考察、芝居のプラン、熱量。マジで尊敬できる人です。最後らへん佐々木の台詞で「刑事やめて役者になろっかなー」て台詞は、僕の好きなメタ台詞です。役者にこうゆうの、言わせたかったんですw



『鷹藤美沙』巡査役、光峰ゆりえ。



ゆりえちゃんのようにめちゃくちゃ動ける女優さんは貴重。彼女がカッコよく動けるシーンを作りたくて冒頭のジムのシーンを描きました。キレッキレでしょ!w
ゆりえちゃんの良いところはアクションだけじゃない、芝居も一級品。最後の葛藤の末に撃たれるところまでの表現、素晴らしかった。なかなかできる事じゃない。若いけど真摯に芝居に向き合って、今までも凄く努力してきた人なんだって分かる。これからも更に、もっともっと女優として凄くなる予感がします。


ってやばい。やっぱり長くなった。
とにかくこの作品は、みんなでいっぱい考えて創った、僕1人の作品ではないってことです!
この座組じゃなかったら成し遂げれなかった。ギリギリまで頑張ってくれた皆さん、本当にありがとう。音響・照明の丸さん、谷さん。素敵な作品にしてくれてありがとうごさいます。裏で色々と動いてくれた舞台監督のバズくん、ありがとう。僕が未だに全く出来なかった事を全部助けてくれた制作の皆さん、ありがとう。公演を観に来てくれた皆様ありがとうございます。そして、この機会を与えてくれた山下哲平、ありがとう。

関わった全ての皆様に感謝を込めて。