明日4月4日から9日まで、毎年恒例のグループ展「It`s展」が銀座の枝香庵で開かれます。今回で第24回ですが、実はその前にほとんど同じメンバーで「圧展」が行われており、その始まりは何と40年前です。元々はNHKカルチャーセンターの銅版画教室の生徒が集まって作られたグループで、それまで何の関係もなかった人達が集まって形成されたグループが、これだけ長く続くのは珍しいと思います。さすがに亡くなる方、さまざまな事情で参加しなくなった方もいますが、新しいメンバーも加わり、来年は25周年を賑やかに祝いたいと考えています。僕は銅版画というものをちょっと体験してみたいと考えて教室に参加したので、まさか自分の作品を皆さまにお見せする事になるとは、まったく考えていませんでした。銅版画をこの歳まで続けることができたのは、ひとえにこのグループの存在によるのです。

さてグループ展の搬入・展示は大変ながらも楽しい作業です。まずは集まった作品の梱包を解いて壁際に並べます。そしてどの作品をどの部分に配置するのかを決めなければなりません。作品の大きさ、色彩、技法などさまざまですから、配置の良し悪しでグループ展の印象は大きく変わってしまいます。これまで何度も個展をやって慣れている人を中心に配置を決めますが、皆さん自由に意見を出して何となく決まってゆきます。他のグループだと、自分の作品はこの壁面に展示したい、と強硬に主張する人が登場して、険悪な雰囲気になることも多いそうですが、このグループ展ではそうした事は一度もなく、画廊の方も感心されています。もちろん自己主張はあるのですが、誰もが他のメンバーを尊重し敬意を払っているので、自然に収まるところに収まるという感じです。場所が決まると壁に展示しなければなりませんが、作品の大きさ、重さがさまざまです。重い作品はワイヤーで、軽い作品は釘で、さらに軽い作品はピンで固定しますが、作品の床面からの高さを統一しなければなりませんので、メジャーや凧糸が大活躍します。

こうして壁面への配置が決まると、題名と作者のプロフィール紹介のパネルを用意します。これらはあらかじめ印刷したものを切り取って、貼りパネに貼り付けます。小さな題名パネルは何の問題もないのですが、プロフィールの大きさになると、貼り付けにも気を使います。僕はさらに大きなA3サイズのグループ紹介のパネルを担当したのですが、ここで大失敗をしてしまいました。いつものように貼りパネのコーナーの台紙を剥がし、印刷したグループ紹介の紙のコーナーを合わせて、貼り付けを開始したのですが、うっかりして紙の他の部分が貼りパネの粘着面に張り付いてしまったのです。こうなるともう剥がして貼り直すことは不可能です。ガックリとしていると、こういう操作に慣れているTさんが、隅から貼るのではなく、貼りパネの真ん中の台紙を1cm幅で切り取っておき、その部分に紙を置いて密着させ、そこから左右に広げてゆくと良いと教えてくれました。グループ紹介を再印刷して、もう一度挑戦です。教えられた通りに慎重にやって見事に成功しましたが、周りのメンバーが、ものすごく緊張しているように見えたと言っていました。自分でも外科医として初めての手術を行うときくらいに集中していました。こんな気持ちは久しぶりです。歳をとっても、新しいことを一つでも身につけるのは楽しいものです。これもこのグループ展があるからこそと言えるでしょう。最後に照明を調整して、約5時間で搬入・展示が終了しました。

ご苦労さん会ということで、画廊のすぐ近くのサイゼリヤで食事をすることになりました。相変わらずのびっくり値段のワインを飲みながら、皆さんの制作への想い、グループへの感謝をたっぷりと聞くことができました。さあ来年の25周年を目指して、作品の構想を練るぞと気持ちを新たにしました。