リーダーシップのスタイルが怪我の原因? | Life is challenge

リーダーシップのスタイルが怪我の原因?

2017-18シーズンが始まって2ヶ月半ほど経ちました。今シーズンは去年までの主力選手が移籍し、スタッフも含めてメンバーが大きく変わりました。

リーグ戦はかなり苦戦していますが、まだシーズン前半ですので、残留に向けて全力で挑んで行こうと思います。

 

さて、スパルタロッテルダムというチームにはトップとサテライトを合わせて選手47人に対し、フィジオセラピストが2人です。

 

オランダ人からも日本人からも、仕事の内容を聞かれることが時々あって、メディカルスタッフだから「マッサージとか?」と質問されるのですが、基本的に選手にマッサージをすることはほとんどありません。

 

チームによってスタイルに多少の違いはあると思いますが、基本的に僕らの仕事の8割は、「怪我の予防」になります。メディカルスタッフの少ない体制で怪我人が多く出るとかなり苦しくなるので、うちのチームは尚更です。

 

ただ、実際はしっかりとマネージメントできれば、「怪我人続出」ということは起こりません。

 

現在は47人中怪我で練習ができない選手は1名なので、比較的余裕を持って仕事ができます。

 

これが、例えば5人も6人も怪我人が出てしまうと、リハビリに時間をかなり取られてしまい、「怪我の予防」に当てる時間がなくなり、また怪我人が出てしまうという悪循環が起こります。

 

その「怪我の予防」ですが、その方法は様々です。一般的にいうウォーミングアップや、障害予防のためのトレーニング、筋力トレーニング、ピリオダイゼーション、リカバリー、食事、睡眠etc...

 

色々あると思いますし、全部大事でいろんな知識が必要なのはもちろんなんですが、結局一番大切なのは、マネージメントの仕方です。

 

「サッカー選手の障害予防は、選手一人一人に対して、自分が、あるいはメディカルスタッフが行うのではなく、監督、テクニカル、フィジカル、メディカルスタッフと選手全員で行うもので、チームワークが非常に重要です。」

 

と、説明することが多いのですが、それについてとても興味深い文献を読みました。

 

この研究グループのリーダーであるJan Ekstrandさんのプレゼンを聞きに行ったり、この方の他の論文もとても参考にさせてもらっているのですが、今回のはまた違った切り口でとても面白かったです。

 

Is there a correlation between coaches’ leadership styles and injuries in elite football teams? A study of 36 elite teams in 17 countries 

http://bjsm.bmj.com/content/early/2017/10/22/bjsports-2017-098001

 

ツイッター上でも非常に話題になっていて、とても面白いのでサッカー関係の方にはぜひ読んでみてほしいです。

 

「コーチのリーダーシップのスタイルと怪我の関係」です。

 UEFAに登録される36のトップクラブで、指導者のリーダーシップの取り方が選手の怪我に影響を及ぼすのではないかという研究を行なったということです。

 

UEFA Elite Club Injury Studyでヨーロッパのトップクラブのメディカルスタッフが答えた、選手の怪我の4つの重要なリスクファクターは以下になります。

 

1.選手にかけられるトレーニング、試合の負荷

2.選手のコンディション

3.チーム内コミュニケーション

4.監督のリーダーシップスタイル

 

以前は障害予防に関して「2」の、選手のコンディション、つまり「身体」について掘り下げて考えていたと思うのですが、今はそうではなく、どちらかというとチームの「組織」から考えるという傾向になっていると思います。

 

この論文の中では、ポジティブで明確なビジョンをもち、選手たちが目的を達成できるようにインスパイアする「トランスフォーメーショナル(変革型)リーダーシップ」がパフォーマンスをあげるだけでなく、怪我の予防にも影響するだろう紹介しています。

 

また、「心理的ストレスが怪我に影響を及ぼす」ということにも言及されていたり、オーバーユースの原因が、負荷の大きさそのものというより、身体に休息が必要なタイミングで負荷がかけられていることの方が問題であることなど、メディカルに関わる方だけでなく、指導者の方にもぜひ一度読んで見てほしいと思います。

 

 

ということで、次節は堂安選手の活躍するフローニンゲン戦ですが、勝ち点取れるように頑張ります。