リハビリの目的 | Life is challenge

リハビリの目的

『どれだけ早く治すかに俺は重点を置いていたんだよ。全治3週間と言われたら、2週間で治そうとしていたもん。』http://number.bunshun.jp/articles/-/347827
これが日本トップクラスの選手の考だったのが衝撃的です。


肉離れに限らず、リハビリの目的は「いかに早く復帰するか」がファーストプライオリティではなく、「復帰後、選手のもつ最高のパフォーマンスを残りのシーズン、あるいは残りの選手生活の中でできるだけ多くの試合で発揮出来る事」がファーストプライオリティであるべきで、「早く復帰する」というのはその次の目的であるはずです。


内田選手がこういった意識であったのは、もちろんプロとして出来るだけはやく復帰して試合に出たいという、選手として当然の思いがあったのだと思いますが、記事に出ているようにこれまでの指導者の影響が少なからずあったはずだと思います。


痛みを押して復帰してくることで監督からの評価があがったり、怪我を怪我として扱われないような環境にいたことが、現在日本最高クラスのサイドバックの選手が今シーズンの3度の同じ箇所の肉離れを負うことにつながっただろう事は記事からも読み取れるように思います。


当然監督はいい選手はできるだけ早く復帰してほしくて、それを望むのは理解できることですが、こういったことはもう何十年も昔から繰り返されていて、例えばシーズン中に3度怪我をしたことで、ポジションが奪われ、試合にでられなくなり、パフォーマンスを維持することができず、選手としてのキャリアを奪われて行く、ということになるのはよく聞く話です。


僕が衝撃的だと思った事は、もちろん内田選手のこういった意識自体ではなく、このレベルの選手が今でもそういう指導を受けて来ている、ということです。


いいリハビリというのは、復帰までのスピードでだけではなく、復帰後のパフォーマンスとそのパフォーマンスを維持できるかどうかという部分で評価されるべきです。


復帰直後のパフォーマンスは、そのときの『リハビリやトレーニング』の効果としてすぐに評価出来る物だと思いますが、その後それを選手キャリアの中で維持できるかどうかは、リハビリ中のトレーニングとは別の『指導力』にあり、選手生命を左右する物だという事を、監督、トレーナーは意識すべきです。


たまたま先週、あるクラブの選手が、肉離れ後、開幕戦に間に合うように、テーピングを多めに巻いて『予定』よりもはやく練習に復帰したという記事がありました。


選手自信の早期復帰に向けた意欲が強く、それに応えてトレーナーが練習に参加出来るようにテープを巻き、監督がトレーニングに参加させたというような形だったように思えました。


誰のために、何のためにたてた『予定』だったんでしょうか?


もしも選手の「意志、意欲」のみによりトレーニングに早く復帰したのであれば、僕は『指導力』の欠如だと思います。


結局今でも、「選手の意志」や「選手の痛みの感覚」が復帰の時期にものすごく大きく関与していて、なぜ選手の意志よりも復帰の時期が後なのか、ということについて説得できるだけの力がないということが多く起こっているように思います。


中には、内田選手が『そういった環境で育ったからこそ』ここまでの選手になれたのでは、という意見もあるのかもしれないですが、『そういった環境で育ったにもかかわらず』ここまでの選手になれたというのが本当のところではないかと思います。


今回の記事は、内田選手自身が「早く復帰すればするほどいい」という、今でも残っている指導概念に、一石投じてくれたような内容だと、勝手に解釈して読みました。


とにかく、内田選手がまたピッチで最高のパフォーマンスを発揮し、これからも日本代表で活躍し続けてくれる事を願います。