しかし私には現在、新卒入社した会社で先輩と呼べる存在は殆どいない。
なぜなら殆どの人が厳しい労働により会社を辞め音信不通になっているからだ。
SNSなどにも現れず完全に表からは消えている方が多い。
中には自己破産して亡くなった方もいるという。
その中で唯一、私が営業として全く何もできないところから、めちゃくちゃシゴかれ、めちゃくちゃ怒られ、時に温かくしてくれた、そんな尊敬できる先輩がいた。
正直その方がいたからこそ、社会人としての基盤が最低限できた気がする。
その方は凄まじい営業マンだった。
私の横でガンガン出世していた。
時に私がテレアポでアポった時には同行して俺が決めてやると、100発100中で私の横で受注していた。
また、13年前の新卒一年目のある日、その方は、私にカバンをくれた。
OA機器を販売している中、大量のパンフレットを持ち歩く営業だったので、普段からカバンはパンパンだった。
それもあってとても嬉しかった。
今からじゃ考えられないが、当時の営業マンはデカイカバンを持ってる人が多かった気がする。
デカイからなんでも入る。営業マンはデカイカバンを持った方が何かといい。そう言われて貰った。
私はそのカバンを次の会社に行っても使っていたし、今でも宝物として取ってある。
その方からは営業マンは勝負時は必ず赤のネクタイをしろ、ペンは胸ポケットじゃなく裏ポケットにしまえ、など基礎的な事を多く教えてもらった。
まーとにかくめちゃくちゃ怒られたな、と。
そして、どこかで恩返しがしたいと今に至るまでずっと思っていた。
時は過ぎ、それから13年後の今の私は人材事業を行なっている。
特に今は企業と人をマッチングする人材紹介事業をメインに事業を行なっている。
先週、私の携帯に電話がかかってきた。
なんとその先輩からだった。
会社を辞めるから転職先を斡旋してほしい、と。
実にその先輩は15年間その会社に在籍したが、今回とある事情から辞めるらしい。
他にもエージェントはいくらでもいるのになんで私なのか?
正直私がやっていいものなのか複雑な想いがあったが、運命めいたものを感じた。
ようやく恩返しができる、そう思った。
13年越しの感謝のお返しがようやくできる。
2人で話した。
昔話から始まり、どういうところへ行きたいか、条件、将来のキャリア、まーとにかく議論した。
昔のことが色々思い出されて楽しかった。
そして今、仕事の次元を越えた何か熱いものが込み上げている。
必ずその方のキャリアを成功へと導きたい。
新卒の頃の先輩と呼べる貴重な存在。
ようやく恩返しができる。
あの頃より少しでも成長した状態でその方の人生に恩返しができる。
こんな幸せなことはないな、と。
成功した暁には一緒に勝利の美酒を味わおうと思う。
そして聞こうと思う。
なぜ私を担当に選んだのでしょうか?と。