開運庭師のKoheiです。


 

みなさんは、神社やお寺の石積みがどうして崩れないのか

不思議に思ったことはありませんか?

 

 

伝統的な工法で作られた石積みは、

たとえ数百年前に造られたものであっても、

大雨や地震を経験しながら今なお残っているものがあります。

 

 

ただ、崩れることを防ぎようのない場合もあります。

今年7月の熊本地震では、熊本城の石垣が崩れてしまいました。

地震の被害に遭われた方々に心よりお見舞い申し上げます。

 

 

近年、地震や集中豪雨などの影響で、各地で土砂災害が激しさを増しています。

土地そのものの安全をどのように考えるかが改めて問われていると思います。

 

 

そんな中、8月上旬に山梨県大月市にある 「小さな防災の家」で開催された

石積みワークショップに参加してきました。

 

 

このワークショップは、僕が昨年より環境整備の方法を学びに通わせて

いただいている「大地の再生」の関東甲信越支部が主催したものです。

 

(大地の再生関東甲信越支部のホームページはこちら

 

 

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ワークショップの会場となった「小さな防災の家」は、

環境再生医の矢野智徳さんの唱える「大地の再生」の手法を取り入れて、

名前のとおり災害にも強い住環境を目指して

多くの方々の手によって整備されてきた場所です。

 

 

今回は、その防災の家の建物の裏手にある傾斜地に

石積みを造って土砂の流出を防ごうという試みでした。

 

 

 
 

 

作業の大まかな手順です。

 

①まず、石を置く場所の斜面をスコップで削ります。

②石を積む場所に30cm間隔くらいで金棒で縦に穴を掘ります。

③その穴に木の枝を差し込み、隙間に炭を詰めます。

④そのあと、下地として藁や落ち葉を敷き詰めて炭をまきます。

⑤その上に石を置いて、隙間に小石などを挟んで動かないように叩いて固定します。 

⑥石の裏側(斜面側)に藁を敷き、隙間に小石や瓦チップを敷き詰めていきます。

⑦石を上に積み重ねて置いて、一段目と同様に固定します。

以降④~⑦の繰り返し。

 

 

こうすることで、石の隙間の有機物に菌糸が入り込んで、

やがて植物が根を張るようになります。

 

 

石積みは積み上がった瞬間が完成ではありません。

そこから植物や微生物が関わり始め、

時間をかけて土地と一体になっていきます。

 

 

つまり石積みは、石だけで土地を支える技術ではありません。

石の隙間に水と空気が通り、そこに菌糸や植物の根が入り、

時間とともに生き物の力によって土地そのものが変わっていく技法なんです。

 

 

ここが、コンクリートで土地を固める現代のやり方とは大きく違うところです。

 

 

昔の人は、菌糸や微生物の働きを化学的な知識として

理解していたわけではありません。それでも、自然を観察しながら、

生き物が働ける環境を作ることで土地を安定させる知恵を持っていました。

 

 

人の手による石積みは、一見すると重機がない時代の

原始的な方法だと思われがちです。

でも実は、コンクリートと鉄筋で固めた現代土木の手法よりも、

長期的に見ればより安全性が高く、理にかなった点があるのです。

 

 

■土砂崩れを防ぐ健全な土は「団粒構造」

 

 

日本の山には、長い時間をかけて人と自然が関わりながら

維持されてきた土中環境があります。

 

 

健全な土は、「団粒構造」と呼ばれる状態になっています。

団粒構造とは、土を構成する細かな砂や粘土などの粒子が、

菌糸や有機物などの働きによって小さな塊を作っている状態をいいます。

 

 

 

団粒と団粒の間には大きな隙間があり、団粒の内部には小さな隙間があります。

大きな隙間には水や空気が通り、小さな隙間には水が保持されます。

 

 

そのため、団粒構造が発達した土は

 

「水を通し、かつ、水を保持する」

「空気を通し、かつ、乾きすぎない」

 

という、一見すると相反する性質を持つことができます。

 

 

土が団粒化すると、大雨が降っても土が水と一緒に

流れていきにくくなるので、土地が安定するのです。

 

 

■団粒構造をつくる菌糸

 

 

では、この団粒構造はどうやって作られるのでしょうか。

その一つの重要な役割を担っているのが、菌糸です。

 

 

 

菌糸は土の中に伸びながら土の粒子をつなぎ、

微生物が作る粘着性のある物質や有機物なども加わって、

土の中に小さな団粒が形成されていきます。

 

 

つまり、健康な土は単に「土の粒が集まっている」のではありません。

水と空気が通り、生き物が活動できる環境があるからこそ、

その形を保っているのです。

 

 

昔の人は、菌糸の働きを肌感覚で理解していました。

石垣を作るときにも、石のあいだに藁や落ち葉などの有機物を入れることで

水と空気の通る隙間を作り、植物の根が入っていける環境を作っていました。

 

 

そこでは、人間がすべてを作り上げるのではなく、

その後の仕事を菌糸や植物、微生物に委ねていたのです。

 

 

近年の土壌科学などの研究によって、

こうした生き物が土の構造を作り、

土地の安定にも関わっていることが少しずつ分かってきています。

 

 

■水が止まると、土が壊れる

 

 

団粒構造を支えているのが、菌糸や植物の根、微生物などの働きです。

そして、菌糸が働くには、酸素が豊富に含まれる水と空気の流れが必要です。

 

 

 

水が停滞すると、そこにある酸素は微生物の活動によって消費され、

酸素の少ない環境になっていきます。土が酸欠状態になると、

菌糸は消えて、有機物は分解せずに腐敗していきます。

そして、腐敗した土はヘドロになっていきます。

 

 

地中の水の流れを止めてしまうことは、

災害の危険を膨らませることにつながります。

団粒化していない土は水の逃げ場がないので、

それが液状化や土砂の流出の原因になってしまう場合があるのです。

 

 

土が団粒化していればその危険は少なくなるので、

団粒構造を保ち土地を安定させることが何より重要です。

 

 

■大地の皮膚である「腐植」

 

 

菌糸のほかにも、土の団粒構造や土中環境を支えている重要なものがあります。

 

 

それが腐植です。

 

 

 

地面を覆う落ち葉をめくると現れる弾力性のある黒い層、あれが腐植です。

腐植は、落ち葉や枯れ枝などが土の表面で分解してできる有機物の集合体です。

 

 

腐植は土壌中で水分や養分を保持したり、土の団粒化に関わったり、

さまざまな物質を吸着したりするなど、土中環境の重要な一部になっています。

 

 

腐植は、石と石の隙間にも生まれます。

苔や菌糸、藻類などが石の表面に生物の皮膜を作り、

そこに有機物が蓄積して、やがて腐植が形成されていきます。

 

 

 

こうした生き物の働きによって、

石の表面には水分が保たれ、温度変化も緩和されます。

そして雨水は、こうした生物の層を通りながら土の中へ浸透していきます。

 

 

落ち葉や藁を重ねる石積みは、菌糸を呼び込み、

腐植が覆うようにして土中の透水性を良くしていきます。

その結果、木の根が土中深く入っていけるようになり、

根がしっかりと張れば斜面も崩れにくくなります。

 

 

昔の人は、自然の中で節度を持って生きる知恵を持っていました。

腐植を増やし、生き物の暮らしやすい環境を作ることが

大きな災害を防ぐことにつながることを無意識に知っていたのです。

 

 

■石積みは未来へつなぐテクノロジー

 

 

 

石積みには、石の形や置き方、重ね合わせ方など

いくつも留意すべきポイントがあり、想像するよりもずっと難しかったです。

ただ、やってみると非常に面白いものです。

 

 

人間の手で積み上げる石積みには、これからの時代に求められる

大切な要素が詰まっていると感じました。

 

 

石積みには、多くの人の手が必要です。

人との共同作業(結いの作業)が地域のつながりを育みます。

 

 

そして何より、石積み作業をすることで

自分たちが依って立つ環境を自分たちの手で作り上げているという

確かな手ごたえを感じることができます。

 

 

このことは、ほとんどすべての労働がAIとロボットに代替されるようになる

これからの時代によりいっそう大事なことになると思います。

 

 

石積みは、自然を押さえつけて完成させる技術ではありません。

人間ができるのは、石を置き、水と空気の通り道を作り、

生き物が呼吸できる環境を整えるところまでです。

 

 

その先は、菌糸が働き、植物が根を張り、

微生物が有機物を分解し、腐植が生まれ、

時間をかけて土地そのものが育っていきます。

 

 

人間がすべてをコントロールするのではなく、大地の呼吸と循環を促し、

自然が持っている力を引き出せる場を作っていくということが、

人間の真の幸福につながっていくのだと思います。

 

 

生きている土台となる環境を自然と調和したものにする石積みは、

古くて新しい「未来のテクノロジー」なのかもしれません。

 

 

ワークショップを主催された大地の再生関東甲信越支部のみなさん、

結いの作業を共にしたみなさん、ありがとうございました!

 

 

※この記事は、地球守・有機土木協会の代表理事・高田宏臣さんの著書

未来が変わる!土中環境と有機土木』を参考にしています。

 

 


 

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