⑦
男は、
眠ってしまった女を起こした。
ゆっくり、ゆっくり、揺らしながら。
その慎重でぎこちない動作からは、
いつもは見せない、この男の優しさを感じた。
女は、
身体を起こし、
眠い目をこするように、
涙の跡をごまかすように、
ぎこちなく手を動かしながら、
「ごめんね。」
と言った。
「何が?」
男が尋ねると、
「眠っちゃったし、ワインも無くなっちゃった。。。」
と、女が悲しそうに答えた。
男は、
その悲しそうな女の顔に、
少しだけ困った顔を見せたが、
それでも優しく微笑んでから、
ゆっくり立ち上がり、
隣の部屋のドアを開けた。
その部屋を見て、
女は、
驚いた。
なぜならその部屋には、
山のように積まれた「プレゼント」があって、
その中には何十本ものワインも、
様々な種類のワイングラスも、
何色ものテーブルクロスも、あのゾービーズも何枚も、
大きなテレビも、ホームコメディ以外のDVDも・・・。
とにかく思いつく限りの、
男からの「プレゼント」があった。
「・・・ワイン、まだあったんだ。」
女は、
無意識につぶやいたんだろう。
・・・しかし、
女は、
すぐさまこうも思った。
「私が欲しいものはここにはない。」
女は、
悲しくなり、現実に戻った。
さっき見ていた夢の世界から、
現実に戻ってきた時のように、
何かをごまかすように、
ぎこちなく手を動かしながら、
もう決めたんだと、
強く、
強く振り向こうと思ったその瞬間、
男は、
「HAPPY ANNIVERSARY・・・愛してるよ。」
小さくも確かに、
そう言ったんだ。
恥ずかしさからなのか、
ワインのせいなのか、
ぎこちなく笑うその顔は、
赤く染まっていた。
女は、
本当に欲しかったものを、
見つけた。気がした。
女は、
溢れ出る涙を、
ごまかすのをやめた。
そして、
男は、
女にワイングラスを手渡し、
いつの間にか手にしていたワインボトルから、
ワインを、
優しく、
注いだ。
きっとワイン以外のものも、
優しく、
注いだ。
女の頬からは、
ポタポタと、
涙がこぼれ落ちていた。
ワイングラスからは、
ポタポタと、
ワインが、
こぼれ落ちていた。
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あなたの想像は、俺の創造を超えて行く。