3人はグランティーノさんに紅茶をごちそうになっていた。
「よく来たねぇ。最近はお客がめっきり、来なくなったんだよ。」
グランティーノがため息をつきながら言った。
「どうしてですか?こんなに美味しい紅茶が飲めるのに。
それに、この付近は人も少ないし。さっきはあんなに賑やかだったのに。」
由紀がそう言いながら波美の方を向くと、「おばちゃん、おかわり!」と言っている所だった。
由紀はやれやれと思いながらも、自分もおかわりを貰った。
「はいはい。ちょっと待ってね。そこの、えーっとー「カリウドです。」
「そうだ。カリードもおかわりどうかねぇ。」
「ありがとうございます。」
グランティーノは紅茶をつぎながら話しの続きを始めた。
「そういえば、お嬢さん達はこっちの住人じゃないねぇ。「ブレイブ」…といった所かな?」
「あの…。その「ブレイブ」って一体なんなんですか?」
由紀がそう訪ねると、波美も飲んでいたカップをテーブルに置いて真剣に話しを聞き始めた。
「お嬢さん達、ここにくる前に何も書かれていない青い表紙の本を見なかったかい?」
「見たよ!私がその本を開いたら急に眩しくなって…。気づいたら、丘の上に座ってたの!」
「そうかい…。その本はねぇ。Weaving storyと呼ばれている幻の本なの。
ここは、昔から紡がれてきた物語の世界。簡単に言うと…。本の中ねぇ。」
「Weaving story!?本当にそんな本が存在するんですか?都市伝説か何かだと思ってた…。」
「存在するわ。現にあなた達はここにいるでしょう?それに、ここに来るまでに不思議なものも
たくさん目にしたんじゃないかい?この世界にはお嬢さん達の世界からしたら信じられないもの
だらけでしょう。なんたって、本の世界だからね。」
「ねぇ、おばちゃん!もしかして魔法とかもあるの?」
「ええ。もちろんですよ。そしてあなた達は本に選ばれし者。その者達のことをブレイブと
言うのよ。」
「どうしたら現実に戻れるんですか!?」
「ごめんねぇ。それは私にも分からないのよ。ただ、ブレイブがこの世界に呼ばれる理由は
ただひとつ。この世界の最悪の物語を変えるためよ。」
「おばぁーちゃん、どうやって変えるの?しかも、最悪の物語って何?」
今まで黙っていたカリウドが突然「それなら、僕も知ってます!」と声を出した。
「最悪の物語はこの世界を滅ばせる物語の事です。現に、この付近には人が寄り付かなくなった
原因の恐ろしい噂が、最近流れているんです。」
「え?どんな噂?聞きたぁい!」
「…うちは聞きたくない。あぁ…。」
「まぁ、由紀さん聞いて下さい。あなた方がブレイブである以上、魔物を倒して頂かなければ
いけないのですから。それは、一ヶ月ほど前でした…」
カリウドの話しによると、一ヶ月ほど前に、王様が「光の泉」という泉のことで民を集めて
ある話しをしたという。
「光の泉には、ある宝物がある。しかし最近、泉には魔物が住み着いておる。
その魔物に、私の大事な姫、リーアンが攫われてしまったのじゃ。
魔物を倒し、リーアンを助けた者には、泉にある宝を全てくれてやる。
そして!リーアンの夫となり、この王国の王となる権利を与えよう!」
しばらくして「2人の若者がリーアンという姫を助けに行った若者が魔物に食べられてしまった。」
という恐ろしい噂がながれ始めたらしい。
「…それがねぇ。もっとも悪い事に、この商店街を少し行った所に泉があるもんだから。
困っちゃうわよねぇ。私はそんな噂は信じてないんだけどねぇ…。」
目を爛々と輝かせた波美が勢い良く立ち上がった。
「そうと決まったら行こう!いざ、光の泉へ!」
「行かないといけないのは、嫌でも理解したけど、武器も何も持ってないし…。
(持ってても使える自信ないけど。)」
「あら。そうだったねぇ!じゃあ、ちょっと待てておくれ。」
グランティーノは早足で店の奥まで行くと、何やら袋を持って戻って来た。
「これを3人で使いなさい。」と持って来た袋をカリウドに手渡した。
「えっ!?僕もですか!?そ…それに、こんなに大金頂いちゃって大丈夫なんですか!?」
「いいのよぉ。その代わり、気をつけて行くんだよ?」
こうして3人はグランティーノにお別れを告げ、光の泉を目指し歩き始めた。