緑が恋しくて

絵に触れたくて






箱根の
ポーラ美術館へ




木漏れ日とは
陰なのか、光なのか




分かりきったことを
曖昧にして
心地よく揺れながら




光が降り注ぐ館内へ





空(くう)を泳ぐ魚を
こっち、こっちと呼んでみたり
待て待てー、と追ってみたり
しばし童心に還りつつ
……
はた、と
現代アートは
まだわたしには遠い存在だ、と
我に返って
その展示を後にする






お目当ては
間近で
急かされず
心ゆくまで鑑賞できる
印象派の画家の絵たち






こんな平面的な写真では
一滴も伝えられない
本物の絵と額縁の迫力に






目の前に立っただけで
肌上数ミリに
ジンジンと磁場が立ち
体が浮くような感覚に包まれ
気づくと涙が溢れそうになる





そして
やっと会えたゴッホは
その筆致の線たちが
目を逸らすな、と
訴えかけてきて
体ごと
がっしと掴まれた気がした






そんな余韻を携えて





野外展示のある
遊歩道へ




森の入口は
鳥の囀りと
風が葉を撫でる音で
すでに心地よく





ひっそりと在る展示は
外と内が曖昧な
其処此処で
見過ごしてしまいそうな程に
馴染んで居た






そして帰り道
いつもの野天風呂へ寄り
ほけっと
湯に浸かる






湯あがり
窓が開放された座敷は

轟々と鳴る川音で満ち

しばし読書のつもりが
昼寝時間となった





充電完了


さて
顔をあげて
先へ行きますか