勇者と段々崩壊していく世界
ずっとになるかもしれない。今はなんとも言えないけど、その可能性は低くない。
声こそ荒げていないが、乱暴な調子で僕は言う。
なんで?どうして?海の仕事なの?
…違うよ。
ここまできて彼女に、ニュースにもなったどころの騒ぎではない勇者部隊壊滅の可能性の報からフナムシの安否への連想が為されないのは、状況が状況とはいえありえないだろうと僕は思う。彼女とフナムシに面識は無いが、親友が勇者部隊に入ったことは少しだけ彼女に話したはずだ。フナムシの安否まで気が回れば、僕が実際に置かれた立場まで推測することは不可能だろうが、この時分に遠くへ行くと言い出した僕が何処に向かう予定であるかぐらいは察しのつくことだ、とイライラしながら思っていると、
トッツクポーリに行くの?
と彼女が言った。僕はようやく線が繋がり始めたことで、次の段階に進むことにした。
それは言えない。
僕はあからさまに話をはぐらかした。矛盾するようだが、このぐらいはっきりとはぐらかさないと、彼女は話に食いついてこないことをよく知っていた。
なんで?
いよいよ話の核心に迫ってくる彼女の、頭の悪さが滲み出るような一言に、話を次の段階に進ませよう とした僕だが、少し、嘘や事実の統合性などを考える時間が欲しくなった。具体的には、彼女をいま僕が陥っている状況の関係者にしてやるか否か、が大きな問題だ。当然僕の陥っている状況の関係者になれば、彼女に何らかの危険を背負わすことになる。それでも構わない、と考える僕と、さすがにそれはまずい、と論理的に思考する僕が僕の脳内で論争を繰り広げている。どちらに転ぶか転ばせるか、彼女の知らないところで僕は彼女の命運を握っている、そう思うと心に大きな遊びがうまれた。
そんなことより君の話だ。
僕はもはやそれほど興味のない話を唐突に彼女に振った。いや、もともとこっちの話が主題になるはずの状況だ。
なんにもしてない!、飲みで疲れたから休んだだけ!
彼女は鼻で笑うような笑顔を作って明るく言い放った。僕はその仕草をよく知っている。身に沁みてわかっている。彼女には言っていないが、それは彼女が嘘をつくときの癖だからだ。はっきりすぎるくらいわかりやすい癖だった。
へえ、なんにもしてない、ねえ。
そうだよ。ただ寝て…睡眠をとっただけだよ。
やってないと?
正直キスされたぐらいはあったけど、ごめん。
彼女のこの言葉も、彼女が嘘をつく時の癖だ。おそらく、一欠片の事実をおおっぴらにすることで話に真実味を帯させようとしているのだろう。が、彼女にそういったタイプの嘘をつくことはまるで向いていない。彼女はきっと、一欠片の事実を中心に論理を築こうとしているのだろうが、ろくに本を読まず、嘘でない話であっても話に一貫性を作れない彼女にはそのタイプの嘘は甚だ向いていない。ましてや僕は彼女が嘘をつく際の癖をあと一つ二つ知っているのだから、僕にとってもはや彼女は生ける嘘発見器だ。いや、生ける嘘発覚機、か。
やってないんだ。
その一方で僕は彼女の嘘を倫理的に破ることを諦めた。確かめる術があるし、面倒くさいからだ。そんな僕の考えていることを知ってか知らずか、おそらく何も考えていないだろうが、彼女は、
うん!信じて!
と言い放った。こうなれば僕が取るべき手段はひとつだ。
じゃあ服を脱げよ。
え?
脱げばわかるだろ。
彼女は僕とホテルに入るべきではなかった。入らざるを得ない事態だった、と言えなくもないが。
なんもしてないんだろ?、だったら君の股は汚いまんまだろ?、見ればわかるよ。きれいだったらアウトだよね。
…ごめん。お湯は浴びた。疲れてたからさっぱりしたくて。ひとりでだよ!
彼女のその言動から嘘と知りながら、つまり彼女は勝手に自らゲロしたわけだが、僕はさらに追求した。
君は知っているかわからないが、女は、まあ少なくとも君は、男とやると股にちょっとした痕が残るものなんだよ。もちろん俺とやった後、俺は何度もその痕をみた。そうだな、君の言うことを信じてやるよ。だから確かめてやるよ。
痕が残る云々の話は嘘半分事実半分のものだったが、見ればわかることは紛れもない事実だ。彼女のことをよく知る僕には容易なことだ。
当然彼女はあれやこれや言い拒否の態度をとった。ますます、語るにおちるとはこのことだ。僕には時間がないし、もはや、幸せな気持ちのままで三途の川を渡りたい、という一度持った気すら今は持っていない。今の気持ちを強いて言えば、どうせもう会えないのならはっきりさせたい、というものだ。少し悪い気もしないでもないが、僕は彼女の着ている服を脱がしにかかった。彼女はかなり抵抗したが、焼け石に水だ。武道家の僕にとって手脚を出さずに優しく彼女の体をコントロールすることなど朝飯前のことだった。武道をやっていてよかった。
あっという間に下半身を下着一枚にする。なんだか、げひひ、と下卑た笑い声をあげてみたい気になる状況だが、そんなことよりやることがある。さすがに下着を優しく脱がすことは難しい作業だったが、僕はやり遂げた。下着を両の足首あたりにまで下げることに成功した。
下着をずらした瞬間に匂いがしないので彼女が湯を浴びたことはわかった。皮肉なことにそのことは、彼女の言い訳が真実だった、ことではなく、彼女が嘘をついていることが僕の中で確定したことだった。
嫌がり抵抗する彼女を無視し、僕は彼女の股を観察する。そして少しおかしなことに気づく。湯を浴びたのだからきれいだ。きれいではあるのだが、きれいすぎるのだ。普段はしない石鹸の香りすらする。事後によく洗った証左だ。僕とした後は、僕が言いださなければ、家に帰ってから浴びるから、と事後に体を洗わないことも多々ある彼女だ。こんなことはなかなか起こらない。なぜだ?。僕の知らない彼女の一面だろうか。いやそれは考えにくい。男の趣味だろうか。事後にわざわざ洗いっこを?。今朝僕と遭遇することは想定していないのだから、そのことの対策ではない。午後会う為、も、家に帰ってから洗えばいい話で、考えられない。
そんなことをまじまじと股を見ながら思案していると、彼女が身をひねった。下着で拘束された脚は僕がしっかりと抑えているので、上半身だけ体をひねった。僕はのちに、雑巾みたいだな、と言うのだが、彼女が身をひねると、彼女の股穴から一筋の液体が流れ出てきた。僕の思案事項が紐解かれた。
中から残りが出てきてるぞ。まったく、そこまでやるかな。
僕は問い詰めた。
…なにが?
この期に及んでまだすっとぼけようとする彼女に自白を促す会話をするのはとても面倒くさいことだった。
いやな、お前が身をひねった時に中からつつーっと残りがでてきたんだよ。なんていうか、雑巾みたいだな。
なにが?
君さ、男の俺がそれを見て何かわからないと思うの?
僕はその液体に触ってもいないし、直に子種を出した経験もないので、そういう現象が起こるとは耳にしたことがあるがその液体が100パーセント子種であるとは実は確信していなかった。もちろん99.9パーセントそれだ、と思ってはいたが、欲しいのは確証だ。自白させるしか僕に手はない。
故意なの?、事故だったの?
…ごめん。
なにが?、いやそんなことより故意なのか事故なのか。それが問題だよ。
…事故。ごめん。ごめんなさい。
僕はあっさりと自白をとった。
ついに泣き始めた彼女をよそに、僕はタバコに火をつけた。
まだ僕には疑念が残っている。彼女は事故だと言ったが、いやたとえ事故だったとしてもだ、直にやらせたということは事実だ。ということは相手の子を孕んでも構わないという気持ちがあったということだ。僕はこの時に、あまりにも間抜けだが、ようやく彼女の優先順位がわかった。二股の本命は僕ではなかったのだ。僕はあまりにも間抜けだった。
声こそ荒げていないが、乱暴な調子で僕は言う。
なんで?どうして?海の仕事なの?
…違うよ。
ここまできて彼女に、ニュースにもなったどころの騒ぎではない勇者部隊壊滅の可能性の報からフナムシの安否への連想が為されないのは、状況が状況とはいえありえないだろうと僕は思う。彼女とフナムシに面識は無いが、親友が勇者部隊に入ったことは少しだけ彼女に話したはずだ。フナムシの安否まで気が回れば、僕が実際に置かれた立場まで推測することは不可能だろうが、この時分に遠くへ行くと言い出した僕が何処に向かう予定であるかぐらいは察しのつくことだ、とイライラしながら思っていると、
トッツクポーリに行くの?
と彼女が言った。僕はようやく線が繋がり始めたことで、次の段階に進むことにした。
それは言えない。
僕はあからさまに話をはぐらかした。矛盾するようだが、このぐらいはっきりとはぐらかさないと、彼女は話に食いついてこないことをよく知っていた。
なんで?
いよいよ話の核心に迫ってくる彼女の、頭の悪さが滲み出るような一言に、話を次の段階に進ませよう とした僕だが、少し、嘘や事実の統合性などを考える時間が欲しくなった。具体的には、彼女をいま僕が陥っている状況の関係者にしてやるか否か、が大きな問題だ。当然僕の陥っている状況の関係者になれば、彼女に何らかの危険を背負わすことになる。それでも構わない、と考える僕と、さすがにそれはまずい、と論理的に思考する僕が僕の脳内で論争を繰り広げている。どちらに転ぶか転ばせるか、彼女の知らないところで僕は彼女の命運を握っている、そう思うと心に大きな遊びがうまれた。
そんなことより君の話だ。
僕はもはやそれほど興味のない話を唐突に彼女に振った。いや、もともとこっちの話が主題になるはずの状況だ。
なんにもしてない!、飲みで疲れたから休んだだけ!
彼女は鼻で笑うような笑顔を作って明るく言い放った。僕はその仕草をよく知っている。身に沁みてわかっている。彼女には言っていないが、それは彼女が嘘をつくときの癖だからだ。はっきりすぎるくらいわかりやすい癖だった。
へえ、なんにもしてない、ねえ。
そうだよ。ただ寝て…睡眠をとっただけだよ。
やってないと?
正直キスされたぐらいはあったけど、ごめん。
彼女のこの言葉も、彼女が嘘をつく時の癖だ。おそらく、一欠片の事実をおおっぴらにすることで話に真実味を帯させようとしているのだろう。が、彼女にそういったタイプの嘘をつくことはまるで向いていない。彼女はきっと、一欠片の事実を中心に論理を築こうとしているのだろうが、ろくに本を読まず、嘘でない話であっても話に一貫性を作れない彼女にはそのタイプの嘘は甚だ向いていない。ましてや僕は彼女が嘘をつく際の癖をあと一つ二つ知っているのだから、僕にとってもはや彼女は生ける嘘発見器だ。いや、生ける嘘発覚機、か。
やってないんだ。
その一方で僕は彼女の嘘を倫理的に破ることを諦めた。確かめる術があるし、面倒くさいからだ。そんな僕の考えていることを知ってか知らずか、おそらく何も考えていないだろうが、彼女は、
うん!信じて!
と言い放った。こうなれば僕が取るべき手段はひとつだ。
じゃあ服を脱げよ。
え?
脱げばわかるだろ。
彼女は僕とホテルに入るべきではなかった。入らざるを得ない事態だった、と言えなくもないが。
なんもしてないんだろ?、だったら君の股は汚いまんまだろ?、見ればわかるよ。きれいだったらアウトだよね。
…ごめん。お湯は浴びた。疲れてたからさっぱりしたくて。ひとりでだよ!
彼女のその言動から嘘と知りながら、つまり彼女は勝手に自らゲロしたわけだが、僕はさらに追求した。
君は知っているかわからないが、女は、まあ少なくとも君は、男とやると股にちょっとした痕が残るものなんだよ。もちろん俺とやった後、俺は何度もその痕をみた。そうだな、君の言うことを信じてやるよ。だから確かめてやるよ。
痕が残る云々の話は嘘半分事実半分のものだったが、見ればわかることは紛れもない事実だ。彼女のことをよく知る僕には容易なことだ。
当然彼女はあれやこれや言い拒否の態度をとった。ますます、語るにおちるとはこのことだ。僕には時間がないし、もはや、幸せな気持ちのままで三途の川を渡りたい、という一度持った気すら今は持っていない。今の気持ちを強いて言えば、どうせもう会えないのならはっきりさせたい、というものだ。少し悪い気もしないでもないが、僕は彼女の着ている服を脱がしにかかった。彼女はかなり抵抗したが、焼け石に水だ。武道家の僕にとって手脚を出さずに優しく彼女の体をコントロールすることなど朝飯前のことだった。武道をやっていてよかった。
あっという間に下半身を下着一枚にする。なんだか、げひひ、と下卑た笑い声をあげてみたい気になる状況だが、そんなことよりやることがある。さすがに下着を優しく脱がすことは難しい作業だったが、僕はやり遂げた。下着を両の足首あたりにまで下げることに成功した。
下着をずらした瞬間に匂いがしないので彼女が湯を浴びたことはわかった。皮肉なことにそのことは、彼女の言い訳が真実だった、ことではなく、彼女が嘘をついていることが僕の中で確定したことだった。
嫌がり抵抗する彼女を無視し、僕は彼女の股を観察する。そして少しおかしなことに気づく。湯を浴びたのだからきれいだ。きれいではあるのだが、きれいすぎるのだ。普段はしない石鹸の香りすらする。事後によく洗った証左だ。僕とした後は、僕が言いださなければ、家に帰ってから浴びるから、と事後に体を洗わないことも多々ある彼女だ。こんなことはなかなか起こらない。なぜだ?。僕の知らない彼女の一面だろうか。いやそれは考えにくい。男の趣味だろうか。事後にわざわざ洗いっこを?。今朝僕と遭遇することは想定していないのだから、そのことの対策ではない。午後会う為、も、家に帰ってから洗えばいい話で、考えられない。
そんなことをまじまじと股を見ながら思案していると、彼女が身をひねった。下着で拘束された脚は僕がしっかりと抑えているので、上半身だけ体をひねった。僕はのちに、雑巾みたいだな、と言うのだが、彼女が身をひねると、彼女の股穴から一筋の液体が流れ出てきた。僕の思案事項が紐解かれた。
中から残りが出てきてるぞ。まったく、そこまでやるかな。
僕は問い詰めた。
…なにが?
この期に及んでまだすっとぼけようとする彼女に自白を促す会話をするのはとても面倒くさいことだった。
いやな、お前が身をひねった時に中からつつーっと残りがでてきたんだよ。なんていうか、雑巾みたいだな。
なにが?
君さ、男の俺がそれを見て何かわからないと思うの?
僕はその液体に触ってもいないし、直に子種を出した経験もないので、そういう現象が起こるとは耳にしたことがあるがその液体が100パーセント子種であるとは実は確信していなかった。もちろん99.9パーセントそれだ、と思ってはいたが、欲しいのは確証だ。自白させるしか僕に手はない。
故意なの?、事故だったの?
…ごめん。
なにが?、いやそんなことより故意なのか事故なのか。それが問題だよ。
…事故。ごめん。ごめんなさい。
僕はあっさりと自白をとった。
ついに泣き始めた彼女をよそに、僕はタバコに火をつけた。
まだ僕には疑念が残っている。彼女は事故だと言ったが、いやたとえ事故だったとしてもだ、直にやらせたということは事実だ。ということは相手の子を孕んでも構わないという気持ちがあったということだ。僕はこの時に、あまりにも間抜けだが、ようやく彼女の優先順位がわかった。二股の本命は僕ではなかったのだ。僕はあまりにも間抜けだった。