微笑シリーズ。趣味と爆弾 | からだに恥をかく体操〜えんぴつみがき〜

微笑シリーズ。趣味と爆弾

『こないだ知人にいわれたんだ。なにか新しいことを始めなよって』
「それは、趣味とか?」
『趣味だな。そんなもので困ってるんだおれ』
「なんでよ」
『新しい趣味を始めなさいと言われても、おれ今までに一度として“わたしの次の趣味はこれにします!”っていう風に趣味としたものなんてないんだ』
「ああ、趣味を探したことがないんだな。気がついたら趣味と呼べるものになってたものが趣味だと」
『そうなんだよ。だから、困っちゃってね』
「無視すればいいじゃん」
『軽く扱えない人から言われてるから困ってるんだろ。仮にしゃべりたての赤子にこう言われたらね、そりゃそんなものおれも無視できるし、なんならおれの趣味の心配をするまえにお前の趣味の心配をしろとこんこんと言ってやりますけど』
「言うな。しゃべりたての赤子に」
『困ってるんですよ』
「そうか。ちなみに今現在のお前の趣味ってなんだ?」
『そうだなあ、ないね』
「え!?」
『ない。趣味と呼べるものはなに一つない』
「いや、そんなことはないだろ。お前プロレス好きじゃん。あれは趣味だろ」
『うーん』
「学生時代に水道橋のプロレスグッズショップの福袋に大枚はたいて痛い目みたぐらいプロレス好きじゃん」
『ああ、袋開けてみたら小さな箱がいくつか入ってると、その中になにか布状のものが入ってると。“一撃必殺”とか“筋骨隆々”とか刺激的な文字が布状のもののフロントに印字されてて。タオルかリストバンドかなと思って開けてみたら、ビキニパンツが入ってた事件だろ。一袋5000円ぐらいのやつをノリで二袋買ったら、そういうビキニパンツが4枚と海外みやげにおばあちゃんが買ってくるようなどうしようもないTシャツ数枚が入ってた事件な』
「完全に一万円をドブに捨てたよな。お年玉を」
『まあ、翌年も買ったけどね。一万円分』
「なんで買ったんだよ!?。完全に欺かれてるだろ店に!」
『そしたら、なにかなああれは、去年の件で他の客から中身にクレームきたのかなあれは、ビキニパンツが入ってなくて、トランクスが入ってた』
「ビキニがトランクスに変わっただけじゃねえか!」
『いやただのトランクスじゃないよ』
「ああ、なにかプロレスにまつわる」
『いやそんなプロレスショップ視点からみてのただのトランクスじゃなくて、BVDの普通のトランクスだったから』
「駄目だろ!、なんつうか駄目だろそれ」
『グレーの』
「普通だな!」
『次の年も買ってやろうと心に決めて』
「決めるなよ」
『翌年もその店に赴いたら、なくなってた』
「まあ、なあ」
『水道橋ビキニ事件』
「でもまあ、そのくらいプロレスが好きなんだろ?」
『そのくらいってどういうことだよ』
「いや、当時大枚はたいてもいいぐらいプロレスが好きで、今も好きなんだろ?」
『まあ、好きですけど』
「それは趣味だろって話だよ」
『趣味ねえ。プロレスが趣味………でも履歴書に書けるぐらいの趣味ではないよ?』
「それは履歴書の趣味欄にプロレス観戦と書くことが履歴書の書き方における一般常識的にありえないって意味か?」
『いや、そんな体面的なもんじゃなくて、履歴書で表明するほどプロレスはおれの趣味ではないってことだよ』
「なるほど。履歴書で表明するほどのなあ。ほかにもお前の好きなことといや、読書とか」
『あんた今時履歴書の趣味欄に読書って書いて何があるってんだよ。そんなもんネアンデルタール人が趣味欄に火おこしって書くようなもんだろ』
「ネアンデルタール人ってお前。いや履歴書の書き方の話ではないよ?。お前の趣味の話で」
『読書なんか趣味じゃないよ。実際にもうほとんど読んでないしね。確かに以前はバカみたいに本読んでたけど、ここ数年ときたら私事では一冊も読んでないからね』
「なんで?」
『なんでって、読書がおれの趣味じゃないことに気がついたからだよ』
「気がついたからって、それまでずっと読んできたわけだろ」
『まあ』
「なんでそうなった」
『そりゃ読んでても楽しくないからだろ』
「でも読んでた時は楽しかったんだろ?」
『そうなんだけどさ。お前は根本的にわかってないから言うけど、読書が趣味だと言っていい人ってのは、自分の好きな作家以外に、おそろしくくだらねえ本も平気で読了できる人のことを言うんだよ?。読書が趣味なんだから。なにかを読んでる時間が好きな人なんだから。おれはそうじゃない。たまたま人生の行きがかり上おもしろい本があるってことを見つけてそれらを読むことが好きだっただけで、読書自体は好きでもなんでもない。よって読書はおれの趣味ではない』
「めんどくさい奴だなお前は。そんなもの紙の上に書いてあるだけじゃ、相手が本当の読書家か、なんとなく趣味欄に読書と書いたエセ読書家かなんか見破れないだろ」
『見破れるよ』
「え!?。どうやって?」
『どうやってというか、見ればわかるだろ』
「へえ面こかれて、わたし毎日一冊以上読んでますオーラ出してくる奴もいるだろ」
『まあ、そいつも必死だからな』
「どこを見ればわかるんだよ」
『鼻だよ』
「鼻?」
『鼻にイボがある奴は読書家』
「おい」
『ない奴は、嘘』
「なんでだよ。読書家は鼻にイボがある奴ってお前。おかしいだろ」
『おかしくないだろ。逆にきくけど、読書家の鼻にイボがなかったらおかしいだろ?』
「ええ?」
『読書家の鼻にイボがなかったらおかしいだろ?』
「いや……ていうかなんで読書家の鼻にはイボができるんだよ」
『イボって言ったけど、あれはタコなんだけどね。ペンダコと同じで、鼻を酷使してるからできる。あれほど鼻を酷使する趣味もないよ』
「本読むのにいつ鼻を酷使するんだよ」
『じゃあお前は本読んでる途中で眠くなったらどうするんだよと』
「しおり!?、鼻をしおり代わりに挟むの!?」
『だから、鼻の横にイボがある人は、ああこっち向いて寝るクセがあるんだなとわかるわけ。イボの位置と。そんで鼻の頭にイボがある奴は、お前ちょっとどういうかっこうで寝てるんだよと』
「え?、ふつうにというか、こう本をパサッと顔にかけて寝るような」
『そんなバカなこと、そんなしおり挟んだら顔中が、顔全体がひとつの巨大なイボになってしまうだろ』
「本にはどんな成分が配合されてんだよ。まあ趣味がない趣味がないと言ってるけども」
『なに?』
「このブログ自体はどうなんだ?」
『ああ、これは趣味じゃないよこんなもん。こんなもんはあなた、趣味じゃないよ。こんなもんを趣味にされた日にはあなた』
「なんなんだよ」
『このブログは本気ですからね』
「……………」





終わり。というかほぼ途中で投げた。趣味と趣味じゃないものの境界線についてものすごくハッとさせらるようなこと思いついたんだけどその日はそのまま寝て、気がつけばすっかり忘れちまって投げモードに入った。しかししかし、いつにもまして支離滅裂でおもしろいとこが一個もないな………。
禁煙………
………したからかな…。