再投稿シリーズ。あのあまり素晴らしくない日々
『あの素晴らしい愛をもう一度♪』
「ほう、フォーククルセイダースだな」
『命かけてと誓った日から♪』
「小気味の良いリズムで歌ったな。かけてと、の部分を特に」
『心と心が今はもう通わない♪。ということで今日は中高生にケータイ電話が普及し始めた頃の、おれが体験した素敵なお話をしようと思う』
「へえ、つまりは恋の話か?」
『まあね』
「是非ともさ、聞かせておくれよ」
『聞かせてやるとも』
「OK」
『OK。あの頃はまだクラスでケータイを持ってる人の数より、持ってない人の数の方が多数派だった時代。そしておれはケータイを手にしていた。正確にはPHSだったがな』
「ブルジョア育ちかい?」
『いやなんてことはない中流家庭の申し子さ。あの頃のおれは気難しい年頃でな』
「世間一般的にも気難しい年頃だろうよ」
『そんな気難しいおれだから、親に向かってどうしてもケータイが欲しいとおれにしては珍しく猛烈なダダをこねたのさ』
「まあ、あの頃誰もが通る道だな」
『15の夜だったよ』
「片やバイクを盗み出し、片や猛烈なダダをこねる。青春の色は様々だな」
『思えば、あれが親に対して最後のダダになってるな』
「思い出のダダか」
『思い出のダダさ。ダダといっても、ダダイズムのダダではないがな』
「OK、話を進めてくれ」
『OK。ケータイを手に入れたおれは次の日、大変ウキウキして登校した。当時おれの母校はケータイ持ち込み禁止で見つかったら最後、取り上げられて解約さ。朝の校門にはランダムに生徒のカバンの中を検査する怖い体育教師がいたものだが、ケータイ生活初日のおれは二段になってる弁当の上段などにケータイを忍ばせ何食わぬ顔で持ち込んだものさ』
「弁当の中に?。何か液が漏れる心配はなかったのか?」
『大丈夫、当時からジップロックの気密性はバッチリだったさ』
「なるほど、バッチリだったな」
『ま、さすがに弁当箱に忍ばせたのは初日のみだったがな。あとは、筆箱に入れていたよ。万が一見つかった時に大変だから、半分冗談で、本日下校後所用有りの為ケータイを持たせた、とかいう旨の親からの書状と偽装した印鑑つき便箋をカバンの中に入れといたりもしたな』
「知能犯め。小心者ともいう」
『話は脱線するが、そこまで準備すると、むしろ見つかって欲しいと思うものよ。見つかって、乗り切った自分にカタルシスを覚えるだろうことは目に見えていたからな』
「前言撤回させてもらおうか。このチャレンジャーめ」
『ある日、おれは校門でそのランダム抽出にひっかかった。そしておれは自ら、“これなのですが”と、封筒に入ったケータイをその教師に差し出したのさ』
「お前は嘘をつく時に正直者を装うからタチが悪いよ」
『即、体育教官室に誘われ担任を呼ばれたがな』
「それは駄目だったということか?」
『危なかったが、そこから粘るおれさ。運良く、母親が軽い病気で入院してる時期だったのさ。担任はそのことを知っていたから、無事に済んださ。もちろんそれも折り込み済みで、保険を用意して初めて計画を実行に移した訳だが』
「実母の入院すら嘘のダシにするとは、恐ろしい奴だ」
『とまあ、話は戻ってケータイ学生生活初日、同じくケータイを持ってる奴らと番号を交換して、授業中教師の目を盗んでメールをしたり、学校にいたずら電話をかけたりで、教師達の言う学校にケータイ持ち込み禁止論を全面的に肯定するような活動を行っていたのだが』
「まあ、そんなものだろう。初めてのケータイなのだからな」
『昼休みに、なぜかおかずがない白飯のみの弁当を前に絶望していると』
「お前がケータイを弁当箱の上段に隠しちゃったからだろ!」
『いつもより早くメシを食い終わったおれは、高橋君のとこにちょっかいを出しにいった』
「高橋君っていうとお前の数少ない友達だな」
『現在物書きを自称する無職のな。あの頃高橋かずふみ君(本名)は何かと輝いていてクラスの人気者だったのだが、しばらくして突然、何の前触れ無しに高校を辞めてな。人生何が起こるかわからんものよ』
「まあ、高橋君の話はいいよ」
『おれの高橋にそんなこと言うなよ。傷ついちゃうだろ!』
「悪かったが、話を進めてくれよ。もうずいぶんと進んだというのに素敵な話が出てきやしないよ」
『まあ、確かに高橋君がこの先どこで野垂れ死にしようと、この話には関係ないからな』
「ひどいな」
『高橋君にちょっかい出しにいくと、高橋君がある提案をしたんだ。“女がでるまで適当な番号にかけろ”とね。おれもその提案を承諾した。はじめに言ったように、電話というものが一体なんなのかよくわかってなかったことと、男子校だったから女に飢えていた、手のひらにある機械から女の声が聞こえてくる欲望に、あわよくば恋に発展する可能性に勝てなかった』
「まあ、なあ」
『おれたちはアホだったから早速、人目のつかない場所に行き、適当な番号をプッシュした。なぜアホだったかというと、おれたちが狙っていた同学年の女子達も今学校にいて、当時大体の学校はケータイ持ち込み禁止だったから、出られないということを鑑みてなかったからだ』
「アホだな。まさしく穴があったら入れたいという性欲有り余る時期ならではだ」
『しかし、ここで奇跡が起こる』
「起こったか」
『一回目、一回目のチャレンジで、なんと、同い年で近くの学校に通う女子と通じることが出来たんだ』
「それは、すごいな」
『びっくりしたさ。そのいたずら電話と呼べるような電話の第一声からしてびっくりしたよ。おれは出た声で女とわかると、“誰だ”と言ったんだ』
「ぶしつけにも程があるだろ」
『そしたら、○○だよって相手は答えたんだ』
「変としか言えないよ」
『一気に話しが弾んでな』
「なんでそうなるんだよ」
『わかってないなお前は。相手は女子校だったんだけど、おれたちと似たような境遇だったわけ。ケータイを持ってから日も浅いし、周りに友達もいるから、ほれ、あるだろ?、パーティー的なノリだよ。だから“いたずら電話はやめて”と言わず、乗っかったんだな』
「なるほどな」
『話をしてると、おれたちは近くにいることがわかった。となればもう、会うしかない。そしてその約束を取り付けた。実に軽いノリだったよ。“じゃあ会おうぜ”“わかった、いいよー”ぐらいのノリだった。向こうは向こうで友達に器の大きさでも見せたかったんだろうが、とにかく恋のアバンチュールのかけらでも拾い集めたくてしょうがなかった年頃で、相手も同じくだったからな』
「アバンチュールか」
『アバンチュールだよ。おフランスの香りさ』
「アバンチュールセルブプレ、か」
『高橋君ともうひとりとおれで待ち合わせ場所に行った。そしてケータイを駆使して会ってみたら、相手方の三人が、それがまあなんとも言えないブサイク集団でな』
「おいおい」
『森三中がかわいく見えるぐらいでよ。ものすごい落差だった。声の印象やら女と出逢えるドキドキやらとの落差たるや、穴があったら入れたいという青年男子の本懐すら音をたてて崩れていく程だった。ガッシャーン崩れていった。大震災でも台風でも空襲でも崩れることがなかった創建1000年を越える塔が、崩れていった』
「ひどいだろ」
『そりゃおれたちのメンツにも高橋君はいたよ?』
「おい、かわいそうだろ高橋君」
『でも、そのメンツとは誰とも釣り合わない。お前らの方の天秤シャフト重さに耐えきれず折れちゃってるじゃん、ぐらいバランスとれてなかった。というか底が抜けてるだろって、天秤皿ぶち抜いちゃってるだろってぐらい』
「ひどいよお前」
『会う前はケータイで楽しく話していたのにさ。もう、心と心が今はもう通わないよね』
「さらっと使うなよ。短い通信期間だな」
『童貞の立場でも、こいつらと交流を図るのは不可能だ、ってレベルだったからな』
「異星人みたく言うな」
『逃げてしまおうかと思ったけど、そんなことしたらあいつら絶対うちの学校におれたちのことチクるでしょ?』
「知らねえよ!」
『だからもう、あれだよね。鎖に繋がれたドーベルマンにちょっかい出してたら、実は鎖に繋がってないドーベルマンだった時のような心境』
「ドーベルマン…」
『こっちが主導権握ってると思ってたら、手のひらの上で転がされてたというね。そこに気がついた時点から悲劇の始まりだよ』
「全然素敵な話になってこないけど」
『おれたちはとりあえず、近くのファミレスに入ったよ。いやだったけども、機嫌を損ねさせでもしたら痛い目見るからね。もちろん待ち合わせ場所は学校から電車に乗った場所さ』
「それで?」
『その日はなんとか、じゃあね、で終わったんだ。ミッションコンプリートだよ』
「ほう」
『だけど、悲劇は始まったばかりだった。なまじおれと、高橋君じゃないもうひとりの友人がかっこよかったばかりに起こった事態だった』
「さらっと言うなさらっと。お前はそんなにイケメンじゃない」
『“次いつ会える?”の大攻勢よ。こっちはあんな奴らと会ってることがバレたら道を歩けないっていうのに気軽なもんだ』
「ひどいって」
『とてつもなくめんどくさい事態になり、運良く別のルートから仲良くなれた女がいたことから、おれは彼女達のことを高橋君に一任することにした』
「最悪だな」
『いや、高橋君は乗り気だったよ』
「なんでだよ」
『“彼女達をダシにして、あの学校からのルートを築けば男子校にはありえないバラ色の学生生活が待っている。そうだろ高橋”“そうだね!”てなもんだ』
「とことんひどい奴だな」
『しかし、こういう言葉がある。ミイラ取りがミイラになる』
「ていうと、まさか」
『いつしか高橋君は奴らに…奴らに心と体を奪われてしまったんだ』
「まあ、ブスは三日で慣れるとも言うしな」
『あれは慣れない!』
「おい」
『ヘドロの匂いがする奴らだぜ?』
「やめろよそういうこと言うの」
『会った日から三週間後ぐらいかな、童貞を卒業したことを自慢してくる高橋君ったら、目もあてられなかったよ。第一、あれはセックスにカウントされないだろ』
「知らねえけど!」
『どっちかというと、イカリングに挿れた方がセックスの態を成してるからね』
「成してねえよ。イカじゃねえか」
『晴れて付き合いだした高橋君と彼女達のひとり、そうだな、仮にチョメ子としようか』
「ひどい仮名だよ」
『しばらくして高橋君がおれともうひとりを呼び出した。あれだよ。前回の再現だよ』
「ああ、まあ、高橋君も色々あったんだろうな」
『おれはもう、いうなれば彼女達を身内として扱うようになるわな。当然性欲にかられることはないわけだし、もう思う存分思いをぶちまけられるわけ。“生きてるだけでも奇跡だなおブスさんたち”とか』
「最悪だよ、最悪」
『字数が足りなくなってきたから先を急ぐけど、そう言ってたら彼女達が泣いたり怒ったりでもう歯止めがきかなくなってな』
「当たり前だ」
『その日は、ほうほうの体でおれともうひとりは逃げ出したんだけど』
「散々場を荒らしておいてそれかよ」
『それからまもなくだな。高橋君が学校やめたの』
「えっ」
『いや、やめたんだよ』
「なんでだよ」
『それがな、高橋君にそれ何度か訊いたんだけど、“お前のせいじゃない”って言うだけで、わからない』
「それ確実にお前のせいだろ!」
『いや、バカだな。違うよ。お前のせいじゃないって本人が言ってんだから』
「ちょっとお前、一回人間社会をやり直せよ」
『そんな不思議な話でした』
「素敵な話じゃなかったのかよ!」
『敵の素の話だね』
「味の素みたく言ってんじゃねえ!」
『友達だった高橋君とも、それ以来心と心が通わないよ』
「ただの社会不適合者なお前の話じゃねえかよ!」
終わり。ぐだぐだ。何も考えずにとりあえず書いてたら、字数が迫ってた。悲惨。悲惨の一言に尽きる。でも恥をさらすのがこのブログ。僕は勇気を振り絞り、カラカラになった雑巾。何も感じない。世間というものは必要以上に厳しくないといけないファンダメンタルを抱える人が多すぎて、あんまりよろしくない。お前とセックスしたくない。
以上、再投稿
「ほう、フォーククルセイダースだな」
『命かけてと誓った日から♪』
「小気味の良いリズムで歌ったな。かけてと、の部分を特に」
『心と心が今はもう通わない♪。ということで今日は中高生にケータイ電話が普及し始めた頃の、おれが体験した素敵なお話をしようと思う』
「へえ、つまりは恋の話か?」
『まあね』
「是非ともさ、聞かせておくれよ」
『聞かせてやるとも』
「OK」
『OK。あの頃はまだクラスでケータイを持ってる人の数より、持ってない人の数の方が多数派だった時代。そしておれはケータイを手にしていた。正確にはPHSだったがな』
「ブルジョア育ちかい?」
『いやなんてことはない中流家庭の申し子さ。あの頃のおれは気難しい年頃でな』
「世間一般的にも気難しい年頃だろうよ」
『そんな気難しいおれだから、親に向かってどうしてもケータイが欲しいとおれにしては珍しく猛烈なダダをこねたのさ』
「まあ、あの頃誰もが通る道だな」
『15の夜だったよ』
「片やバイクを盗み出し、片や猛烈なダダをこねる。青春の色は様々だな」
『思えば、あれが親に対して最後のダダになってるな』
「思い出のダダか」
『思い出のダダさ。ダダといっても、ダダイズムのダダではないがな』
「OK、話を進めてくれ」
『OK。ケータイを手に入れたおれは次の日、大変ウキウキして登校した。当時おれの母校はケータイ持ち込み禁止で見つかったら最後、取り上げられて解約さ。朝の校門にはランダムに生徒のカバンの中を検査する怖い体育教師がいたものだが、ケータイ生活初日のおれは二段になってる弁当の上段などにケータイを忍ばせ何食わぬ顔で持ち込んだものさ』
「弁当の中に?。何か液が漏れる心配はなかったのか?」
『大丈夫、当時からジップロックの気密性はバッチリだったさ』
「なるほど、バッチリだったな」
『ま、さすがに弁当箱に忍ばせたのは初日のみだったがな。あとは、筆箱に入れていたよ。万が一見つかった時に大変だから、半分冗談で、本日下校後所用有りの為ケータイを持たせた、とかいう旨の親からの書状と偽装した印鑑つき便箋をカバンの中に入れといたりもしたな』
「知能犯め。小心者ともいう」
『話は脱線するが、そこまで準備すると、むしろ見つかって欲しいと思うものよ。見つかって、乗り切った自分にカタルシスを覚えるだろうことは目に見えていたからな』
「前言撤回させてもらおうか。このチャレンジャーめ」
『ある日、おれは校門でそのランダム抽出にひっかかった。そしておれは自ら、“これなのですが”と、封筒に入ったケータイをその教師に差し出したのさ』
「お前は嘘をつく時に正直者を装うからタチが悪いよ」
『即、体育教官室に誘われ担任を呼ばれたがな』
「それは駄目だったということか?」
『危なかったが、そこから粘るおれさ。運良く、母親が軽い病気で入院してる時期だったのさ。担任はそのことを知っていたから、無事に済んださ。もちろんそれも折り込み済みで、保険を用意して初めて計画を実行に移した訳だが』
「実母の入院すら嘘のダシにするとは、恐ろしい奴だ」
『とまあ、話は戻ってケータイ学生生活初日、同じくケータイを持ってる奴らと番号を交換して、授業中教師の目を盗んでメールをしたり、学校にいたずら電話をかけたりで、教師達の言う学校にケータイ持ち込み禁止論を全面的に肯定するような活動を行っていたのだが』
「まあ、そんなものだろう。初めてのケータイなのだからな」
『昼休みに、なぜかおかずがない白飯のみの弁当を前に絶望していると』
「お前がケータイを弁当箱の上段に隠しちゃったからだろ!」
『いつもより早くメシを食い終わったおれは、高橋君のとこにちょっかいを出しにいった』
「高橋君っていうとお前の数少ない友達だな」
『現在物書きを自称する無職のな。あの頃高橋かずふみ君(本名)は何かと輝いていてクラスの人気者だったのだが、しばらくして突然、何の前触れ無しに高校を辞めてな。人生何が起こるかわからんものよ』
「まあ、高橋君の話はいいよ」
『おれの高橋にそんなこと言うなよ。傷ついちゃうだろ!』
「悪かったが、話を進めてくれよ。もうずいぶんと進んだというのに素敵な話が出てきやしないよ」
『まあ、確かに高橋君がこの先どこで野垂れ死にしようと、この話には関係ないからな』
「ひどいな」
『高橋君にちょっかい出しにいくと、高橋君がある提案をしたんだ。“女がでるまで適当な番号にかけろ”とね。おれもその提案を承諾した。はじめに言ったように、電話というものが一体なんなのかよくわかってなかったことと、男子校だったから女に飢えていた、手のひらにある機械から女の声が聞こえてくる欲望に、あわよくば恋に発展する可能性に勝てなかった』
「まあ、なあ」
『おれたちはアホだったから早速、人目のつかない場所に行き、適当な番号をプッシュした。なぜアホだったかというと、おれたちが狙っていた同学年の女子達も今学校にいて、当時大体の学校はケータイ持ち込み禁止だったから、出られないということを鑑みてなかったからだ』
「アホだな。まさしく穴があったら入れたいという性欲有り余る時期ならではだ」
『しかし、ここで奇跡が起こる』
「起こったか」
『一回目、一回目のチャレンジで、なんと、同い年で近くの学校に通う女子と通じることが出来たんだ』
「それは、すごいな」
『びっくりしたさ。そのいたずら電話と呼べるような電話の第一声からしてびっくりしたよ。おれは出た声で女とわかると、“誰だ”と言ったんだ』
「ぶしつけにも程があるだろ」
『そしたら、○○だよって相手は答えたんだ』
「変としか言えないよ」
『一気に話しが弾んでな』
「なんでそうなるんだよ」
『わかってないなお前は。相手は女子校だったんだけど、おれたちと似たような境遇だったわけ。ケータイを持ってから日も浅いし、周りに友達もいるから、ほれ、あるだろ?、パーティー的なノリだよ。だから“いたずら電話はやめて”と言わず、乗っかったんだな』
「なるほどな」
『話をしてると、おれたちは近くにいることがわかった。となればもう、会うしかない。そしてその約束を取り付けた。実に軽いノリだったよ。“じゃあ会おうぜ”“わかった、いいよー”ぐらいのノリだった。向こうは向こうで友達に器の大きさでも見せたかったんだろうが、とにかく恋のアバンチュールのかけらでも拾い集めたくてしょうがなかった年頃で、相手も同じくだったからな』
「アバンチュールか」
『アバンチュールだよ。おフランスの香りさ』
「アバンチュールセルブプレ、か」
『高橋君ともうひとりとおれで待ち合わせ場所に行った。そしてケータイを駆使して会ってみたら、相手方の三人が、それがまあなんとも言えないブサイク集団でな』
「おいおい」
『森三中がかわいく見えるぐらいでよ。ものすごい落差だった。声の印象やら女と出逢えるドキドキやらとの落差たるや、穴があったら入れたいという青年男子の本懐すら音をたてて崩れていく程だった。ガッシャーン崩れていった。大震災でも台風でも空襲でも崩れることがなかった創建1000年を越える塔が、崩れていった』
「ひどいだろ」
『そりゃおれたちのメンツにも高橋君はいたよ?』
「おい、かわいそうだろ高橋君」
『でも、そのメンツとは誰とも釣り合わない。お前らの方の天秤シャフト重さに耐えきれず折れちゃってるじゃん、ぐらいバランスとれてなかった。というか底が抜けてるだろって、天秤皿ぶち抜いちゃってるだろってぐらい』
「ひどいよお前」
『会う前はケータイで楽しく話していたのにさ。もう、心と心が今はもう通わないよね』
「さらっと使うなよ。短い通信期間だな」
『童貞の立場でも、こいつらと交流を図るのは不可能だ、ってレベルだったからな』
「異星人みたく言うな」
『逃げてしまおうかと思ったけど、そんなことしたらあいつら絶対うちの学校におれたちのことチクるでしょ?』
「知らねえよ!」
『だからもう、あれだよね。鎖に繋がれたドーベルマンにちょっかい出してたら、実は鎖に繋がってないドーベルマンだった時のような心境』
「ドーベルマン…」
『こっちが主導権握ってると思ってたら、手のひらの上で転がされてたというね。そこに気がついた時点から悲劇の始まりだよ』
「全然素敵な話になってこないけど」
『おれたちはとりあえず、近くのファミレスに入ったよ。いやだったけども、機嫌を損ねさせでもしたら痛い目見るからね。もちろん待ち合わせ場所は学校から電車に乗った場所さ』
「それで?」
『その日はなんとか、じゃあね、で終わったんだ。ミッションコンプリートだよ』
「ほう」
『だけど、悲劇は始まったばかりだった。なまじおれと、高橋君じゃないもうひとりの友人がかっこよかったばかりに起こった事態だった』
「さらっと言うなさらっと。お前はそんなにイケメンじゃない」
『“次いつ会える?”の大攻勢よ。こっちはあんな奴らと会ってることがバレたら道を歩けないっていうのに気軽なもんだ』
「ひどいって」
『とてつもなくめんどくさい事態になり、運良く別のルートから仲良くなれた女がいたことから、おれは彼女達のことを高橋君に一任することにした』
「最悪だな」
『いや、高橋君は乗り気だったよ』
「なんでだよ」
『“彼女達をダシにして、あの学校からのルートを築けば男子校にはありえないバラ色の学生生活が待っている。そうだろ高橋”“そうだね!”てなもんだ』
「とことんひどい奴だな」
『しかし、こういう言葉がある。ミイラ取りがミイラになる』
「ていうと、まさか」
『いつしか高橋君は奴らに…奴らに心と体を奪われてしまったんだ』
「まあ、ブスは三日で慣れるとも言うしな」
『あれは慣れない!』
「おい」
『ヘドロの匂いがする奴らだぜ?』
「やめろよそういうこと言うの」
『会った日から三週間後ぐらいかな、童貞を卒業したことを自慢してくる高橋君ったら、目もあてられなかったよ。第一、あれはセックスにカウントされないだろ』
「知らねえけど!」
『どっちかというと、イカリングに挿れた方がセックスの態を成してるからね』
「成してねえよ。イカじゃねえか」
『晴れて付き合いだした高橋君と彼女達のひとり、そうだな、仮にチョメ子としようか』
「ひどい仮名だよ」
『しばらくして高橋君がおれともうひとりを呼び出した。あれだよ。前回の再現だよ』
「ああ、まあ、高橋君も色々あったんだろうな」
『おれはもう、いうなれば彼女達を身内として扱うようになるわな。当然性欲にかられることはないわけだし、もう思う存分思いをぶちまけられるわけ。“生きてるだけでも奇跡だなおブスさんたち”とか』
「最悪だよ、最悪」
『字数が足りなくなってきたから先を急ぐけど、そう言ってたら彼女達が泣いたり怒ったりでもう歯止めがきかなくなってな』
「当たり前だ」
『その日は、ほうほうの体でおれともうひとりは逃げ出したんだけど』
「散々場を荒らしておいてそれかよ」
『それからまもなくだな。高橋君が学校やめたの』
「えっ」
『いや、やめたんだよ』
「なんでだよ」
『それがな、高橋君にそれ何度か訊いたんだけど、“お前のせいじゃない”って言うだけで、わからない』
「それ確実にお前のせいだろ!」
『いや、バカだな。違うよ。お前のせいじゃないって本人が言ってんだから』
「ちょっとお前、一回人間社会をやり直せよ」
『そんな不思議な話でした』
「素敵な話じゃなかったのかよ!」
『敵の素の話だね』
「味の素みたく言ってんじゃねえ!」
『友達だった高橋君とも、それ以来心と心が通わないよ』
「ただの社会不適合者なお前の話じゃねえかよ!」
終わり。ぐだぐだ。何も考えずにとりあえず書いてたら、字数が迫ってた。悲惨。悲惨の一言に尽きる。でも恥をさらすのがこのブログ。僕は勇気を振り絞り、カラカラになった雑巾。何も感じない。世間というものは必要以上に厳しくないといけないファンダメンタルを抱える人が多すぎて、あんまりよろしくない。お前とセックスしたくない。
以上、再投稿