微笑シリーズ。せっかくの仮面舞踏会
「会場は、こっちか。パーティーは、はじまっちまってるな。遅刻したもんな。…どれ様子は、なんだよ、せっかくの仮面舞踏会だってのにみんなアクロバットみたくバラバラに踊りやがって。まったく、仮面舞踏会をわかってないな。まあおれも初めてだけど。………ちぇ、ダンスの相手も見つからないぜ。どこかに誰か余ってないかなあ………。あ、あそこで壁の花してる…ふふ、どれ、さっそく声をかけさせてもらおうかな。やあ、お嬢さん」
『………』
「返答なし、か。それでもおれはめげないぜ。なぜならば今日は仮面舞踏会だからな。やあ、お嬢さん。ひょっとしてお暇かな?。よければ私と踊りませんか?」
『………』
「ふっ、おれとしたことが、少し無粋な声をかけちまったようだぜ。ここはひとつ、みなが踊り狂っている中ひとり取り残され壁に立つ彼女のやさぐれた心を、ストレスフリーな環境で贅沢にも俗世間の苦痛や憎悪を知ることなく育った手垢のついてない上品なグースの高級なダウン100パーセントの羽毛布団のように優しくほぐさなければ」
『………』
「お嬢さん、これは私の希望だが、もしかしたらお嬢さんにあるべきパートナーは、少し前にお腹が痛くなってうちに帰っていたらいいのだが」
『………』
「いやあ、何を隠そう実は私のパートナーも、お腹が痛くなってこれなくなったんだ。うちを出るときあれほど、水槽の中にいる熱帯魚は観賞用だから食べちゃいけないよと言ったのにね」
『………』
「ああ、しかし、どうかな。君を赤い絨毯と壁に添える観賞用の花にしておくのはもったいない。ひょっとして君を踊りに誘ったら、私のお腹が痛くなるのかな?」
『……フフ』
「…素敵なマスクだね」『おもしろい人ね』
「そうかい?」
『そうよ。私を誘うなんて、物好きな人』
「そんなことはないさ。みんなパートナーに気をつかって君に話しかけられないだけだよ」
『フフフ』
「ふふ、では、私と踊って」
『このマスクはね、あなたがやって来る前に対戦相手を血祭りに上げて剥いだマスクだよ!!』
カン。ゴングの音。
「えっ、なに!?」
『お前を火炙りの刑にしてやろうか!!』
「権力者!?。君、権力者なの!?。火炙りの刑って、怖っ!」
『この私に挑んでくるバカな闘士がまだいたとはな』
「いや、ダンスに誘っただけ、ていうかおれ闘士じゃないし」
『お前の生首を巨大な赤いカラスにつつかせてやろうか!!』
「やだよ!。なんだよその巨大な赤いカラスって!」
『この仮面武闘会のトップに君臨する私のかわいいペットだよ!』
「ペットかよ。ていうか今しれっとありがちな漢字誤変換したろ!」
『猛りに猛る、滴るままに流れ落ちる強者どものたぎる血を踏みしめ闘う。阿鼻叫喚つんざくこの仮面武闘会に足を踏み入れて生きて帰れると思うな!』
「わけわかんねえよ」
『なに!?。お前をドルゴルスレンにしてやろうか!!』
「朝青龍一族!?」
『さあ、どのように始末して欲しいんだい?』
「厄介な奴に声かけちまったな」
『ほほう、私の言葉を宇宙からの怪電波を受信した娘の妄言と捉えるか』
「まあ、はい」
『よく、よおく周りを見てみな』
「はあ、………え!?。た、闘っている!?。一目見た時は踊っていると思っていた他のみんなが闘っている!?。そ、そうか、こいつらみんな実力者同士、こいつらの闘いはまるで一流のダンサーのように、もはや見る者に極めて高い芸術性を植え付けるからそう誤解したんだ!!」
『いや、単にお前の目が節穴だったからだ』
「言うなよ!。わかってるから、ほんとはおれそれわかってるから言わなくていいだろ!。取り繕わせろよ!」
『お前の目が節穴だからだ』
「だから言わなくていいだろって」
『お前のデンジャーゾーンがワイルドシングだからだ』
「わけわかんねえよ。なんだよ、トム・クルーズとチャーリー・シーンのファンなのか!?」
『いや、渕正信と大仁田厚のファンだ。二人が若手の頃からのファンだ』
「わかりづらいこと言うな!。若手の頃からってお前何歳だよ!」
『ワイルドシング♪』
「歌うな!。お前いま口ずさみたくなっただけだろ!」
『タラララッラー♪』
「続き知らねえのかよ」
『ふっ、人だけではないぞ。この赤い絨毯、この赤い壁、フフフ、元は純白だったのだ』
「なに!?、ということはこの仮面武闘会で闘う闘士から流れ出たおびただしい量の真っ赤な血が純白の絨毯や壁を赤に染めたというのか!?」
『いや、これは昔、大量に運ばれた赤のペンキ缶が爆発した名残だ』
「なにがあったんだよ!」
『なあに、ただのご近所トラブルさ』
「だからなにがあったんだよ!」
『ふっ、余裕だな』
「え!?」
『忘れてないか?。既にゴングは鳴らされているのを!』
「そういえば…」
『さあ、さあ!。フフフ、ハハハハハ!』
「怖いよ!」
『もう泣き言は待たんぞ!』
「ちょ、ちょっと待ってくれ」
『なんだ?』
「待ってくれたよ!」
『早くしろ』
「お前この仮面武闘会のチャンピオンなんだろ?」
『その通り、絶対王者だ』
「お、おれは素人なんだよ絶対王者さん。おれにハンデをく」
『いいだろう』
「かぶせ気味即答してくれた!。こいつあ気前がよくっていいや!」
『言ってみろ。そのハンデとやらを!。さあ!、さあ!』
「じゃ、じゃあ、ジャンケンで勝負を決めるってこ」
『いいよ』
「いいのかよ!。ダメ元で言って見るもんだ」
『ふっ、真の王者とは天命すら己の支配下に』
「ジャンケンポン」
『あ』
「あ、勝った」
『………』
「………じゃあ、勝負はついたってことで、帰りますね」
『待て!!』
「な、なんですか、帰らせてください!」
『ふっ………負けたよ。これが敗北ってやつか』
「ど、どうも」
『さあ、私のマスクを剥ぎな』
「いや、いいですよ。とにかく帰らせてください」
『ふっ、ここでは他人の首を持たぬ者は外に出られぬ決まり。敗者に情けはいらぬ。さあ剥ぎな』
「そうなんですか。………じゃあ、ちょっと失礼して」
『時にお前』
「は」
『初めてあった時、お前は私とダンスを所望したな』
「いや、まあ、はい」
『いいだろう』
「は?」
『初めて私のマスクを剥いだ男よ』
「あ、マスク取れた」
『私とダンスをしてくれまいか』
「うわ超ブサイク!。超ブサイク!。超ブサイクじゃん!。なんだよその顔!。このマスクあれば帰れるんですよね。じゃあさようならお元気で」
『………………ふっ、そのマスクは敗者から剥いだものだと言うたものを…早とちりめ』
超ブサイク少女はおもむろに、“自前の”マスクを脱いだ。
『まってえー』
チャンピオンの素顔は、そこそこであったという。
終わり。わけわかんねえ。
『………』
「返答なし、か。それでもおれはめげないぜ。なぜならば今日は仮面舞踏会だからな。やあ、お嬢さん。ひょっとしてお暇かな?。よければ私と踊りませんか?」
『………』
「ふっ、おれとしたことが、少し無粋な声をかけちまったようだぜ。ここはひとつ、みなが踊り狂っている中ひとり取り残され壁に立つ彼女のやさぐれた心を、ストレスフリーな環境で贅沢にも俗世間の苦痛や憎悪を知ることなく育った手垢のついてない上品なグースの高級なダウン100パーセントの羽毛布団のように優しくほぐさなければ」
『………』
「お嬢さん、これは私の希望だが、もしかしたらお嬢さんにあるべきパートナーは、少し前にお腹が痛くなってうちに帰っていたらいいのだが」
『………』
「いやあ、何を隠そう実は私のパートナーも、お腹が痛くなってこれなくなったんだ。うちを出るときあれほど、水槽の中にいる熱帯魚は観賞用だから食べちゃいけないよと言ったのにね」
『………』
「ああ、しかし、どうかな。君を赤い絨毯と壁に添える観賞用の花にしておくのはもったいない。ひょっとして君を踊りに誘ったら、私のお腹が痛くなるのかな?」
『……フフ』
「…素敵なマスクだね」『おもしろい人ね』
「そうかい?」
『そうよ。私を誘うなんて、物好きな人』
「そんなことはないさ。みんなパートナーに気をつかって君に話しかけられないだけだよ」
『フフフ』
「ふふ、では、私と踊って」
『このマスクはね、あなたがやって来る前に対戦相手を血祭りに上げて剥いだマスクだよ!!』
カン。ゴングの音。
「えっ、なに!?」
『お前を火炙りの刑にしてやろうか!!』
「権力者!?。君、権力者なの!?。火炙りの刑って、怖っ!」
『この私に挑んでくるバカな闘士がまだいたとはな』
「いや、ダンスに誘っただけ、ていうかおれ闘士じゃないし」
『お前の生首を巨大な赤いカラスにつつかせてやろうか!!』
「やだよ!。なんだよその巨大な赤いカラスって!」
『この仮面武闘会のトップに君臨する私のかわいいペットだよ!』
「ペットかよ。ていうか今しれっとありがちな漢字誤変換したろ!」
『猛りに猛る、滴るままに流れ落ちる強者どものたぎる血を踏みしめ闘う。阿鼻叫喚つんざくこの仮面武闘会に足を踏み入れて生きて帰れると思うな!』
「わけわかんねえよ」
『なに!?。お前をドルゴルスレンにしてやろうか!!』
「朝青龍一族!?」
『さあ、どのように始末して欲しいんだい?』
「厄介な奴に声かけちまったな」
『ほほう、私の言葉を宇宙からの怪電波を受信した娘の妄言と捉えるか』
「まあ、はい」
『よく、よおく周りを見てみな』
「はあ、………え!?。た、闘っている!?。一目見た時は踊っていると思っていた他のみんなが闘っている!?。そ、そうか、こいつらみんな実力者同士、こいつらの闘いはまるで一流のダンサーのように、もはや見る者に極めて高い芸術性を植え付けるからそう誤解したんだ!!」
『いや、単にお前の目が節穴だったからだ』
「言うなよ!。わかってるから、ほんとはおれそれわかってるから言わなくていいだろ!。取り繕わせろよ!」
『お前の目が節穴だからだ』
「だから言わなくていいだろって」
『お前のデンジャーゾーンがワイルドシングだからだ』
「わけわかんねえよ。なんだよ、トム・クルーズとチャーリー・シーンのファンなのか!?」
『いや、渕正信と大仁田厚のファンだ。二人が若手の頃からのファンだ』
「わかりづらいこと言うな!。若手の頃からってお前何歳だよ!」
『ワイルドシング♪』
「歌うな!。お前いま口ずさみたくなっただけだろ!」
『タラララッラー♪』
「続き知らねえのかよ」
『ふっ、人だけではないぞ。この赤い絨毯、この赤い壁、フフフ、元は純白だったのだ』
「なに!?、ということはこの仮面武闘会で闘う闘士から流れ出たおびただしい量の真っ赤な血が純白の絨毯や壁を赤に染めたというのか!?」
『いや、これは昔、大量に運ばれた赤のペンキ缶が爆発した名残だ』
「なにがあったんだよ!」
『なあに、ただのご近所トラブルさ』
「だからなにがあったんだよ!」
『ふっ、余裕だな』
「え!?」
『忘れてないか?。既にゴングは鳴らされているのを!』
「そういえば…」
『さあ、さあ!。フフフ、ハハハハハ!』
「怖いよ!」
『もう泣き言は待たんぞ!』
「ちょ、ちょっと待ってくれ」
『なんだ?』
「待ってくれたよ!」
『早くしろ』
「お前この仮面武闘会のチャンピオンなんだろ?」
『その通り、絶対王者だ』
「お、おれは素人なんだよ絶対王者さん。おれにハンデをく」
『いいだろう』
「かぶせ気味即答してくれた!。こいつあ気前がよくっていいや!」
『言ってみろ。そのハンデとやらを!。さあ!、さあ!』
「じゃ、じゃあ、ジャンケンで勝負を決めるってこ」
『いいよ』
「いいのかよ!。ダメ元で言って見るもんだ」
『ふっ、真の王者とは天命すら己の支配下に』
「ジャンケンポン」
『あ』
「あ、勝った」
『………』
「………じゃあ、勝負はついたってことで、帰りますね」
『待て!!』
「な、なんですか、帰らせてください!」
『ふっ………負けたよ。これが敗北ってやつか』
「ど、どうも」
『さあ、私のマスクを剥ぎな』
「いや、いいですよ。とにかく帰らせてください」
『ふっ、ここでは他人の首を持たぬ者は外に出られぬ決まり。敗者に情けはいらぬ。さあ剥ぎな』
「そうなんですか。………じゃあ、ちょっと失礼して」
『時にお前』
「は」
『初めてあった時、お前は私とダンスを所望したな』
「いや、まあ、はい」
『いいだろう』
「は?」
『初めて私のマスクを剥いだ男よ』
「あ、マスク取れた」
『私とダンスをしてくれまいか』
「うわ超ブサイク!。超ブサイク!。超ブサイクじゃん!。なんだよその顔!。このマスクあれば帰れるんですよね。じゃあさようならお元気で」
『………………ふっ、そのマスクは敗者から剥いだものだと言うたものを…早とちりめ』
超ブサイク少女はおもむろに、“自前の”マスクを脱いだ。
『まってえー』
チャンピオンの素顔は、そこそこであったという。
終わり。わけわかんねえ。