微笑シリーズ。究極の選択 | からだに恥をかく体操〜えんぴつみがき〜

微笑シリーズ。究極の選択

『究極の選択って昔流行ったよな』
「うんこ味のカレーとカレー味のうんこ、さあどっちを食べる?、みたいなやつな」
『そうそう、馬鹿みたいな問題だけど悩んじゃうよね。うんこ味のカレーとカレー味のうんこ。お前はどっち?』
「おれは」
『悩むよね、悩むよ。おれあまりに悩むから、ハーフアンドハーフはできないの?って思っちゃう』
「………優柔不断者に優しい日本の外食産業だからね。いや、それは逆にキツいんじゃねえかな」
『いや、カレー味のうんことうんこ味のカレーが混ざったら、うんこカレー味のカレーうんこになるわけだから』
「わけわかんねえよ」
『これを第三の選択という』
「言わねえと思うよ?」
『じゃあ、美人だけど性格が最悪な奴と、ブスだけど性格がめちゃくちゃいい奴、お前はどっちと結婚する?』
「結婚?、結婚かあ、結婚だったら」
『悩むよね、悩むよ、うん。だから、ここで第三の選択をするわけ』
「答えを聞く気ないならおれに問うな!。ていうか、第三の選択肢があるなら究極の選択にならないだろ!」
『これもハーフアンドハーフ理論で謎がとける』
「別に謎ではないだろ。なんだよ、ブスと結婚して美人と不倫するってか」
『そんな発想だからお前は目があった選挙活動中のウグイス嬢に大音量でついつい、キモッ、って言われるんだよ』
「言われたことねえよ!」
『ついね、ウグイス嬢も言わずにいられなかった』
「職務を全うしろよ!」
『お前はそれを恋だと勘違いしてね。投票日にお前はついつい投票用紙に誰々のウグイス嬢なんか書いちゃう』
「おれそんなにキモくねえよ!」
『それを、モテ期にカウントしてるからね』
「生涯で三回しかない貴重なモテ期をそんなので消費したくねえよ」
『まあ、お前に真のモテ期は神様がお前が死ぬ間際に、とんとんとん、と授けてくれるんだけどね』
「死ぬ間際で運命調整してくれるんじゃねえよ!。年末の道路工事かよ!」
『神様もお前にモテ期をもたらすほどヒマじゃないんだよ』
「いやでも」
『あれだから、お前が死ぬ間際に機械的にしょうがなく、モテ期が、とんとんとん、と足早に』
「しょうがなくってなんだよ!。そんな宝くじを連で買ったら必ず300円当たるみたいな救済措置いらねえよ」
『だってお前、ヒヨコの雄雌分別してる人に捨てられる人だからね』
「まあおれ雄だけど!!」
『だから、美人とブスがいるわけだよ』
「ああ」
『だったら、自分の目を潰せばいいわけ』
「なんだその北斗の拳的な発想は。そんな仁星背負ってる奴みたいな選択できるかよ」
『そんなになったおれを好きでいてくれる方と結婚すればいいわけ』
「そいつはもれなく性格のいいブスだけどな!」
『でも、おれは隣にいるやつのことを美人の方だと思ってるから』
「お前が一番最悪な奴だよ!」
『性格がめちゃくちゃいい奴相手なら何やってもオッケーだろ』
「最悪としか言いようがねえ!」
『じゃあさ、生涯で以降これ一本しか見ちゃいけないってなったら、お前はどんなAVを選ぶ?』
「AVか。これ一本ねえ」
『ここで第三の選択です』
「二択問題でもないのに!?」
『やっぱり、そうなると自分で撮るしかないよね』
「まあ、まあなあ」
『今日のお話は、あなたならどんなAVを撮りますか、です』
「その話をしたかったのね。前置きが長いんだよ」
『お前はどんなAVを撮る?』
「えっと、それは生涯これ一本って設定生きてるの?」
『じゃあ生きてるにしよう』
「てきとーか!。そうなってくると、自分好みの女の子と…ハメ撮り」
『はん!』
「うわ、鼻いからせた」
『浮かないなあ、お前はほんとに浮かない』
「浮かないってどういうことだよ」
『きっと宇宙に行っても浮かない』
「浮くわ!。浮くだろ無重力なんだから!。宇宙で浮かないって逆にすごいだろ」
『生涯で一本なんだよ?、自分好みの女とハメ撮りってお前、たくさんAV選び放題の環境の中で選ばれる選択肢だろ』
「そうかなあ」
『たくさんAVが並んでる棚の前であえてそれを選ぶ選択肢だろがい!』
「だろがいってお前」
『こう、マイライブラリーにたくさん様々な趣向のAVが並んで、ってお前はAV長者か!』
「知らねえよ。お前が勝手に言った話だろ」
『そんなねえ、自分のハメ撮りビデオみたいに直接的なもんは飽きるのも早いんだよ。一本しかないんだから飽きちゃったら終わりだよ?』
「まあ、そうかもしれないな。じゃあお前はどんなAVを撮るんだよ」
『だから、エロくない方がいいんだよ』
「は!?」
『エロくないAV。生涯で一本だから』
「エロくないAV?、ブサイクが出てるAVってこと?」
『それはヌけないAVだろ』
「いやまあ確かに」
『あ、お前いま語尾にカニって付けた?』
「付けるか!?、なんだその急なカニ人設定」
『ああ、ごめん。いやちょっと、いままで話してた奴がカニなのかもしれないと思ったら急に怖くなってな』
「わけわかんねえよ」
『だからエロくないAVだよ。エロシーンは一切ない』
「ないの?」
『ないよ。あ、やっぱりそれヤメ。街に定点カメラ置いただけのAV案はヤメ。女の子がエロシーンある』
「うわ、方向転換した」
『箱をね。箱を用意するんですよ。二メートル四方ぐらいの中の様子がわからない箱を』
「箱を」
『そんで、好みのタイプとそんなでもないタイプのふたりの女の子が箱の中に入るわけ』
「好みのタイプふたりじゃダメなのか?」
『ダメに決まってるだろ!』
「怒られた。なんで?」
『それは…まあおいおいわかる。まずふたりが箱に入るわな。いきなり箱に入る。何の説明もなしにいきなり。そしたら箱の中からアンアン聴こえてくる。そんなAVかな』
「カメラはどこにあんの?」
『箱の外に決まってるだろ』
「カメラはずっと箱を映してんの?」
『他に何を映すんだよ』「いやそうだけど、せっかくふたりがやってんだから」
『見えたらそれでおしまいなんだよ!。それに箱の中にふたりしかいないというのはお前が勝手にそう思ってるだけだからね?』
「は?、じゃあ、男がいるとか」
『中に何があるのか、何が行われているのか、それは誰も知らない』
「監督だろお前!」
『監督だって知らないことも多いんだよ。山本晋也監督に至っては、毎回、どんな事件が起ころうと、昼の報道番組で挨拶するタイミングを知らないからね』
「“あ、こんちは”ってやつな。それはタイミングを知っててやってんだろ」
『どんな事件の時でもやるからね』
「どんな事件の時でも」
『たぶん、自分の訃報の時もやるんじゃないかな』
「どんな状況だよ。まあどんなAVを撮るかはわかったけど、ところで、好みのタイプと好みじゃないタイプのふたりを箱に入れるメリットはなんなんだよ」
『だからね、普段は好みじゃないタイプの物音でヌクんだよ』
「好みじゃない方でヌクって、なんで?」
『いわば、好みのタイプはご褒美だからね』
「はあ」
『でもね、好みじゃない方の物音でって言ったけど、おれはどっちの喘ぎ声が好みの子か好みじゃない子か判別できてるわけじゃない。インタビューもなしにいきなり箱に入ってるから。だからおれが勝手に、こっちだ、と決めてるわけ。でもね、本当はそうじゃないかもしれない。そしてそれは永遠に答えはでない。そんな疑心暗鬼。そんな疑心暗鬼を抱えて、日々見るわけ』
「楽しいのかよそんなAV」
『わからないよそれは』
「わからないのかよ」
『ただ、生涯でこれ一本になるわけだから、飽きたら終わりだからね。そう、いまこの微笑シリーズを書いてるおれみたいに、飽きたら終わりだから。終わります』
「終わるのかよ」


終わり。だいたい冒頭の三行ぐらいから飽きてきてたんだよね。最近おれ、自身の性的嗜好を把握でき始めたんだ。パンティの上からまさぐられてるシーンが大好きだということを。見えたら終わりだよ。だって見えたら嗜好じゃなくなって本能スイッチ入っちゃうもん。嗜好って、本能と本能の間に和紙を一枚挟んで、その和紙に本能と本能からにじみ出てくる何かを染み込ませて、浮き出た模様を愛でる行為だと思うんだ。