微笑シリーズ。穴を掘る
『なあ』
「なんだよ」
『ちょっくら、穴があったら入りたい、って心境になってくれよ』
「なるの今から!?、なんでだよ」
『おい、お前うんこ漏らしてるぞ』
「捏造すんな捏造を!、漏らしてねえよ!」
『なあ、穴にお入りよ』
「なんだよその言い方、おれは冬眠拒否してる熊じゃねえんだから」
『冬眠って…出来ればしたくないよな』
「冬眠に食いついちゃったよ」
『だってお前、冬眠だぜ?。冬の生活がキツいので仮死状態になって寝過ごしますってお前、どんだけユートピアだよ』
「は!?」
『あいつらは冬の厳しさを知らない』
「いや、冬の厳しさを遺伝子レベルで知ってるから苦肉の策で冬眠を選んでるんだろ」
『あいつらは甘えてんだよ』
「甘えてはいねえよ」
『なんだよさっきから熊擁護の発言ばかりして!』
「は!?」
『お前さては、熊?』
「ちゃんとおれの目を見て言ってみろよ」
『違う?』
「おれが熊なわけないだろ」
『強がっちゃって』
「強がりでおれは熊だなんて言う奴………いや、いるな。格闘家とかに」
『あれだろ?、お前ほんとは冬眠に失敗して里に降りてきた熊なんだろ?。だから冬眠を擁護してんだろ?』
「童貞のウソじゃねえんだから」
『冬眠ができないから熊社会でのけ者にされ追い出され、しかし、人里で熊の悪口を聞くと黙ってられない、そんな自尊心を』
「面倒くさいんだよねー、面倒くさいんですけどー」
『冬眠に失敗したからって恥ずかしいことはないんだぜ』
「なんなんだよ」
『さあ、穴に入りたくなってきただろ?』
「下手くそ、導入がすごい下手くそ。普通に恥ずかしい話でもするようにしたら良かったのに自己補完で導きやがった」
『穴に入りたくなっただろ?』
「どうしてお前はそんなにおれを穴へ入れたいんだよ!」
『………』
「黙ってんじゃねえ!、言えよ!」
『…穴を』
「穴を?」
『掘りたい』
「は!?」
『穴を掘りたい気分なんです』
「はあ!?」
『無性に穴を掘りたくなる時ってあるじゃないですか』
「ねえよ!、そんなの懲役100年の奴ぐらいだろ」
『いや、おれは懲役100』
「知ってるよ!、穴が掘りたいんだったら勝手に掘ればいいだろ。なんでおれを付き合わすんだよ」
『勝手に掘るってそんな、子供じゃねえんだから』
「うるせえ」
『子供じゃねえんだから、穴を掘る必要性が欲しい』
「女優にとってのヌードか!」
『早く穴に入りたくなれよ。おれが穴を掘ってやるから』
「………先日な、朝、イヤホンしながら駅までの道を歩いてたら、交通整理のおっさんに話しかけられたんだよ。話しかけられたっつってもイヤホンしてるから何を言われたかわからなかったんだけど、わからなかったからおれ、イヤホン外してそのおっさんの近くによってな、なんですか?、って訊いたんだ。そしたらそのおっさん困った顔して、おはようございます、だって」
『ちょっと待って』
「なんだよ」
『お前はイヤホンで何を聴いてたの?』
「なんでもいいだろそこは!」
『…うん、そうだな』
「………まあ、恥ずかしかったなあれは。その道は通勤してる人がたくさんいる道でな。たくさんの人に見られたよ。ちなみにその日以来その道を通らずに、遠回りして駅まで行ってる。ああ、穴があったら入りたい」
『ああ、わかるわかる。そうして人は、限られたルートをより限って行くんだよね』
「同調してないで穴を掘れよ!。早く掘っちまえよ!。してやっただろ穴があったら入りたい話!」
『あ、そうか』
「そうかじゃねえよ」
『わっせわっせ、あ』
「…なんだよ」
『石油が出たらどうしよう』
「出ないから安心して掘れ」
『わっせわっせ、お前さ』
「なんだよ」
『お前は縦穴か横穴どっちが好き?』
「そうだな、どちらかと言えば横穴かな。出入りが楽そうだし、ほらおれ熊でしょって知らねえよ!、縦穴か横穴かなんてそんなの今までの人生で一度たりとも考えたことねえわ!。初めてそれと向き合う機会をいただきありがとうってうるせえ!」
『松葉崩しが好きと』
「体位の話!?」
『さあ、穴が出来た』
「体位の話から穴が出来たって言われてもな」
『よっと』
「ってお前が入るのかよ!」
『なに?』
「なに、じゃねえよ!。穴があったら入りたいのはおれだろ!」
『そんなに入りたいの?、この縦穴に』
「いや、そういうわけじゃ」
『お入りよ』
「お入りよって言いたいだけだろお前」
『お入りよ。この穴はいい穴です』
「穴の良し悪しは知らねえけど!。じゃあまあ、入るけど」
『うん』
「よっ…………」
『………』
「………」
『………』
「………なんか、なんか話せよ」
『………あのさ』
「うん」
『男ふたりで穴に入るって、思った以上に恥ずかしいな』
「まさしく穴があったら入りたい心境だな」
『!!、わっせわっせ』
「おい!、なにやってんだよ!」
『見ればわかるだろ穴掘ってんだよ!』
「いや、穴の中で穴を掘るなよ!」
『お前な、穴の中でさらに穴があったら入りたい気持ちになったらさらなる穴を掘るしかないだろ!』
「でもお前よく考えてみろよ!、その新しく掘った穴でもおれとお前はふたりきりになるんだぞ!」
『そんなの掘ってみないとわからないだろ』
「いやわかるだろ!、縦穴!、縦穴!」
『じゃあなにか!?、そんな堂々巡りをこれからずっと繰り返すとお前は言いたいのか!?』
「そうだよ!、深くなってくだけだろ!」
『なにか!?、このまま穴を掘って行ったらブラジルの村に着いて、その村は穴があったら入りたいという気持ちになり続けている人たちが行き着くユートピアになってると言うのか!?』
「どんな妄想だよ!」
『世界中の後ろめたい奴が』
「日本ならまだしもどうして世界中の人間が穴掘ったらブラジルに着くんだよ!」
『そんなもんお前、たてたてよこよこ丸書いてちょんだ』
「どこで丸書いたお前!」
『ウダウダ言ってねえでお前も掘れ!』
「いやだよ!」
『ああ!、もっと掘らなきゃ、もっと掘らなきゃ、もっと掘らなきゃ、もっと掘らなきゃ』
「こええよ!、なにその強迫観念!?」
『日本が大変な時にこんなブログをさらしてるなんて、恥ずかしい恥ずかしい、もっと掘らなきゃ、もっと掘らなきゃ』
「確かに暗い歌書いてる場合じゃねえ。お前の将来の夢に、みんなのうた、に流れるもんを書きたいことをおれは知ってる!」
『うわあ、そんなことをお前、発表されたら…もっと掘らなきゃもっと掘らなきゃもっと掘らなきゃ』
「ああ…出口があんな遠くに見えら」
……………………………
その後、穴を掘り続けたふたりの消息を知る者はいない。ああ、世間から見てみぬフリをされ、恥ずかしい想いを胸に留める日々。荒れ狂う世間の波しぶきが思った以上にからいぜ。核無き自己保身、核無き自尊心、何かに所属することでしか自らを誇れない世界において、核無き軸のブレを持つふたりは穴に入りやり過ごすしかなかった。しかし社会にシェルターは見つからず、自ら穴を掘ってそこに入ることでしか身を守れなかった。穴を掘って掘って掘って掘って掘って、核無きふたりは地球の核を無きものにして、たどり着いたは遠くも遠く、日本の裏側はブラジルの、アマゾン川流域に佇む穴暮らしのユートピア。その村にはひとりの宣教師がいて、ふたりをあたたかく迎えたという。
終わり。なんだよこれは。将来「みんなのうた」におれの身から出た何かを提供できるようにがんばる!。身から出た何かってなんだよ………
「なんだよ」
『ちょっくら、穴があったら入りたい、って心境になってくれよ』
「なるの今から!?、なんでだよ」
『おい、お前うんこ漏らしてるぞ』
「捏造すんな捏造を!、漏らしてねえよ!」
『なあ、穴にお入りよ』
「なんだよその言い方、おれは冬眠拒否してる熊じゃねえんだから」
『冬眠って…出来ればしたくないよな』
「冬眠に食いついちゃったよ」
『だってお前、冬眠だぜ?。冬の生活がキツいので仮死状態になって寝過ごしますってお前、どんだけユートピアだよ』
「は!?」
『あいつらは冬の厳しさを知らない』
「いや、冬の厳しさを遺伝子レベルで知ってるから苦肉の策で冬眠を選んでるんだろ」
『あいつらは甘えてんだよ』
「甘えてはいねえよ」
『なんだよさっきから熊擁護の発言ばかりして!』
「は!?」
『お前さては、熊?』
「ちゃんとおれの目を見て言ってみろよ」
『違う?』
「おれが熊なわけないだろ」
『強がっちゃって』
「強がりでおれは熊だなんて言う奴………いや、いるな。格闘家とかに」
『あれだろ?、お前ほんとは冬眠に失敗して里に降りてきた熊なんだろ?。だから冬眠を擁護してんだろ?』
「童貞のウソじゃねえんだから」
『冬眠ができないから熊社会でのけ者にされ追い出され、しかし、人里で熊の悪口を聞くと黙ってられない、そんな自尊心を』
「面倒くさいんだよねー、面倒くさいんですけどー」
『冬眠に失敗したからって恥ずかしいことはないんだぜ』
「なんなんだよ」
『さあ、穴に入りたくなってきただろ?』
「下手くそ、導入がすごい下手くそ。普通に恥ずかしい話でもするようにしたら良かったのに自己補完で導きやがった」
『穴に入りたくなっただろ?』
「どうしてお前はそんなにおれを穴へ入れたいんだよ!」
『………』
「黙ってんじゃねえ!、言えよ!」
『…穴を』
「穴を?」
『掘りたい』
「は!?」
『穴を掘りたい気分なんです』
「はあ!?」
『無性に穴を掘りたくなる時ってあるじゃないですか』
「ねえよ!、そんなの懲役100年の奴ぐらいだろ」
『いや、おれは懲役100』
「知ってるよ!、穴が掘りたいんだったら勝手に掘ればいいだろ。なんでおれを付き合わすんだよ」
『勝手に掘るってそんな、子供じゃねえんだから』
「うるせえ」
『子供じゃねえんだから、穴を掘る必要性が欲しい』
「女優にとってのヌードか!」
『早く穴に入りたくなれよ。おれが穴を掘ってやるから』
「………先日な、朝、イヤホンしながら駅までの道を歩いてたら、交通整理のおっさんに話しかけられたんだよ。話しかけられたっつってもイヤホンしてるから何を言われたかわからなかったんだけど、わからなかったからおれ、イヤホン外してそのおっさんの近くによってな、なんですか?、って訊いたんだ。そしたらそのおっさん困った顔して、おはようございます、だって」
『ちょっと待って』
「なんだよ」
『お前はイヤホンで何を聴いてたの?』
「なんでもいいだろそこは!」
『…うん、そうだな』
「………まあ、恥ずかしかったなあれは。その道は通勤してる人がたくさんいる道でな。たくさんの人に見られたよ。ちなみにその日以来その道を通らずに、遠回りして駅まで行ってる。ああ、穴があったら入りたい」
『ああ、わかるわかる。そうして人は、限られたルートをより限って行くんだよね』
「同調してないで穴を掘れよ!。早く掘っちまえよ!。してやっただろ穴があったら入りたい話!」
『あ、そうか』
「そうかじゃねえよ」
『わっせわっせ、あ』
「…なんだよ」
『石油が出たらどうしよう』
「出ないから安心して掘れ」
『わっせわっせ、お前さ』
「なんだよ」
『お前は縦穴か横穴どっちが好き?』
「そうだな、どちらかと言えば横穴かな。出入りが楽そうだし、ほらおれ熊でしょって知らねえよ!、縦穴か横穴かなんてそんなの今までの人生で一度たりとも考えたことねえわ!。初めてそれと向き合う機会をいただきありがとうってうるせえ!」
『松葉崩しが好きと』
「体位の話!?」
『さあ、穴が出来た』
「体位の話から穴が出来たって言われてもな」
『よっと』
「ってお前が入るのかよ!」
『なに?』
「なに、じゃねえよ!。穴があったら入りたいのはおれだろ!」
『そんなに入りたいの?、この縦穴に』
「いや、そういうわけじゃ」
『お入りよ』
「お入りよって言いたいだけだろお前」
『お入りよ。この穴はいい穴です』
「穴の良し悪しは知らねえけど!。じゃあまあ、入るけど」
『うん』
「よっ…………」
『………』
「………」
『………』
「………なんか、なんか話せよ」
『………あのさ』
「うん」
『男ふたりで穴に入るって、思った以上に恥ずかしいな』
「まさしく穴があったら入りたい心境だな」
『!!、わっせわっせ』
「おい!、なにやってんだよ!」
『見ればわかるだろ穴掘ってんだよ!』
「いや、穴の中で穴を掘るなよ!」
『お前な、穴の中でさらに穴があったら入りたい気持ちになったらさらなる穴を掘るしかないだろ!』
「でもお前よく考えてみろよ!、その新しく掘った穴でもおれとお前はふたりきりになるんだぞ!」
『そんなの掘ってみないとわからないだろ』
「いやわかるだろ!、縦穴!、縦穴!」
『じゃあなにか!?、そんな堂々巡りをこれからずっと繰り返すとお前は言いたいのか!?』
「そうだよ!、深くなってくだけだろ!」
『なにか!?、このまま穴を掘って行ったらブラジルの村に着いて、その村は穴があったら入りたいという気持ちになり続けている人たちが行き着くユートピアになってると言うのか!?』
「どんな妄想だよ!」
『世界中の後ろめたい奴が』
「日本ならまだしもどうして世界中の人間が穴掘ったらブラジルに着くんだよ!」
『そんなもんお前、たてたてよこよこ丸書いてちょんだ』
「どこで丸書いたお前!」
『ウダウダ言ってねえでお前も掘れ!』
「いやだよ!」
『ああ!、もっと掘らなきゃ、もっと掘らなきゃ、もっと掘らなきゃ、もっと掘らなきゃ』
「こええよ!、なにその強迫観念!?」
『日本が大変な時にこんなブログをさらしてるなんて、恥ずかしい恥ずかしい、もっと掘らなきゃ、もっと掘らなきゃ』
「確かに暗い歌書いてる場合じゃねえ。お前の将来の夢に、みんなのうた、に流れるもんを書きたいことをおれは知ってる!」
『うわあ、そんなことをお前、発表されたら…もっと掘らなきゃもっと掘らなきゃもっと掘らなきゃ』
「ああ…出口があんな遠くに見えら」
……………………………
その後、穴を掘り続けたふたりの消息を知る者はいない。ああ、世間から見てみぬフリをされ、恥ずかしい想いを胸に留める日々。荒れ狂う世間の波しぶきが思った以上にからいぜ。核無き自己保身、核無き自尊心、何かに所属することでしか自らを誇れない世界において、核無き軸のブレを持つふたりは穴に入りやり過ごすしかなかった。しかし社会にシェルターは見つからず、自ら穴を掘ってそこに入ることでしか身を守れなかった。穴を掘って掘って掘って掘って掘って、核無きふたりは地球の核を無きものにして、たどり着いたは遠くも遠く、日本の裏側はブラジルの、アマゾン川流域に佇む穴暮らしのユートピア。その村にはひとりの宣教師がいて、ふたりをあたたかく迎えたという。
終わり。なんだよこれは。将来「みんなのうた」におれの身から出た何かを提供できるようにがんばる!。身から出た何かってなんだよ………