微笑シリーズ。NASAが新開発した~~~シリーズ。あまりに寒い夜だから
そうだロシアに行こう♪
白い大地シベリアへ♪
悲しくなんかないからね♪
列車が雪をかき分けてくよ♪
そうだロシアに行こう♪
白い大地シベリアへ♪
そうだ白くなってしまおう♪
春の遠い国へ行こう♪
アヴリルは歌をうたうのが好きな少女だったが、ふたぎぬずりだった。
夕食前の村民会議が終わると、外で待ちぼうけだったアヴリルは、ととと、と村の集会所から出てきた村長の元へかけて行った。そんなアヴリルを目につけ、村民達は足早に各々の家へと入って行った。アヴリルがふたぎぬずりだからだ。もう春だというのに、ひどく冷える夜だった。
「村長さん」
厚手の手袋に、トウバヤカシとロビウサギの皮を集めて作った小綺麗な耳当てをつけた冬装束のアヴリルが、もやもやと白い息を吐きながら言った。
村長は、嫌だな、と胸の奥で思いながらも、他の村民の手前、耳を貸すことにした。
「やあアヴリル、とてもかわいい耳当てですね。とてもかわいい手袋ですね」
そう言われた少女アヴリルは、幼い整った顔をどちゃりと崩して、はにかんだ。
「何か用かな?。あいにく、私は忙しくて、あまり長い時間は取れないが」
ふたぎぬずりのアヴリルは、喜色満面の笑顔なのに死んだ魚のような目をした村長のことをなんとも思わない。みんな、村人達はみな、自分と話をする時にそんな顔をするから。
「私の歌を聴いてください」
そんなふたぎぬずりだから、村長の遠回りした拒絶も意に介さない。
「ああ、聴かせておくれ」
村長のため息を前奏に、ふたぎぬずりのアヴリルは歌い始めた。
星のきれいな夜だよ♪
遠くで誰かが死んだんだ♪
月の明るい夜だから♪
明日はきっと晴れるでしょう♪
白くて冷たい雪が降ったよ♪
誰かの涙が大地にかえって♪
白くて冷たい雪が降ったよ♪
悲しい色ねと人は云ったよ♪
白くて冷たい雪が降るまで♪
誰かの涙はお空に溜まって♪
雨になったらかわいそうでしょ♪
祝福されていないでしょ♪
そうだロシアに行こう♪
白くなってしまおうよ♪
そうだロシアに行こう♪
春の遠い国へ行こう♪
朗々と歌い上げたアヴリルは、なぜか涙をその悲しい瞳から幾筋も流した。
聴き終えた村長はコートの裾を何度か払うと、
「とても素晴らしい歌だね。しかし、明日は晴れると言って起きながら、次に、雪が降ったとは、つまりどういうことかね?」
と、無粋に論理的な質問をした。
アヴリルは、質問の意味がわからないといったような、少し小首をかしげて不思議そうに村長の顔を覗きながら、こう答えた。
「村長さん。あなたの耳には届かないのでしょうか。青い空にこそ響く、悲しい白くて冷たい音が」
村長はアヴリルの返答を、バカにされた、と捉えた。
「YO!、ディスってんの!?、アヴリル、俺のことディスってんの!?、へえ、そんならかましちゃうよ!?」
頬を朱に染めた村長はそう言うと、リズムを刻み始めた。
俺は戦中生まれの元少年♪
残された余命はあと三年♪
俺は戦中生まれの元少年♪
残された余命はあと三年♪
イェー♪
ヒップホップグループ「村」のカリスマMC「村長」(御年78)による軽快なラップが、暗い夜を引き裂き、場末のポップアイドル「ふたぎぬずり」のアヴリルに突き刺さる。
一年、ただただ無闇に年月、重ねる厚みも無く無駄に過ごし♪
これでいいのか俺の人生、残された余命はあと二年イェー♪
二年、探してく生きてく理由、暗中模索するかげろうの如く♪
テクテクテクテク歩く人生、残された余命はあと一年イェー♪
三年、タイムリミット近づく日々を、怯えながらもかっこつけるYO♪
ふとしたきっかけ出逢った少女、あのころ想えば逃す手はねえ♪
漆黒の闇夜を老人が切り裂く。それはシベリアブリザードをも寄せ付けぬだろう圧巻のパフォーマンスだった。
生まれてきた時代に罪はない♪
あのころみんな童貞だったかい♪
生きてきた恥を責める人はない♪
この年になってやっと気がついた♪
青春時代が今、やってきた♪
老人の刻むライムは、「村」と「ふたぎぬずり」との間に長年の対立を醸し出していた、音楽性の違い、という万能の垣根を越え、アヴリルの脳髄に突き刺さる。
街はピロートーク、俺はホンキートンク、初めてのナンパでファッキンナイト♪
街はピロートーク、俺は超本気、歯茎で攻めるぜジェリービーンズ♪
最期に一発、ぶっかけてやる、いきかけた老人のファッキンナイト♪
俺のモンキーダンス、舐めるジェリービーンズ、枕詞でオトすぜ「お茶しない?」イェー♪
「お茶しない?」イェー♪
歌い終わると村長は、青少年保護条例に違反したかどでポリスに牽き立てられていった。村長は獄中で寂しく息をひきとったという。
村長の最期の言葉はこうだ。
「ハメるつもりがハメられたZE!!」
こうして、長年のライバルだったヒップホップグループ「村」を壊滅させたアヴリルは、ポップアイドルとして確固たる地位を築いていったという。
終わり。うん、右往左往した結果、途中で放り投げた様子が手に取るようにわかるね。ものすごい勢いで失速してった。やる気が逆噴射してったわ。
ミュージカル形式で進行しようとしたんだけど、そうするともれなく長大なものになっちゃうことに気がついたのさ。
白い大地シベリアへ♪
悲しくなんかないからね♪
列車が雪をかき分けてくよ♪
そうだロシアに行こう♪
白い大地シベリアへ♪
そうだ白くなってしまおう♪
春の遠い国へ行こう♪
アヴリルは歌をうたうのが好きな少女だったが、ふたぎぬずりだった。
夕食前の村民会議が終わると、外で待ちぼうけだったアヴリルは、ととと、と村の集会所から出てきた村長の元へかけて行った。そんなアヴリルを目につけ、村民達は足早に各々の家へと入って行った。アヴリルがふたぎぬずりだからだ。もう春だというのに、ひどく冷える夜だった。
「村長さん」
厚手の手袋に、トウバヤカシとロビウサギの皮を集めて作った小綺麗な耳当てをつけた冬装束のアヴリルが、もやもやと白い息を吐きながら言った。
村長は、嫌だな、と胸の奥で思いながらも、他の村民の手前、耳を貸すことにした。
「やあアヴリル、とてもかわいい耳当てですね。とてもかわいい手袋ですね」
そう言われた少女アヴリルは、幼い整った顔をどちゃりと崩して、はにかんだ。
「何か用かな?。あいにく、私は忙しくて、あまり長い時間は取れないが」
ふたぎぬずりのアヴリルは、喜色満面の笑顔なのに死んだ魚のような目をした村長のことをなんとも思わない。みんな、村人達はみな、自分と話をする時にそんな顔をするから。
「私の歌を聴いてください」
そんなふたぎぬずりだから、村長の遠回りした拒絶も意に介さない。
「ああ、聴かせておくれ」
村長のため息を前奏に、ふたぎぬずりのアヴリルは歌い始めた。
星のきれいな夜だよ♪
遠くで誰かが死んだんだ♪
月の明るい夜だから♪
明日はきっと晴れるでしょう♪
白くて冷たい雪が降ったよ♪
誰かの涙が大地にかえって♪
白くて冷たい雪が降ったよ♪
悲しい色ねと人は云ったよ♪
白くて冷たい雪が降るまで♪
誰かの涙はお空に溜まって♪
雨になったらかわいそうでしょ♪
祝福されていないでしょ♪
そうだロシアに行こう♪
白くなってしまおうよ♪
そうだロシアに行こう♪
春の遠い国へ行こう♪
朗々と歌い上げたアヴリルは、なぜか涙をその悲しい瞳から幾筋も流した。
聴き終えた村長はコートの裾を何度か払うと、
「とても素晴らしい歌だね。しかし、明日は晴れると言って起きながら、次に、雪が降ったとは、つまりどういうことかね?」
と、無粋に論理的な質問をした。
アヴリルは、質問の意味がわからないといったような、少し小首をかしげて不思議そうに村長の顔を覗きながら、こう答えた。
「村長さん。あなたの耳には届かないのでしょうか。青い空にこそ響く、悲しい白くて冷たい音が」
村長はアヴリルの返答を、バカにされた、と捉えた。
「YO!、ディスってんの!?、アヴリル、俺のことディスってんの!?、へえ、そんならかましちゃうよ!?」
頬を朱に染めた村長はそう言うと、リズムを刻み始めた。
俺は戦中生まれの元少年♪
残された余命はあと三年♪
俺は戦中生まれの元少年♪
残された余命はあと三年♪
イェー♪
ヒップホップグループ「村」のカリスマMC「村長」(御年78)による軽快なラップが、暗い夜を引き裂き、場末のポップアイドル「ふたぎぬずり」のアヴリルに突き刺さる。
一年、ただただ無闇に年月、重ねる厚みも無く無駄に過ごし♪
これでいいのか俺の人生、残された余命はあと二年イェー♪
二年、探してく生きてく理由、暗中模索するかげろうの如く♪
テクテクテクテク歩く人生、残された余命はあと一年イェー♪
三年、タイムリミット近づく日々を、怯えながらもかっこつけるYO♪
ふとしたきっかけ出逢った少女、あのころ想えば逃す手はねえ♪
漆黒の闇夜を老人が切り裂く。それはシベリアブリザードをも寄せ付けぬだろう圧巻のパフォーマンスだった。
生まれてきた時代に罪はない♪
あのころみんな童貞だったかい♪
生きてきた恥を責める人はない♪
この年になってやっと気がついた♪
青春時代が今、やってきた♪
老人の刻むライムは、「村」と「ふたぎぬずり」との間に長年の対立を醸し出していた、音楽性の違い、という万能の垣根を越え、アヴリルの脳髄に突き刺さる。
街はピロートーク、俺はホンキートンク、初めてのナンパでファッキンナイト♪
街はピロートーク、俺は超本気、歯茎で攻めるぜジェリービーンズ♪
最期に一発、ぶっかけてやる、いきかけた老人のファッキンナイト♪
俺のモンキーダンス、舐めるジェリービーンズ、枕詞でオトすぜ「お茶しない?」イェー♪
「お茶しない?」イェー♪
歌い終わると村長は、青少年保護条例に違反したかどでポリスに牽き立てられていった。村長は獄中で寂しく息をひきとったという。
村長の最期の言葉はこうだ。
「ハメるつもりがハメられたZE!!」
こうして、長年のライバルだったヒップホップグループ「村」を壊滅させたアヴリルは、ポップアイドルとして確固たる地位を築いていったという。
終わり。うん、右往左往した結果、途中で放り投げた様子が手に取るようにわかるね。ものすごい勢いで失速してった。やる気が逆噴射してったわ。
ミュージカル形式で進行しようとしたんだけど、そうするともれなく長大なものになっちゃうことに気がついたのさ。