ふと思い出したこと
小さい頃、餃子の王将に命救われたことあるわ。夏の暑い日に迷子になってね。友達とさ、チャリンコで行けるとこまで行ってやろうぜ、なんて出かけたらまんまと迷子になってね。
パニクっちゃってさ。もう友達とプリズンブレイク並みの仲違いなんかしちゃったり、プリズンブレイク並みの電撃的和解をしたりさ。迷子の不安と恐怖に追い討ちをかけて、おれたち、お金なんか持っちゃいなかったんだよね。迷子になる予定なかったからさ。夏の暑い日に、なんも飲めない。知らない土地で、公園もデパートも見つからなくてさ、疲労も重なり、頭がガンガン痛み出した。工業地帯に入っちゃって真横をトラックが走り抜けてくし、ペダルをこげどもこげども似たような町並みの見知らぬ風景が続き、時間もどんどん過ぎていった。おれたちの不安はやがて限界に達した。もうなりふり構っていられない。おれたちは“飲食店”に入ることにした。それは今回の冒険が親にバレて怒られる可能性を秘めているのもさることながら、気分は無銭飲食のそれだった。事情を話し、帰り道を訊くついでにあわよくばタダでジュース類を頂いてさよならしようと計画した。今考えれば相当おかしいが、道行く人に道を訊いたり交番の場所訊いたりすりゃいいものを、おれたちはパニクっていたんだ。とにかく帰りたい。帰る為には水分がいる。疲れてる体を休めたい。そのふたつ
が結びついて、おれたちはそうするしか考えが及ばなかった。
何軒か飲食店の前をあーだこーだ言いながら通り過ぎた。やってやろうと決めてもいざとなると無銭飲食する勇気がなかったからだ。まるで銀行強盗に手を染める前の犯人の心理だ。今のおれなら確実にコンビニでトリスを買ってラッパ飲みする心理状態だった。
次の店で必ず実行する。体力までも限界にさしかかり、おれたちは砂漠でオアシスを探すキャラバンのようにペダルをこいだ。
そして、おれたちは餃子の王将に救われたんだ。物珍しさそうにおれたちの話を聞くバイトの兄ちゃんは、親切に帰り道を教えてくれて、しょうがねえなと、図々しくもリクエストしたお冷やとコーラを出してくれた。コーラはもちろんおごりだ。大袈裟かもしれないが、おれたちの事実として、おれたちは餃子の王将に命を救われたんだ。
厚く厚く礼を述べ、店をあとにしたおれたちはまたチャリンコに乗った。エネルギーと十分な水分の補給、休憩、なにより迷子からの解放、おれたちはとてつもない幸福に包まれ、ナチュラルハイのままにチャリンコをこぐこと一時間、地元に帰ることができた。バイバイも言わず、その友達とは勝手知ったる道の途中で別れた。また仲違いしたわけじゃない。ふたりして、今のおれたちに言葉はいらねえ、後ろ手で二、三度手を振るような、そんなハードボイルドなバイバイだった。
我が家が見えると少しだけいつもより頼もしく見えた。自転車からおりると膝がガクガク震えた。疲れと興奮、そして安心からきた脚の震えだった。
家に入ると母親が夕飯の準備をしていた。おれはその匂いを嗅いだ時、我が鼻を疑ったことを強く覚えている。
そう、忘れもしないその日のおかずは、
トンカツ
だった。
ふとそんなことを思い出した今日、おれは思い出のトンカツを作って食べたって話。王将?、ああ、食後にコーラ飲んだよ。コカ・コーラゼロ飲んだよゼロ。黒いやつ。うん、雪積もってるねー。おやすみ。
パニクっちゃってさ。もう友達とプリズンブレイク並みの仲違いなんかしちゃったり、プリズンブレイク並みの電撃的和解をしたりさ。迷子の不安と恐怖に追い討ちをかけて、おれたち、お金なんか持っちゃいなかったんだよね。迷子になる予定なかったからさ。夏の暑い日に、なんも飲めない。知らない土地で、公園もデパートも見つからなくてさ、疲労も重なり、頭がガンガン痛み出した。工業地帯に入っちゃって真横をトラックが走り抜けてくし、ペダルをこげどもこげども似たような町並みの見知らぬ風景が続き、時間もどんどん過ぎていった。おれたちの不安はやがて限界に達した。もうなりふり構っていられない。おれたちは“飲食店”に入ることにした。それは今回の冒険が親にバレて怒られる可能性を秘めているのもさることながら、気分は無銭飲食のそれだった。事情を話し、帰り道を訊くついでにあわよくばタダでジュース類を頂いてさよならしようと計画した。今考えれば相当おかしいが、道行く人に道を訊いたり交番の場所訊いたりすりゃいいものを、おれたちはパニクっていたんだ。とにかく帰りたい。帰る為には水分がいる。疲れてる体を休めたい。そのふたつ
が結びついて、おれたちはそうするしか考えが及ばなかった。
何軒か飲食店の前をあーだこーだ言いながら通り過ぎた。やってやろうと決めてもいざとなると無銭飲食する勇気がなかったからだ。まるで銀行強盗に手を染める前の犯人の心理だ。今のおれなら確実にコンビニでトリスを買ってラッパ飲みする心理状態だった。
次の店で必ず実行する。体力までも限界にさしかかり、おれたちは砂漠でオアシスを探すキャラバンのようにペダルをこいだ。
そして、おれたちは餃子の王将に救われたんだ。物珍しさそうにおれたちの話を聞くバイトの兄ちゃんは、親切に帰り道を教えてくれて、しょうがねえなと、図々しくもリクエストしたお冷やとコーラを出してくれた。コーラはもちろんおごりだ。大袈裟かもしれないが、おれたちの事実として、おれたちは餃子の王将に命を救われたんだ。
厚く厚く礼を述べ、店をあとにしたおれたちはまたチャリンコに乗った。エネルギーと十分な水分の補給、休憩、なにより迷子からの解放、おれたちはとてつもない幸福に包まれ、ナチュラルハイのままにチャリンコをこぐこと一時間、地元に帰ることができた。バイバイも言わず、その友達とは勝手知ったる道の途中で別れた。また仲違いしたわけじゃない。ふたりして、今のおれたちに言葉はいらねえ、後ろ手で二、三度手を振るような、そんなハードボイルドなバイバイだった。
我が家が見えると少しだけいつもより頼もしく見えた。自転車からおりると膝がガクガク震えた。疲れと興奮、そして安心からきた脚の震えだった。
家に入ると母親が夕飯の準備をしていた。おれはその匂いを嗅いだ時、我が鼻を疑ったことを強く覚えている。
そう、忘れもしないその日のおかずは、
トンカツ
だった。
ふとそんなことを思い出した今日、おれは思い出のトンカツを作って食べたって話。王将?、ああ、食後にコーラ飲んだよ。コカ・コーラゼロ飲んだよゼロ。黒いやつ。うん、雪積もってるねー。おやすみ。