企画力 | からだに恥をかく体操〜えんぴつみがき〜

企画力

むかーし、受験を控えたおれは下見を兼ね、母親に連れられて志望校の文化祭に行ったんだ。
文化祭にはさ、必ずあるんだわ。お化け屋敷が。
クラスを暗幕で覆い、精一杯おどろおどろしく装飾された教室。そんなエンターテイメント施設、入るわなそりゃ。おれは母親と一緒に入ったんだ。
入室料を払い、おれたちは中に入った。おれたち親子には、ひとり案内係の生徒がついた。暗闇の中おれたちの足下を照らす彼がおれたちの後ろから誘導する形だった。
狭い教室を蛇腹折りの形に仕切ったお化け屋敷。単調な通路をくねくねと歩いていると、お化け屋敷だから人を驚かす細工がしてある。曲がり角などで、時折、ドン、っと後ろから音がする。曲がり角の三角コーナーにはお化けマスクなどが設置してあり、そこで、ドン、と何かを叩いたかのような音が鳴る。暗闇の中、突然、ドン、と鳴る。音が、鳴る。
しかし細工はそれだけで、お化けのひとりも出ることなく、おれと母親はお化け屋敷の出口にたどり着いた。
案内係の生徒ニヤリとして言った。
「今までの道中の仕掛けは全部ぼくがやってたんですよ」
おれたち親子は愛想笑いを浮かべて、へー、などと言い感嘆を装ったが内心……………………。


木を見て森を見ず、だよね。木を見て森を見なかったよね。自分たちばかり見てお化け屋敷というエンターテイメント全体を見なかったよね。こういう自己満足な企画をたててはいけないねって話。まあその学校ってのは男子校でさ。男子校のお化け屋敷っつったら親子連れ向きな施設じゃないからしょうがないけどね。真面目だけど調子のりタイプの生徒がパンツ見るための施設だからあれは。