宅配屋と喫茶店(9)
ジュディの作業はさすが、ばっちり、と断言したように、当たり障りなくスムーズなものだった。
ただ、はじめて不在票を書いたとき、ジュディは祐平が「あ」っという前に扉の郵便口に入れた。それを見た祐平は、
(所長から習ったと言ったな。ましてや作家、あとでなに書かれることやら。さて、言うべきか言わざるべきか。)
と、逡巡したのち、やはり言うことにした。
「山下さん、不在票は、こう不在票をたたんで、扉に挟んでくれた方がいいです」
そう言って祐平は取っ手横の扉と壁の間をなぞった。
「あ、はい。…でも所長はこうだと言ってたけど」
注意という注意ではないが祐平にそう言われたジュディは、いきなりミスをしてしまったかと、少ししゅんとなった。だがすぐに子供の言い訳めいたことを言い、持ち直した。
「本来はそうなんですけど、そっちに入れてしまうと不在票の存在に気付かれない場合があるのです」
外から見て目に付く場所に宅配の不在票がある家とは、すなわち現時点で家人がひとりもいないということを示しているわけで、防犯上大変よろしくないというのが祐平が言った、本来、の意味だ。しかし祐平が言ったように、郵便口に入れてしまうと不在票の存在に気付かれない場合がある。そのためにこの中央ハイツのような集合住宅で建物玄関がオートロックになっていない場所の場合、小さく三つ折りにして取っ手近くの扉の脇にはさむ。扉を開けようとする者の目に付くし、扉を開けたら落ちるからより目に付くという寸法だ。オートロック玄関のマンションでは、複数宅配物がある場合一度中に入ったらそのまま建物内を回るのだが、帰りしなに建物入口にあるポストに不在票を入れる。目に付く郵便口にあっかんべーと舌を出すよう不在票を挟まないのがせめてもの情け、だ。
「本来なら、ねえ」
ジュディはもったいぶった言い方をした。
「あ、秘密ですよこれは」
祐平は秘密の共有を持ちかけた。ジュディはわかったと頷いた。
ジュディに梨田という助手がいることと祐平が階段を足繁く上下した結果、中央ハイツの宅配は祐平が予想していたよりも5分ばかり早く終わった。
「フンコロガシみたいね」
とは、台車を押して歩いたジュディの感想。
機械の操作もジュディはもうばっちりだ。
「結構残るもんね。土曜日だっつうのにみんなどこ行ってんのかしら」
ジュディはそう言いながら不在だった宅配物をトラックに積みなおした。不在のために持ち帰った宅配物は中央ハイツ全体の3分の1ほどに及んだ。これでも平日よりさばけたほうだ。
「この伝票すごいですね」
「はい?」
祐平がいざ次の場所へと走り出そうとした車内で梨田が言った。
「ほら、ちゃんと上から順番にならんでて、すごくやりやすかったですもんね。やはりちゃんと計算してならべてるんですか?」
(当たり前だろ梨田よ。見てなかったのか営業所でのおれの手さばきを。)
「はは、まあ慣れですよ」
祐平はバック厳禁とシールが貼られたトラックを少しバックさせ、体勢を整えると走り出した。決まり通りなるべくバックはしない祐平だが、中央ハイツの宅配便駐車エリアは袋小路になっているのでしょうがない。
「あの、早速で悪いですけど、先ほどいただいたみかんって今食べてもいいですか?」
梨田が申し訳なさそうに、しかしずうずうしく言った。
「いいですよ。もう次に着きますけど」
「いいよ梨田くん。あたしがひとりで運びますからね」
ジュディは所長から渡されたこのエリアの詳細な地図を拡大コピーしたものを熱心に見ながら言った。
「すいません。ちょっとお腹減っちゃって」
(梨田。今のはジュディの皮肉というやつではないかい?。)
みかんを手にすると梨田は、
「あ、先生もどうですか?」
と言った。
(車酔いするやつにみかん食わしてどうすんだ梨田。)
「いらない」
「そうですか。おいしそうですよ?」
(そういう問題じゃねえ。)
「いいよ」
「愛媛産ですよ?」
(だからそういう問題じゃねえってば。)
「いいよって。あんたひとりで食いなよ」
「そうですか。あ、高窪さんに剥きましょうか?」
「さあ、着きました。山下さんはそこの赤い屋根の家とその隣とその向かいの家です」
祐平は梨田に対し聞こえていないふりをした。
ジュディは地図を見ながらなにやら頷いて、
「ずいぶん変な順番で回るのねえ」
と言った。
「ああ、まずは時間指定された荷物を優先しますからね。とりあえず時間指定を回りきるまでは時間指定のついでに近くの普通の荷物を配る感じです。最初のあそこは特別です」
「なるほど、そう言えば時間指定宅配なんてものがあったっけ」
「ええ、大変なんですよ時間指定を破っちゃうと」
祐平は少し前に、バイトの沖田がいくつかの時間指定宅配の存在に気付かず、頭を下げて回ったことを話そうとしたが、時間がないことに気がついてやめた。
「では、お願いします。伝票は一応上から順番になってると思いますが、確認をしてくださいね」
「ええ、梨田く…あんたなに呑気にみかんほおばってんのよ」
「ほえ?」
「間抜けな声出してんじゃないよまったく、荷物取ってよ」
「でも先生、僕は基本手伝わないと」
「臨機応変にものを考えなさいよ。使えるもんは親でも使う、でしょ。せっかく荷台にいるんだから。あんたちょっと大丈夫かね」
(それはそうだぞ梨田。)
「はあ、わかりました。えっと」
「ああ、その奥にある一番上の花と、横のピンクのお歳暮とそこの小さな青いやつですね」
そう言うと祐平は車から降り、トラックの後ろに回ると観音開きのドアを開け、自分の配る宅配物を取ると駆けていった。
「へえ、てきぱきと動くもんだねえ」
「いやあすごいですね。シミュレーション通りに、とでも言いますか」
「さあこっちものんびりしてる暇はない。あんたその持ちづらそうな花持って」
「はい。でもこれよりピンクのやつのが重いですよ?。油かなこれ」
「あんたはあたしに無駄話に油売ってる暇はないってどうしようもないこと言わせたいの?」
「すいません」
祐平がトラックに戻ると、ジュディがご立腹だった。
「どういうことこれ、日付も時間も指定しておいて留守ってどういうことよ」
どうやらそういう事情らしい。
「人としてどうかと思うわ」
「青いやつですか?」
「ええ」
「高橋さんか…この時間なら普段はいるんですけどねえ」
「なぜこの指定された日に限っ………こういうことはよくあるんですか?」
ジュディは少し冷静になった。というよりも、立腹はただのポーズだ。
「ありますよ。さすがに、よく、ではないですけど」
本当はよくあることだったが、面倒くさくなりそうだったので祐平はそう言った。
「高窪さん、次はどの荷物ですか?」
梨田がすっからかんといった具合に言った。
(伝票見ろよ!。上から順番だっつったろバカ!。)
「次は僕から見て右端の上のやつらです」
「わかりました」
(わかりましたじゃねえよ。)
祐平はエンジンをかけ、トラックは走り出した。
「あ、あと、高窪さん、不在だった荷物はどこらへんに置けばいいですかね?」
「…わかりやすい場所に置いといてください」
ジュディはまた地図を見ていた。
すぐに次の場所に着くと、ジュディ達に指示を出し、祐平は走り出した。いいリズムだ。ジュディ達がいなければ。
この場所の宅配物で祐平はジュディに対し些細ないじわるをしかけていた。別に悪意の賜物ではなく、他愛ないアイデアで、これは話のタネになるだろうなと思い、思いついちゃったならやるよりしょうがない、としかけたいたずらだった。
ジュディの訪れるアパートは四階建てのワンフロアツールームのちびた鉛筆アパートだが、その玄関前にはルーム番号も表札も出されてなく、はじめて訪れた人は2択を迫られる不親切なアパートだった。もちろん、今はどこに誰が住んでいるのかを把握している祐平だが、バイトで訪れたときには2択を迫られた。意を決し、山勘でチャイムを押そうとしたときに、たまたま同業他社のプロが現れて、訊くことにより事なきを得た過去があった。
いわば通過儀礼だ、祐平はハンコをもらいながら心のなかでほくそ笑んだ。
祐平がトラックに戻ると、梨田がいるだけで、まだジュディは帰っていなかった。
(悩め、悩め、悩み抜けジュディ。そしてチャイムを間違えろ。)
祐平は伝票の整理や梨田への指示をしながらジュディがどういう風な面もちで帰ってくるか想像し、梨田に見られないようニヤニヤした。
「あ、きたきた」
梨田が言う。ジュディが帰ってきた。手には伝票と機械だけで、宅配物は抱えていない。顔も、普通、といった具合だった。
「変なアパートもあるんだねえ」
開口一番、ジュディはどこか嬉しそうにそう言った。
「変な、ですか?、あ、しまった。大丈夫でしたか?」
しめしめと思いながら、祐平は白々しく言った。
「大丈夫。アパートの入口で朝にあったバイト君にあってねえ。ここは注意してくださいって」
「ああ、沖田君に教えてもらったんですか。よかった。いやすいませんでした」
(沖田いつのまに!。裏に停めてやがったな。)
「いいのよ。だけどあんな風な建物ってよくあるの?」
「ここいらではあそこぐらいですね」
「ふうん。あそこぐらいなんだ。なるほどねえ」ジュディは、本当は部屋の前まで行き着き、しばし2択に悩んだあと、一旦トラックに戻ろうとした時にアパートの入口で沖田にあったのだった。
「え?、なんですかふたりで」
ひとり会話に置いてけぼりの梨田を無視する形で、ジュディが、
「さあ次に行きましょう」
と言った。
祐平はジュディがいじわるされたことに薄々感づいたことに気がついていなかった。
愚策を弄する者は往々にして、相手の心理を読むにあたり自分の策に都合の良い方向へしか読めない。
続
ただ、はじめて不在票を書いたとき、ジュディは祐平が「あ」っという前に扉の郵便口に入れた。それを見た祐平は、
(所長から習ったと言ったな。ましてや作家、あとでなに書かれることやら。さて、言うべきか言わざるべきか。)
と、逡巡したのち、やはり言うことにした。
「山下さん、不在票は、こう不在票をたたんで、扉に挟んでくれた方がいいです」
そう言って祐平は取っ手横の扉と壁の間をなぞった。
「あ、はい。…でも所長はこうだと言ってたけど」
注意という注意ではないが祐平にそう言われたジュディは、いきなりミスをしてしまったかと、少ししゅんとなった。だがすぐに子供の言い訳めいたことを言い、持ち直した。
「本来はそうなんですけど、そっちに入れてしまうと不在票の存在に気付かれない場合があるのです」
外から見て目に付く場所に宅配の不在票がある家とは、すなわち現時点で家人がひとりもいないということを示しているわけで、防犯上大変よろしくないというのが祐平が言った、本来、の意味だ。しかし祐平が言ったように、郵便口に入れてしまうと不在票の存在に気付かれない場合がある。そのためにこの中央ハイツのような集合住宅で建物玄関がオートロックになっていない場所の場合、小さく三つ折りにして取っ手近くの扉の脇にはさむ。扉を開けようとする者の目に付くし、扉を開けたら落ちるからより目に付くという寸法だ。オートロック玄関のマンションでは、複数宅配物がある場合一度中に入ったらそのまま建物内を回るのだが、帰りしなに建物入口にあるポストに不在票を入れる。目に付く郵便口にあっかんべーと舌を出すよう不在票を挟まないのがせめてもの情け、だ。
「本来なら、ねえ」
ジュディはもったいぶった言い方をした。
「あ、秘密ですよこれは」
祐平は秘密の共有を持ちかけた。ジュディはわかったと頷いた。
ジュディに梨田という助手がいることと祐平が階段を足繁く上下した結果、中央ハイツの宅配は祐平が予想していたよりも5分ばかり早く終わった。
「フンコロガシみたいね」
とは、台車を押して歩いたジュディの感想。
機械の操作もジュディはもうばっちりだ。
「結構残るもんね。土曜日だっつうのにみんなどこ行ってんのかしら」
ジュディはそう言いながら不在だった宅配物をトラックに積みなおした。不在のために持ち帰った宅配物は中央ハイツ全体の3分の1ほどに及んだ。これでも平日よりさばけたほうだ。
「この伝票すごいですね」
「はい?」
祐平がいざ次の場所へと走り出そうとした車内で梨田が言った。
「ほら、ちゃんと上から順番にならんでて、すごくやりやすかったですもんね。やはりちゃんと計算してならべてるんですか?」
(当たり前だろ梨田よ。見てなかったのか営業所でのおれの手さばきを。)
「はは、まあ慣れですよ」
祐平はバック厳禁とシールが貼られたトラックを少しバックさせ、体勢を整えると走り出した。決まり通りなるべくバックはしない祐平だが、中央ハイツの宅配便駐車エリアは袋小路になっているのでしょうがない。
「あの、早速で悪いですけど、先ほどいただいたみかんって今食べてもいいですか?」
梨田が申し訳なさそうに、しかしずうずうしく言った。
「いいですよ。もう次に着きますけど」
「いいよ梨田くん。あたしがひとりで運びますからね」
ジュディは所長から渡されたこのエリアの詳細な地図を拡大コピーしたものを熱心に見ながら言った。
「すいません。ちょっとお腹減っちゃって」
(梨田。今のはジュディの皮肉というやつではないかい?。)
みかんを手にすると梨田は、
「あ、先生もどうですか?」
と言った。
(車酔いするやつにみかん食わしてどうすんだ梨田。)
「いらない」
「そうですか。おいしそうですよ?」
(そういう問題じゃねえ。)
「いいよ」
「愛媛産ですよ?」
(だからそういう問題じゃねえってば。)
「いいよって。あんたひとりで食いなよ」
「そうですか。あ、高窪さんに剥きましょうか?」
「さあ、着きました。山下さんはそこの赤い屋根の家とその隣とその向かいの家です」
祐平は梨田に対し聞こえていないふりをした。
ジュディは地図を見ながらなにやら頷いて、
「ずいぶん変な順番で回るのねえ」
と言った。
「ああ、まずは時間指定された荷物を優先しますからね。とりあえず時間指定を回りきるまでは時間指定のついでに近くの普通の荷物を配る感じです。最初のあそこは特別です」
「なるほど、そう言えば時間指定宅配なんてものがあったっけ」
「ええ、大変なんですよ時間指定を破っちゃうと」
祐平は少し前に、バイトの沖田がいくつかの時間指定宅配の存在に気付かず、頭を下げて回ったことを話そうとしたが、時間がないことに気がついてやめた。
「では、お願いします。伝票は一応上から順番になってると思いますが、確認をしてくださいね」
「ええ、梨田く…あんたなに呑気にみかんほおばってんのよ」
「ほえ?」
「間抜けな声出してんじゃないよまったく、荷物取ってよ」
「でも先生、僕は基本手伝わないと」
「臨機応変にものを考えなさいよ。使えるもんは親でも使う、でしょ。せっかく荷台にいるんだから。あんたちょっと大丈夫かね」
(それはそうだぞ梨田。)
「はあ、わかりました。えっと」
「ああ、その奥にある一番上の花と、横のピンクのお歳暮とそこの小さな青いやつですね」
そう言うと祐平は車から降り、トラックの後ろに回ると観音開きのドアを開け、自分の配る宅配物を取ると駆けていった。
「へえ、てきぱきと動くもんだねえ」
「いやあすごいですね。シミュレーション通りに、とでも言いますか」
「さあこっちものんびりしてる暇はない。あんたその持ちづらそうな花持って」
「はい。でもこれよりピンクのやつのが重いですよ?。油かなこれ」
「あんたはあたしに無駄話に油売ってる暇はないってどうしようもないこと言わせたいの?」
「すいません」
祐平がトラックに戻ると、ジュディがご立腹だった。
「どういうことこれ、日付も時間も指定しておいて留守ってどういうことよ」
どうやらそういう事情らしい。
「人としてどうかと思うわ」
「青いやつですか?」
「ええ」
「高橋さんか…この時間なら普段はいるんですけどねえ」
「なぜこの指定された日に限っ………こういうことはよくあるんですか?」
ジュディは少し冷静になった。というよりも、立腹はただのポーズだ。
「ありますよ。さすがに、よく、ではないですけど」
本当はよくあることだったが、面倒くさくなりそうだったので祐平はそう言った。
「高窪さん、次はどの荷物ですか?」
梨田がすっからかんといった具合に言った。
(伝票見ろよ!。上から順番だっつったろバカ!。)
「次は僕から見て右端の上のやつらです」
「わかりました」
(わかりましたじゃねえよ。)
祐平はエンジンをかけ、トラックは走り出した。
「あ、あと、高窪さん、不在だった荷物はどこらへんに置けばいいですかね?」
「…わかりやすい場所に置いといてください」
ジュディはまた地図を見ていた。
すぐに次の場所に着くと、ジュディ達に指示を出し、祐平は走り出した。いいリズムだ。ジュディ達がいなければ。
この場所の宅配物で祐平はジュディに対し些細ないじわるをしかけていた。別に悪意の賜物ではなく、他愛ないアイデアで、これは話のタネになるだろうなと思い、思いついちゃったならやるよりしょうがない、としかけたいたずらだった。
ジュディの訪れるアパートは四階建てのワンフロアツールームのちびた鉛筆アパートだが、その玄関前にはルーム番号も表札も出されてなく、はじめて訪れた人は2択を迫られる不親切なアパートだった。もちろん、今はどこに誰が住んでいるのかを把握している祐平だが、バイトで訪れたときには2択を迫られた。意を決し、山勘でチャイムを押そうとしたときに、たまたま同業他社のプロが現れて、訊くことにより事なきを得た過去があった。
いわば通過儀礼だ、祐平はハンコをもらいながら心のなかでほくそ笑んだ。
祐平がトラックに戻ると、梨田がいるだけで、まだジュディは帰っていなかった。
(悩め、悩め、悩み抜けジュディ。そしてチャイムを間違えろ。)
祐平は伝票の整理や梨田への指示をしながらジュディがどういう風な面もちで帰ってくるか想像し、梨田に見られないようニヤニヤした。
「あ、きたきた」
梨田が言う。ジュディが帰ってきた。手には伝票と機械だけで、宅配物は抱えていない。顔も、普通、といった具合だった。
「変なアパートもあるんだねえ」
開口一番、ジュディはどこか嬉しそうにそう言った。
「変な、ですか?、あ、しまった。大丈夫でしたか?」
しめしめと思いながら、祐平は白々しく言った。
「大丈夫。アパートの入口で朝にあったバイト君にあってねえ。ここは注意してくださいって」
「ああ、沖田君に教えてもらったんですか。よかった。いやすいませんでした」
(沖田いつのまに!。裏に停めてやがったな。)
「いいのよ。だけどあんな風な建物ってよくあるの?」
「ここいらではあそこぐらいですね」
「ふうん。あそこぐらいなんだ。なるほどねえ」ジュディは、本当は部屋の前まで行き着き、しばし2択に悩んだあと、一旦トラックに戻ろうとした時にアパートの入口で沖田にあったのだった。
「え?、なんですかふたりで」
ひとり会話に置いてけぼりの梨田を無視する形で、ジュディが、
「さあ次に行きましょう」
と言った。
祐平はジュディがいじわるされたことに薄々感づいたことに気がついていなかった。
愚策を弄する者は往々にして、相手の心理を読むにあたり自分の策に都合の良い方向へしか読めない。
続