微笑シリーズ。かつあげとメンチを切る | からだに恥をかく体操〜えんぴつみがき〜

微笑シリーズ。かつあげとメンチを切る

『おい、あんちゃん。あんちゃんよ。イヤホンかけてるあんちゃんよ』
「何ですか」
『ちょっとさ、おれね、今困っちゃってるのよ。渦中だよね。まさに渦中だよね。困った渦中にいるのよ。おれ昔カチューシャのこと虫の蚊に刺される、すなわち蚊に注射されることだと思ってたんだけどね』
「はあ」
『ある日同級生の女の子がカチューシャをつけてきたってことがあってね。おれはカチューシャは蚊に刺されたことだと思ってたから会話がちぐはぐしちゃって。ちぐはぐしちゃって。ちぐはぐしちゃってね。ちぐはぐ。ちぐはぐしちゃってのちぐはぐって何じゃ!?ちぐはぐってなんじゃ!?日本語か!?』
「はあ」
『なんだよちぐはぐって!?はっ、ちぐはぐで四苦八苦。なんつって』
「なんですか。なんか用ですか」
『ああ、君ね。今からおれぁ仲のいいお友達数人と街へ繰り出して遊ぼうってね。ほら、若者は若者らしく元気はつらつと遊ぼうってスケジュールなんだわ。もうスケジュール帳に書かれてるんだわ』
「はあ」
『だけど困ったなぁ。困った困った。クマが鮭をとれなくてクマったクマった。って、クマが鮭をとれなかったらこれ死活問題だからね!?』
「は?」
『クマったクマった言ってる場合じゃないから。鮭が遡上しまくってる川にざっぱあん飛び込んで、一匹も鮭をとれなかったクマの哀愁といったらないよ。足下にうようよいるのに。でかい鮭がうようよいるのに。捕まえられないクマの哀愁といったらないよ。なんなら鮭に食われちゃうから。そのクマ鮭に襲われて食われちゃうからね逆に。がっしがしかじられちゃうから。かじられながら鮭みたく射精しちゃうからね。じゅっさー出して、川を流れてくから。そして川下にいるメスクマに匂いで感づかれて笑われちゃうわけだから。あああの子鮭にやられたのねって笑われちゃうから。はあ、生存競争って苛烈だねぇ。苛烈な生存競争の渦中にそのクマはいるんだねぇ』
「もう行っていいですか」
『ちょっと待ちなよ』
「なんなんですか。僕急いでるんですけど」
『鮭のとれないクマは哀れだと思うよね?』
「はあ、まあそうですね」
『では、金のない若者は哀れだと思うよね?』
「金?なんですか。かつあげですか?」
『誰がかつをあげてるんだよ!』
「は?」
『誰がかつをあげてるんだ誰が!』
「はあ?」
『ああ、すまんすまん。かつあげなんて君が言い出すもんだから。考えてもみなよ。こんな天下の往来で、ライターの火しか持ってない男がかつをあげますか?鍋も油もない。仮に鍋と油があっても、あげあがるのに一体何時間かかるんだ。あげあがるころにはあれですよ。物好きな野次馬から拍手されちゃいますよ。無理難題に果敢にトライする若手芸人じゃないんだから。おれはかつをライターであげませんよ』
「いやかつあげっていうのは」
『なんだ?シャングリラか?』
「は!?」
『まああんちゃん。そんなことはどうでもいいんだよ。肝心なところは、これから遊ぼうってのにおれの懐が淋しいことなんだよ。あた淋しいなあ。淋しい淋しい。淋しい病気と書いて淋病にかかった時ぐらい淋しいわ』
「はあ」
『だからおれは君から金を無心したいとこう考えているわけなんだわ』
「だからかつあげですよねそれ」
『誰がかつを、誰がかつをあげてるんだよ!あんちゃん人には言っていいことと悪いことがあるんだぞ!』
「はあ」
『ちなみに人に言っていいことってのは限界ギリギリで、お前のパンツ黄色いしみ付いてるぞ、で、言っちゃいけないことは、シャングリラです』
「おれさっき言われたようなシャングリラ」
『ああん!?今あんちゃんおれにシャングった!?ああああん!?』
「うわっ、そんなステレオタイプなメンチ切らないでくださいよ」
『ああ!?誰がメンチを切ったんだよ!おれがいつメンチを切った!?』
「いや、人をねめつけることをメンチを切ると」
『ああん!?君はなんだね!?さっきから人に向かってかつをあげろだメンチを切れだ。おれぁ注文の多い肉屋じゃねえっつうの!こちとらライターしかねえと。ライターしかねえと言ったろ!あんたあげたてのメンチカツをライターでぐっしゃあ潰しながら切ったメンチ食べたいのかね!?油まみれじゃないかおれのライター!』
「あんた何がしたいんだよ!?」
『ああん!?』
「いやすいませんですけど!目的をはっきりさせてくださいよ!金をとる気なんですか!?」
『なんだ君は急に。インテリか気取りか』
「気取ったつもりはついぞ無いですけど」
『ああ、もういいよ』
「は?」
『金出せコラ』
「うわ、これまた態度急変」
『金出せよ』
「持ってないですはい」
『ああん!?』
「いや、ライターでメンチを切る動作されても」
『じゃあちょっとジャンプしてみて』
「出た」
『ほらジャンプジャンプ』
「はあ、ぴょん」
『聞こえねえなあ』
「いや本当に小銭も持ってないですから」
『もう一回飛んで』
「また!?」
『ああん!?』
「いや、その動作は何を表現してるのか察せない。奇抜か」
『ほら飛べよ。あ、ひとりじゃジャンプできないっていうなら一緒に飛んでやるから』
「へ?」
『ほらほらいくよ。いっせえの、ぴょん』
「…………」
『飛べよ!おれだけ飛んで!』
「突然だったもんで」
『いいか、いっせえの、で飛べよ。いや、いっせえのぉせ、で飛べよ。いやいや、いっせえのぉせっうん、でいこうか。これは面倒か、そうか。じゃあ、親子丼どーん、で、どーんでジャンプしようか』
「なんだそれ!ああ、むかついてきた!大体なんだよ!なんなんだあんた!急いでるっつうのにかつあげなんかしてきやがって!」
『ああん!?』
「金がねえなら遊ぶな!働け!人からせびるな!」
『なんだとコラ!反抗期か!ぶん殴って倒してドラクエみたくゴールドと経験値を得てもいいんだよぉ!?』
「うるせえハゲ!」
『いやいや、おれハゲてはないよ?』
「もうこれやるよ!おら!」
『千円。なんだよ持ってるじゃねえか。すくねえけど』
「バカやろう!」
『ああん!?』
「いいか、よく聞けよ!これはな、この千円は、お母さんから今夜のおかず買ってきてとお使いに出されて渡された貴重な金だ!好きなもの買ってきていいよって!バカやろうが!今夜はおかずなしだバカやろう!ちくしょう!それ持ってどっか行けよ!それ持って遊べばいいだろバカ!死ね!」
『おい!ちょっと待て!おい!………ああ走り去って行っちゃった…………………ぷるるるるる…あ、電話だ。もしもし?ああ遅い?悪いな。今日は遊びに行けねえわ。うん?ああ、ちょっとな、そんな気分じゃねえんだ。うん。あのさおれ今までてきとーに生きてきたけど、これからは真っ当に生きようと思う。お前らも遊んでばかりいないでさ。いやまあな。うん。おれもなんつうか夢ってもんができたんだ。おれはさ、例えば少年が母親からなけなしの千円を持たされて、今夜のおかず好きなもの買ってきていいよって言われた時に、その少年が笑顔でやってくるようなお店をさ、うん。そんなお店をマーケティング調査してみたいんだ』
「そこは肉屋開けよ!インテリか!」



終わり。カオス。やまなしおちなし。だだ漏れを書いちゃいかん。なんか狙ってる女んちに行って「あ、机の上にゴム置いてあんじゃん!確実にいけるだろ!」って思いながら彼女がトイレに行ってる間にゴムの袋をよく見てみたらペープマットの袋だった時ぐらいざんない(実話)。おれざんない。