哀愁のエピゴーネン | からだに恥をかく体操〜えんぴつみがき〜

哀愁のエピゴーネン

見舞った。見舞いの品は結局カール(カールおじさんの手作り菓子)にした。なぜって見舞う道中ドンキに寄らなかったから。

そんで、見舞うと言っても特に話すこともなく、友人は別に命に関わる病気で入院してるわけじゃない、中庭に出ると、おれは置いてあった新聞をとカールを手にイケてる泡沫候補を血眼で探してた。そんなとき、友人がおれに驚いた様子で声をかけてきた。

「おい、これ見ろよ」

新聞を眺めるおれの前にしゃしゃり出た友人の手にはケータイが握られていた。画面をこっちに見開いて。おれは嫌煙者が歩きタバコしてる奴を見るような蔑みきった目でそれを見た。なぜってそのケータイは汚物だから。しかし、汚物まみれの外骨格に対し画面には女の子の写真が映し出されていた。

「ふむ、だからなに?」

知らない女の子だった。訝しむおれに友人は

「お前、わからない?」

と言った。相変わらず驚きを維持してる。

「これ、多分、お前が昔つきあってた○○だよ。名前を検索したら出てきた」

ばびったね。いやあ、ばびった。そう言われると、汚物ケータイの中で大人の笑顔を浮かべるその子、確かにおれの記憶にある彼女の面影がある。名前と生まれた年と出身都道府県が一緒だった。まず間違いない。彼女は就職活動中の者に向けた会社のPRの為に「この会社で働いて」みたいなことをうれしはずかしで語ってる。お互い十代の中頃に1ヶ月だけつきあって、お互いに捨てたかったものを捨てると、あっさり別れた。写真の一枚も撮ることなく。その彼女が画像検索で引っかかったのだ。彼女の名前はありふれた名前だから、こりゃもうばびったね。

おれは友人がなぜおれの初彼女の名前を画像検索したのかを問い質すこともせず、じっと画面を見た。別になにかよからぬことを考えて見てたわけじゃない。どうしていいかわからなくなっていた。見ちゃいけないものを見てしまった、ただそんな気になった。

「なんかごめんな」

そう告げる友人の声も上の空で、おれはカールを口に運んだ。カールおじさんの泥棒ひげがいつもより黒く光って見えた。

いやあ、ばびったよ、うん。

別にそんな戸惑うこともねえのにね。

ちなみにおれの名前(多いか少ないかで言ったら少ない)を検索するとほんの少し前に同姓同名で多分一番著名な方であろうお方がお亡くなりになっていたことが判明した…………。勝手ながらご冥福を祈らせて頂くとともに、これからの○○○○○界を引っ張っていく所存でございます。でもおれ、基本本名非公開なのよね(お前何様のつもりだよ)。