ある文学少女の死
ある文学少女は予定よりもだいぶ早く死んだ。
だが、その儚い命、それもまた少女が文学少女であることの証であったのだった。
三島由紀夫、太宰治、江戸川乱歩、稲垣足穂、泉鏡花、夏目漱石、森鴎外、芥川龍之介、樋口一葉、松本清張、横溝正史、ランボー、サルトル、ヴェルレーヌ、ボードレール、サリンジャー、サン=テグジュペリ、多喜二、清少納言、紫式部、筒井、手塚、石ノ森、赤塚、蛭子、風太郎、平井、司馬、横山、向田、………。
降りしきる冷たい雨。積み上げられる本の数々は棺の中を埋め尽くし、花の手向ける場も足のやり場もない。
火葬が終わり、係の者が炉から形のなくなった棺を取り出そうとしたその時、くっきりと人形に残る白骨に浮かび上がる無数の文字、名句、名調子、警句、トリック、名場面、美しさに圧倒される詩、命がけのストーリー、凛としてなおも剛な文、たわいない会話文の中に残る情景、飛び抜けた発想の飛躍、悪魔に魂を売り書き続けた言葉の数々。
もはや白骨ではない白骨は、驚く生者達を前に立ち上がると、ガリガリと骨をすりあわせ、踊った。
阿鼻叫喚ひしめく群集の中、サナトリウムで育む愛のように少女と愛を育んだ文学青年が踊る骸骨の手を取った。
文字に合わせ踊る骸骨、それに合わせ小気味良く踊る文学青年。文字に応え、場面に応え、セリフを吐き。ああ、なんと奇なることか。なんと美しきことか。踊る、踊る、ふたりは応じながら踊る。
文字とリズムと動きと心がひとつになった時、骸骨は糸が切れたようにタラタラと崩れた。
文学青年は、
「コレデオシマイ」
と、つぶやき、ザアザア降る雨の中へと消えた。文字が消え、愛を焼き尽くした白骨は、係の者のほうきにはかれ、おとなしく骨壷に収まると、二度と動き出すことはなかった。
モヤモヤ。
だが、その儚い命、それもまた少女が文学少女であることの証であったのだった。
三島由紀夫、太宰治、江戸川乱歩、稲垣足穂、泉鏡花、夏目漱石、森鴎外、芥川龍之介、樋口一葉、松本清張、横溝正史、ランボー、サルトル、ヴェルレーヌ、ボードレール、サリンジャー、サン=テグジュペリ、多喜二、清少納言、紫式部、筒井、手塚、石ノ森、赤塚、蛭子、風太郎、平井、司馬、横山、向田、………。
降りしきる冷たい雨。積み上げられる本の数々は棺の中を埋め尽くし、花の手向ける場も足のやり場もない。
火葬が終わり、係の者が炉から形のなくなった棺を取り出そうとしたその時、くっきりと人形に残る白骨に浮かび上がる無数の文字、名句、名調子、警句、トリック、名場面、美しさに圧倒される詩、命がけのストーリー、凛としてなおも剛な文、たわいない会話文の中に残る情景、飛び抜けた発想の飛躍、悪魔に魂を売り書き続けた言葉の数々。
もはや白骨ではない白骨は、驚く生者達を前に立ち上がると、ガリガリと骨をすりあわせ、踊った。
阿鼻叫喚ひしめく群集の中、サナトリウムで育む愛のように少女と愛を育んだ文学青年が踊る骸骨の手を取った。
文字に合わせ踊る骸骨、それに合わせ小気味良く踊る文学青年。文字に応え、場面に応え、セリフを吐き。ああ、なんと奇なることか。なんと美しきことか。踊る、踊る、ふたりは応じながら踊る。
文字とリズムと動きと心がひとつになった時、骸骨は糸が切れたようにタラタラと崩れた。
文学青年は、
「コレデオシマイ」
と、つぶやき、ザアザア降る雨の中へと消えた。文字が消え、愛を焼き尽くした白骨は、係の者のほうきにはかれ、おとなしく骨壷に収まると、二度と動き出すことはなかった。
モヤモヤ。