すっきりしたい | からだに恥をかく体操〜えんぴつみがき〜

すっきりしたい

好きな先生がいた。大学出たての若い女教師。おれは中一。好きな、というのは恩師という意味ではなく、紛れもなく恋心だった。男子校だし。その先生はみんなのマドンナだった。マドンナでもちやほやされるとは限らない。ましてやブリーフからトランクスに履き替える年頃、第二次性徴真っ只中の針でつつけばミサイルみたく飛んでいくだろう男子中学生。先生の、どこかつっぱった、厳しい性格もあり、みんな先生の悪口を言った。あいつは生意気だとか腕毛ボーボーだぜとか。みんな素直に好きだと言えないから。布団に入ればたまに素直になって。
おれ達が中学を卒業すると同時にその先生も遠くの兄弟校へ行くことになった。中高一貫教育だったから、卒業といってもほぼみんなすんなり上に上がる。だから卒業らしい雰囲気はなかったのだけど、唯一それがすごく悲しかった。とはいえそんな態度はおくびにも出さず、別れの日はいつも通りの放課後の早さで通過して春休み。もう会えねえなあ、なんて。
高校生になってからしばらくして、その先生に手紙を出すことになった。出すことになったというからには当然個人的なものではなく、実質的に宿題のようなものだった。ここしかない、おれは思った。先生と繋がるチャンスはここしかない。
書いた。ひねくれまくった内容の、詰まるところラブレター。最後に記した手にしたばかりの携帯電話番号。
突然こんなことを思い出しておれは今頭を掻きしだいてる。すげー恥ずかしい。ものすごく恥ずかしい。飲み下せない。だから書いてみた。吐き出したいんだ。もちろんコールバックなんかなかった。当時の先生の年齢に近い今のおれにはわかる。気持ち悪いじゃんそんな奴。ほんともうね、頭いくら掻いても足りない。
ところで、高校の中頃、おれが停学くらって自宅謹慎していた時、家にやってきた担任がこう言ったことがある。
「お前、○○先生好きだっただろ?」
その担任は例の手紙を宿題に出した教師だ。
「そんな、おばさんじゃないですかあの人」
おれはこう答えたが、担任のあの確信めいた顔。お前、読んだだろ。おれの手紙。恥ず。恥ずか。頭をください。もっと頭を。掻きしだく頭が足りません。